秋葉原・ホコ天:消えない悲劇の影 「安全」へ住民奮闘

2011年1月23日 20時43分 更新:1月23日 21時7分

秋葉原無差別殺傷事件の現場付近にたむけられた、お供え物や花束=東京都千代田区で2011年1月23日、尾籠章裕撮影
秋葉原無差別殺傷事件の現場付近にたむけられた、お供え物や花束=東京都千代田区で2011年1月23日、尾籠章裕撮影

 東京・秋葉原は2年7カ月ぶりに歩行者天国の活気を取り戻した。買い物を楽しむ家族連れやコスプレ姿で練り歩く人たち。その一方で7人の命を奪った事件の記憶は今も薄れない。23日に再開した計6車線の「ホコ天」を記者も歩いた。

 再開に先立ち中央通り沿いで記念式典があった。参加者がみな、事件現場を向いて黙とう。官民の意見を取りまとめてきた「地域連携部会アキバ21」の大塚實会長(77)は「とんでもない事件で多くの人が心に大きなダメージを受けた。いろんな努力の積み重ねでやっとこの日を迎えられた」と話した。

 現場で手を合わす人や花や飲み物を供える人の姿が見られた。事件当時も秋葉原にいたという近くに住む内藤美和さん(38)は「自分に降りかかってもおかしくなかった。悲惨な事件は絶対忘れないけれど、ホコ天が無いままだと事件に負けた感じがする」と話す。内藤さんは「現場付近が怖くて通れない時期があった」と言う。

 官民が連携するパトロールには同日、区職員や住民、商店関係者ら約150人が参加。協力する住民に高齢者の姿が目立つのが気になった。一部の世代だけの連携では負担が大きく続かないのではないか。若い世代をいかに取り込むかが課題のようだ。

 ホコ天の運営に携わったのは警察や消防も含め計約230人。それぞれが見回り、禁止されているパフォーマンスや自転車走行などを注意する。だが一方で、「警官の姿が目立ってものものしい。自由って感じがしない」「にぎやかなパフォーマンスがあると思って来たのに、何もなくてさびしい」という声も歩行者から漏れた。

 周辺に計50台設置した防犯カメラや地域の自主ルールの制定など、工夫を重ね安全な空間を作り上げてきた地元住民と、安全を「当たり前」と感じている一部の歩行者とでは意識の隔たりもある。

 「安全より大切なものはない。一度崩れた信頼を取り戻すのは難しい。それが身にしみている」。大塚会長はそう話した。【山田奈緒】

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