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【世界の街から】

済州島 繁栄の陰に重い歴史

2011年3月2日

 韓国南部の済州島にある「四・三平和記念館」を訪れた。二〇〇八年三月に開館した同館は、南朝鮮だけの単独選挙に反対した左翼勢力が一九四八年四月三日に済州島で蜂起し警察や軍、右翼の鎮圧で多くの犠牲者を出した「四・三事件」を語り継ぐ施設だ。

 事件では、女性や子供を含め島民が何らかの形で被害を受け、虐殺された住民は三万〜五万人ともいわれる。弾圧から逃れるため、多くの島民が日本に渡った。十数年前まで歴代政権はタブー視してきた。このため、事件に触れることを嫌う韓国人はいまも少なからずいる。

 館内には、民間人十一人が鎮圧部隊に追われて逃げ込んで犠牲となり、九二年になってやっと遺骨が発掘された洞窟を再現した展示空間がある。複製とはいえ散乱する人骨が虐殺の状況を生々しく伝えており、震えが起きた。

 「どうでしたか?」。記念館を出た後、事件で親族を失ったという地元出身の済州大学教授が問いかけた。私は「重いですね」と言ったきり、二の句を継げなかった。

 宿泊先のホテルに戻ると、ロビーでは両手にたくさんのおみやげを持った外国人ツアー客が大声で談笑していた。先ほどまでの別世界からリゾート・済州島に引き戻され、戸惑いを覚えた。

 (城内康伸)

 

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