地デジ:移行あと半年…20万人規模で声かけ運動

2011年1月24日 21時13分 更新:1月25日 0時24分

最終行動計画を発表した広瀬道貞民放連会長(右から2人目)ら=東京都港区で2011年1月24日、栗原拓郎撮影
最終行動計画を発表した広瀬道貞民放連会長(右から2人目)ら=東京都港区で2011年1月24日、栗原拓郎撮影

 地上デジタル放送(地デジ)への完全移行まで24日であと半年となった。総務省は受信環境の整備のメドは立ったとして、アナログ電波を計画通り7月24日に止める方針だ。しかし、電波受信環境が未整備の世帯は200万~250万と推計され、高齢者の遅れが最大の課題となっている。同省は同日、テレビを見られなくなる「地デジ難民」の発生を防ぐため、20万人規模のボランティアによる声かけ運動などを盛り込んだ「最終行動計画」を発表したが、残された時間は少ない。【乾達、中井正裕、高橋咲子】

 ◇沖縄で予行演習

 総務省は7月の地デジ完全移行までに整備計画がある世帯を含めると、ビル陰などの受信障害世帯の98%、山間部などの難視聴世帯は100%対応のメドが立ったとしている。だが、同省は地デジ受信機の普及が遅れている沖縄県で今月末、民放局が一斉に通常のアナログ放送を1時間程度停止する「予行演習」を行うと24日発表。対応が完了するのか懸念は残されたままだ。

 東京都新宿区の戸建て住宅に住む年金生活者の男性(71)はエコポイント制度縮減直前の11月、量販店3軒をまわってデジタルテレビを購入。ところが、UHFのアンテナ工事費用に、総務省が標準とする3万5000円より高い6万5000円かかることが分かった。男性は「ニュースが見られればいいだけなのに、テレビより高いなんて」。現在も自力でアンテナを設置できないか調べている。

 特に移行が遅れているのが南関東(東京都、神奈川、埼玉、千葉の3県)。NHKとキー局がVHFで放送されるため、男性のようにVHFアンテナしかない家庭が多いためだ。だが、地デジ視聴にはUHFアンテナが必要だ。集合住宅には国の補助はあるが、1戸3万5000円の自己負担分の捻出が難しい個人経営のアパートも多い。全国の集合住宅の未対応世帯約80万世帯のうち約70万世帯が関東地方に集中。戸建て住宅も約100万世帯が未対応(NHK調べ)で、大半がVHFアンテナが集中する南関東とみられる。

 これらを含め、受信環境が未対応な最大250万世帯(全世帯の4~5%)の多くは、高齢者など自ら行動を起こさない「サイレント層」とみられる。同省の「テレビ受信者支援センター」(デジサポ)の宇佐美雄司広報・調査部長は「回覧板を回しても接触できない層が残る」と話す。

 一方、同省の調査で受信機購入は、昨年9月末時点で世帯の9割。エコポイント縮減前の駆け込みで数%上積みされたと見る。だが、80歳以上は調査の対象外。砂川浩慶・立教大准教授は「多くても昨年末で約8割。高齢者が取り残される」と懸念する。

 ◇6月に相談窓口

 最終行動計画では、民生委員ら約20万人のボランティアによる高齢者への声かけで、デジサポによる戸別訪問につなげる。6月に全国1000カ所に相談窓口を設置、7月には電話相談を現在の5倍の1000に増やす。

 7月1日以降はNHKと民放が、放送画面の隅に「アナログ放送終了まで○日」とのスーパーを常時表示。放送は24日正午で静止画のお知らせ画面に移行し、25日午前0時ごろに停波する。

 先週会見した民放連の広瀬道貞会長は「未対応の1%は130万人に当たる。積み残せば、テレビ離れの端緒になりかねない」と述べた。だが、地デジ難民をゼロにできるか道筋は見えていない。

top

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド