2011年1月22日 12時41分 更新:1月22日 21時51分
宮城県は22日、強姦(ごうかん)など性犯罪で服役後出所した県内居住者にGPS(全地球測位システム)を携帯させ、県警が常時監視できるようにする全国初の条例制定の検討を始めた。必要に応じて性犯罪逮捕者にDNAの提出も義務づける。常時監視は基本的人権の制限にもつながることから、波紋を広げそうだ。
村井嘉浩知事が同日、性犯罪対策を話し合う県の有識者懇談会で試案を提示。「事件を未然に防ぐためには、批判を恐れずに(条例化を)検討しなければならない」と述べた。
試案によると、監視対象は女性や13歳未満の子供への強姦、強姦致死傷などの罪・未遂罪で有罪となり、刑務所を出た成人の県内居住者。再犯リスクが高いと判断されるとGPSを携帯させられ、県警が常時監視する。
また、ドメスティックバイオレンス(DV)防止法に基づき、裁判所から被害者への接近禁止の保護命令を受けたDV加害者にも、GPS携帯を義務づけることも検討する。ただ県条例のため、対象者が県外に出ると効力は及ばない。
DNA提出の必要性は県警本部長が判断し知事が決定する。DNAは県警で保存・管理され、県内の性犯罪の容疑者特定に活用するという。条例は11年度中の成立を目指す。
条例化検討の背景には性犯罪の高い再犯率がある。10年版の犯罪白書によると、強姦の犯罪者が再び性犯罪を繰り返す再犯率は15・6%で「かなり深刻」という。
現行の性犯罪再犯防止策としては、13歳未満の子供が被害者となった場合、前歴者の出所後に、法務省が警察庁に帰住予定地や出所予定日、服役罪名などの情報を提供する制度がある。宮城県は性犯罪対策として、個人が児童ポルノの画像や動画などを趣味で持つ「単純所持」を禁止する条例制定も検討している。【比嘉洋】