2011年1月24日 14時27分 更新:1月24日 17時16分
第177通常国会が24日召集された。会期は6月22日までの150日間。菅直人首相は24日午後、衆参両院本会議で施政方針演説を行い、消費税を含む税と社会保障の一体改革について「一政治家、一政党の代表として与野党で協議することを提案する」と宣言。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)についても国会での議論を呼びかけた。演説の最後でも「国民は、先送りせず、結論を出すことを求めている。今度こそ、熟議の国会に」と訴え、「ねじれ国会」を武器に対決姿勢を強める野党に責任の共有を求めた。
首相は昨年6月の就任後、国会での所信表明演説は2回行っているが、年初の施政方針演説は初めて。演説では国づくりの三つの理念として、「平成の開国」「最小不幸社会の実現」「不条理をただす政治」を掲げた。
最小不幸社会を実現するための基盤に雇用と社会保障を位置づけ、「今年6月までに社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示す」と期限を区切って取り組む決意を表明した。
そのうえで、自民、公明両党が自公政権時代から超党派の協議を主張してきたことを指摘。「大きな課題に対策を講じる責任は与野党の国会議員全員が負っている」「国民にも一緒に考えていただきたい」と呼びかけた。11年度予算案と関連法案に反対して政権を「3月危機」に追い込む構えをみせる自民党などをけん制し、昨秋の臨時国会のような対決一辺倒の審議を繰り返していいのかを世論に訴える狙いがある。
平成の開国では、貿易・投資の自由化を経済成長につなげることをうたい、米豪などがアジア太平洋地域の貿易自由化の枠組みづくりを目指すTPPに関し「今年6月をめどに、交渉参加について結論を出す」と参加に前向きな姿勢を示した。
TPPは国内農業への打撃が懸念されるため、例外品目の交渉をしやすい2国間の経済連携協定(EPA)をオーストラリアなどと進めることも強調。演説原案では日米EPA交渉も盛り込んでいたが米側の同意が得られないと判断し見送った。「農林漁業の再生」も掲げ、6月をめどに基本方針、10月をめどに行動計画を策定するスケジュールを明示。その柱に農業者戸別所得補償の拡充を据えた。
不条理をただす政治としては「社会的孤立」問題の特命チーム設置などをアピール。小沢一郎民主党元代表の「政治とカネ」問題には言及せず、企業・団体献金の禁止などを挙げて政治改革の与野党協議を呼びかけた。
地域主権改革と行政刷新を「三つの理念を推進する土台」とし、民主党政権の看板となっている「事業仕分け」については対象に国の規制も加え「深化」させる方針を示した。
外交では、日米同盟を「外交・安全保障の基軸」と強調する一方、昨年6、10月の所信表明演説にあった「東アジア共同体」構想が消えた。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)については、沖縄振興と基地負担軽減に取り組む方針を示し、同県名護市辺野古に移設する日米合意への理解を求めた。【吉永康朗】
毎年1月召集の通常国会で、首相が行うのが施政方針演説。内政、外交について、内閣の基本方針を説明する。外相の外交演説、財務相の財政演説、経済財政担当相の経済演説と合わせ「政府4演説」と言われる。所信表明演説は臨時国会、特別国会の冒頭や、会期中に首相が交代した際、首相が国政への考えを示す。前者は内閣全体の方針、後者は首相の所信という違いはあるが、慣例的なもので法律上の定めはない。