2011年1月22日 1時18分 更新:1月22日 1時58分
【シカゴ浦松丈二】中国の胡錦濤国家主席は21日、オバマ大統領の地元であるシカゴで企業や学校などを訪問、4日間の訪米日程を終えた。大統領との首脳会談では人権対話推進で合意するなど大国関係の基盤を一応固めた。一方、各地で人権団体の抗議デモに迎えられ市民と交流する機会は少なかった。今後、首脳間の合意を国民レベルの合意に広げることが課題になりそうだ。
胡主席はシカゴで20日夜に開かれた歓迎夕食会で「われわれがまいた友好の種は必ず芽を出し、花を咲かせ、結実するだろう。中国と米国は共に相互尊重、相互利益、共に勝者となる関係を打ち立てることができる」とスピーチした。
米中の「相互尊重」の原則は共同声明にも盛り込まれた成果だ。台湾や人権など敏感な問題を抱える両国にとって対話の基礎になるともみられている。
米中関係は昨年初めから台湾やチベット、南シナ海などの問題でぎくしゃくした。中国側は、胡主席訪米を通じて「脅威論」を払拭(ふっしょく)し、関係修復につなげようとしていた。
訪米した胡主席は総額約450億ドル(約3兆7000億円)の大型商談を手みやげにして実利をアピールしたものの、焦点の人民元切り上げや北朝鮮の問題で目に見える進展はなかった。
米CNNテレビは19日の歓迎式典の中継で「ノーベル平和賞を受賞したプレジデント(オバマ氏)と受賞者を投獄したプレジデント(胡主席)」と、中国の人権問題をあてこすった。平和賞を受賞した民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏の評価は欧米と中国の対立点だ。
胡主席は19日のオバマ大統領との共同記者会見で「中国は人権の普遍的な原則を受け入れ、尊重する」と説明した。しかし、中国側はこの発言を国内向けに伝えておらず、国民レベルでの相互理解にはほど遠い状況だ。
胡主席は21日、中国語と中国文化を教える「孔子学院」を訪問して一般市民と交流。来年秋の党大会で総書記の任期を迎える胡氏にとって、最後となる可能性が高い訪米日程を締めくくった。