2011年1月24日 22時3分 更新:1月25日 1時22分
覚醒剤約4.5キロ入りの国際郵便を受け取ったとして覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)に問われた中国籍の無職、梁振華被告(33)の裁判員裁判で、東京地裁は24日、無罪(求刑・懲役13年、罰金700万円)を言い渡した。合田悦三(よしみつ)裁判長は検察側が証拠とした被告の携帯電話の発着信履歴に「不透明な操作が加えられた疑いが払拭(ふっしょく)できない」と述べ、「間接証拠を総合しても、被告が中身を覚醒剤だと認識していたことが間違いないとは言えない」と判断した。
裁判員裁判での全面無罪は全国3件目で、覚醒剤密輸事件では昨年6月の千葉地裁に続き2件目。梁被告は判決後に釈放されたが、在留期限が切れており、東京入国管理局に引き渡された。1週間以内に退去強制処分となる見通し。
被告は10年4月に観光ビザで入国し、東京都内のホテルで郵便を受け取った。中身を覚醒剤と認識していたかが争点だった。検察側は▽入国後に携帯電話で関係者と連絡を取った履歴がなく、郵便受け取りを事前に把握していた▽受け取り名が偽名だった--などとして有罪を主張した。
判決は、検察側が証拠提出した携帯電話の発着信履歴に、押収後に発信した記録が残されていたことから「不透明な操作が加えられた疑いが残る」と証拠改ざんの可能性に言及。また税関職員が誤って一部の記録を消去したことなどから信用性を疑問視した。
また被告に資産があることから、密輸の動機も不明と指摘。「郵便は売春仲介者への土産として知人から渡された」との被告の弁解については「逮捕当時からほぼ一貫しており、ただちに虚偽とは言えない」と述べた。
裁判員を務めた40代女性会社員は「検察の証拠が不十分。初動捜査は万全の態勢で臨むべきだった」と話した。主任弁護人の藤本勝也弁護士は「渡された土産を断れないこともある。市民が巻き込まれる可能性のある事件だと理解いただいた」と話した。【伊藤直孝】