2011年1月25日 13時30分 更新:1月26日 10時28分
議員1人当たりの有権者数を比較した「1票の格差」が最大5.00倍だった昨夏の参院選を巡る選挙無効訴訟の判決が25日あり、高松高裁は「違憲」、仙台高裁秋田支部と福岡高裁那覇支部は「違憲状態」との判断を示した。
香川県内の男性弁護士が「憲法が定める選挙権の平等に反する」と、香川選挙区での選挙無効を求めた訴訟の判決が25日、高松高裁であった。小野洋一裁判長は請求を棄却したが、1票の格差については「国会の裁量権の限界を超えており、違憲」との判断を示した。
同参院選について「違憲」と踏み込んだのは昨年11月の東京高裁判決に次いで2件目。格差是正に向けた選挙制度改革の議論に弾みがつきそうだ。
訴状などによると、同参院選での議員1人当たりの当日有権者数は、全国最少の鳥取選挙区と最多の神奈川選挙区との間で5.00倍、鳥取と香川選挙区との間で1.71倍の格差があった。鳥取の投票価値を1人1票とすると、香川は0.59票となる。
同種訴訟は二つの弁護士グループによる計16件を含む18件(全国8高裁、6高裁支部)が分かっている。東京高裁の南敏文裁判長は昨年11月、「不平等状態が十数年継続しており、国会の裁量権の限界を超えている」と違憲判断。同12月の広島高裁判決や同高裁岡山支部判決など4件では、「違憲状態」と判断された。一方、合憲判断も3件(うち1件は2選挙区を判断)ある。
参院選の1票の格差については、最大格差6.59倍となった92年参院選を最高裁(96年)が「違憲状態」としたが、最高裁はこれまで5.85倍までを「合憲」と判断してきた。最大格差4.86倍だった07年参院選は、最高裁が09年に「合憲」としたが、「選挙制度の仕組みの見直しが必要」と是正を求めていた。【中村好見】
仙台高裁秋田支部(高野芳久裁判長)は25日、請求は棄却したものの「違憲状態」との判断を示した。
判決は5.00倍の格差について「著しい不平等状態が生じていた」と述べ、違憲状態と指摘。その上で、国会による格差是正の取り組みが「性質上、検討に相応の時間を要することを認めざるを得ない」として、違憲ではないと結論づけた。秋田市の女性が秋田県選挙管理委員会を相手に秋田選挙区(格差1.91倍)の選挙無効を求めていた。【小林洋子】