2011年1月25日 15時0分 更新:1月25日 18時40分
裁判員による量刑判断の参考のため最高裁が構築した「量刑検索システム」(量刑データベース)に、2審で量刑が見直された一部の判決が欠落していることが分かった。最高裁は「2審が誤りと判断した1審判決を反映させていない」と説明するが、1審の無期懲役を軽すぎるとして2審で死刑を言い渡したり、逆に死刑を無期に見直したケースでも、事件そのものが存在しないことになる。昨年末で85件が欠落。検察内部には「正確なデータとは言えない」との指摘があり、最高検は昨年12月、全国の地検に注意を促した。
システムは裁判員制度開始に向け構築され、導入費用は約3300万円。08年4月以降の裁判員制度対象事件の1審判決をデータベース化し、昨年12月28日時点で5973件が登録されている。被害の程度や凶器の種類など事件の特徴を入力すると、類似事件の量刑分布がグラフ化される仕組みになっている。検察官や弁護士が裁判所内に設置された端末で利用し、量刑主張に活用することもある。
ところが昨年になって、データベースから欠落している裁判が殺人事件などで数十件あることに検察側が気付き、最高裁に問い合わせた。
その結果、1審判決後の示談成立などを理由に2審が1審を破棄して量刑を見直したような場合は1審の量刑がグラフに反映されるが、1審の判断に誤りがあるとして2審が量刑を見直した場合、1、2審のどちらも反映されないとの説明を受けたという。反映されていない事件は昨年12月28日時点で85件にのぼるが、事前に検察庁や弁護士会には周知されていなかった。
現場の検察官がこうした事情を知らずにシステムを活用しないよう、最高検は昨年12月に全地検にメールを送信し、システムの特性を理解したうえで正確な主張立証をするよう注意を促した。
システムを運用する最高裁刑事局は「大まかな量刑の傾向が分かればよいと考えているが、今後、検察庁や弁護士会の意見も踏まえシステムを見直すかどうか検討したい」と話している。
量刑データベースを巡っては、09年12月に3件の入力ミスが見つかったことを機に最高裁が全データを点検したところ、19件で懲役年数などが誤っていたことが発覚している。