2011年1月25日 20時35分 更新:1月25日 21時14分
東京・秋葉原で17人が死傷した無差別殺傷事件で、殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大被告(28)に対し、東京地検は25日、東京地裁(村山浩昭裁判長)の第28回公判で死刑を求刑した。検察側は「犯罪史上まれに見る凶悪事件で人間性のかけらもない悪魔の所業。多数の模倣犯を生み悪影響は計り知れない。命をもって罪を償わせることが正義だ」と述べ、被告を厳しく非難した。2月9日の次回公判で弁護側の最終弁論が行われ結審する。判決期日は3月24日に指定された。
責任能力の有無が争点で、弁護側は「精神疾患があった可能性がある」として心神喪失か心神耗弱状態だったと主張している。
検察側は論告で、「事件は被告の衝動的な性格に由来し、精神障害は認められない」とした精神鑑定医の証言などから「完全責任能力は明らか」と反論。動機については▽容姿の劣等感▽派遣社員で就労が不安定▽交際相手がいないこと--に悩んでいた被告が、08年5月ごろから携帯サイトの掲示板で被告になりすました「偽物」や「荒らし行為」が起きた上、職場で自分の作業着が見つからなかったことから怒りを爆発させたと指摘。「大きな事件を起こして無視した者に復讐(ふくしゅう)しようとした」と述べた。
被告が法廷で「掲示板の嫌がらせをやめてほしいと伝える手段だった」と述べ、それ以外の動機を否定した点については「恥ずかしい出来事を否定する傾向が顕著で信用できない」と指摘した。また、法廷での被告の態度を「人ごとのように振る舞い、内省を深めた様子は見られない」と批判。事件時に25歳だったことや前科がないことは死刑回避の事情にならないとして「改善更生を期待することは困難」と断じた。
起訴状によると、加藤被告は08年6月8日午後0時半ごろ、東京都千代田区外神田の歩行者天国の交差点にトラックで突入し5人をはねて3人を死亡させ、さらにダガーナイフで12人を刺し、うち4人を死亡させたとされる。【伊藤直孝】