2011年1月24日 20時46分 更新:1月24日 23時6分
奈良県大和郡山市で03年、警察官が窃盗容疑などで追跡中の乗用車に発砲し、助手席にいた高壮日さん(当時28歳)が死亡した事件で、奈良地裁(橋本一裁判長)は、特別公務員暴行陵虐致死と同致傷の罪で付審判決定された警察官2人について、殺人罪でも審理することを決めた。付審判で警察官が殺人罪に問われたケースは例がないといい、裁判員裁判で警察官の殺意の有無が判断される。
変更決定は20日付。殺人罪に問われるのはいずれも当時の巡査長、東芳弘被告(34)と巡査部長、萩原基文被告(34)。昨年4月の奈良地裁の付審判決定で、東被告は特別公務員暴行陵虐致死罪、萩原被告は同致傷罪に問われたが、検察官役を務める指定弁護士が昨年11月に訴因変更を求めていた。
今回の変更決定で両被告とも殺人罪と同致死罪に問われる。最高裁によると、1951年以降、付審判決定で警察官が特別公務員暴行陵虐致死傷罪に問われたケースは12件。付審判に詳しい村井敏邦・龍谷大名誉教授(刑事法)は、その後殺人罪が追加されたケースはないとしている。
付審判決定によると、03年9月10日午後6時45分ごろ、大和郡山市の国道24号交差点で、信号無視を繰り返すなどして逃走した乗用車に向け、至近距離から萩原被告が拳銃1発を発射し、高さんの後頭部に当たった。さらに東被告が発射した1発が高さんの首に命中。高さんは同年10月5日に死亡した。
高さんの遺族は、両被告を含む警察官4人を殺人と特別公務員暴行陵虐致死容疑で告訴したが、奈良地検が不起訴としたため、06年1月に付審判を請求した。また、遺族が県や警察官4人に約1億1770万円の損害賠償を求めた訴訟は、奈良地裁が請求を棄却したが、警察官の「未必の殺意」を認定し、大阪高裁で係争中。
今回、付審判で検察官役の指定弁護士は両被告の共謀を認め、至近距離からの発砲について殺意があったと判断したとみられる。遺族の代理人、伊賀興一弁護士は「殺人だと主張してきたのでやっと認められたという思いだ。刑事裁判で高さんが警察官に殺された事実が明らかになることを期待したい」と話した。県警監察課は「係争中なのでコメントできない」としている。【高瀬浩平】