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[26205] Eternal (シルフェイド幻想譚)
Name: kai774◆93a3a7b1 ID:cf3c74fe
Date: 2011/03/02 16:00
・今回当サイト初投稿となるkai774と申すものです。以降宜しくお願いします。

・この作品はSmokingWolf氏が作成し、SilverSecondというサイトで無料で公開されているRPGツクール製のフリーゲームのシルフェイド幻想譚の二次創作です。

・当作品は後にシルフェイド同盟にて投稿予定として作成しておりますので、プロローグの最初の部分に具体的な注意書きがあることをご了承ください。

・又、途中で以前書いた内容の大幅な修正を入れる可能性もあります。その際は、題名に修正日を記入いたします。

・オリジナルキャラクターは当ゲームの性質上(主人公が俗に言うDQ型の殆ど喋らない主人公)な為に、当ゲーム主人公のみは止むを得ずに出ております。
尚、主人公以外にもオリジナルキャラクターが出るかもしれません。

・その他、ゲーム内での没設定や裏設定の利用。オリジナル設定や展開が豊富です。

・遅筆です。非常に遅筆です。繰り返し言いますが、非常に遅筆です。

・皆様の内の一人でも、これを読んで面白く思って下さったら幸いです。


【編集履歴】
11.2.24  プロローグと第1章の3分の2まで初投稿
11.3.02  第一章と閑話その一を投稿。この記事を微修正。



[26205] プロローグ
Name: kai774◆93a3a7b1 ID:cf3c74fe
Date: 2011/02/24 19:48
!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!
シル幻の二次創作で短編集的な何か「だったもの」
捏造及び妄想からの多量なオリジナル設定
ナナシは俺の嫁
露呈される語彙の乏しさ
異様な程の文章力の無さ
貴方の中のキャラ像を崩壊する可能性の高さ
乱発される空白
ナナシは俺の嫁
激しい流血・グロ表現のシーン有り
作者回避非常に推奨
全てのキャラクターのメアリー・スー化
ハッピーエンド至上主義の方にはお薦めしません
厨二表現と展開に会話の多発
ナナシは俺の嫁
!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!!Caution!Caution!Caution!Caution!Caution!




FREEDOM DiVE...........




















↓If you read this story,you may regret doing.






















↓Are you OK?






















Welcome to this crazy story and world.













プロローグ【Hello,World!】








         俺は何でこんな所に居るのだろう。
         私はどうしてここに居るのだろう。








        最後には私の意志で持ってここに来たのは間違いない。
        少なくとも、確かに最終的には俺の意志でここに来た。






       別に俺としては取り訳文句は無いといえば無い。
       文句はあるのかと聞かれたら私は無いと答える。






      けどココで本音はどうかと尋ねれたら答えられない。
      だが本当はどうだと聞かれたら俺は口を噤むだろう。






     今の俺が文句なんて言ったら罰当たりとなるのだから。
     今の私が文句なんて言える立場とは到底ないのだから。






    名も無き群集等の内の一人に過ぎない私が、自信もって言い返せるだろうか。
    数え切れぬ程の十字架を背負っている俺が、小さな声で反論出来るだろうか。









   いや。出来はしない。









            だ、正に永遠に。
  決して出来はしないの
            に決まっている。







          私
 あぁ、せめて、今の に出来ることはと言えば――――――
          俺











     延々と変化しつつ続くのを
この世界が            祈ることだけにしか過ぎない。
     あっという間に崩れるのを








              だから、







            変わらない世界よ。







             さようなら。




















            さよなら、世界。

























               ☆











【Eternal】・形容詞
①(始めも終わりもなく)永遠の、永久の
 [限定](真理・法律などが)不変の、不滅の、時を超えて存在する
②[the~;名詞的に]永遠なるもの
 [the E~]神
③[限定]<<略式>><不平・議論などが>絶え間のない、果てのない

(以上、ジーニアス英和辞典第4版より)









【Eternal】・adj
1without an end;existing or continuing forever
2[only before noun](disapproving) happening often and seeming never to stop

(以上、OXFORD現代英英辞典より)














【エターナる】・動詞
実生活の多忙やスランプなどにより、
ゲーム制作に息詰まり、制作が完了できなくなる。
あるいは完了の見込みがなくなること。

(以上、Wikipediaの「ツクラー」の項目より)











               ☆









「っつー感じの文章で進めて行こうと思うんだけどさー。
でさー、お前らはどう思うか。」

「こんなんで及第点だと思っていたら、世の中甘く見過ぎだと私は思う。」

『右に同じく』

「あぁ予想通りの反応を有難う御座いましたよ。お二人さん。
だけど、こんな色々とアレっぽい臭いのする文章を、
所詮ほんの原稿用紙一枚程度だけどさ、書き上げきった。
そんな俺の努力くらい認めて貰えねーかな」

『仮に認めるとしよう。だが、お前大事なことを一つ忘れてないか。
これがお前一人が書きあげる気であるのならば別段俺は構わない。
右、続きは頼んだ。』

「オーケー、左。こちら右。
仮にもこれ――まぁ短編毎に回すから繋がりは殆ど無いにしろ――単独で書き上げる小説じゃないのよ。
流石にこの後に書くとなると気が引けるわね。」

「いや、そう言われてもさぁ。お前ら。
世の中の物語って最初が肝心だろ。竜頭蛇尾だったら不味いけど。」

『確かに確かに、確かにな。
本屋で本を買う時には、俺は最初の数頁を軽く流し読みしてから買うかどうか決める、がなぁ。』

「『決めるが』。という逆説に続いていく言葉は何なのかも答えて欲しいなー。俺は。」

『黙秘権の行使を申請したいのだが、宜しいでしょうか。右の方。』

「全面的なバックアップをセットに加えて申請を承認します。」

「何だ、この四面楚歌な状況は。別にいいじゃねーかよ。
唯さぁ、こういう文章書きたくなったから書いたというだけじゃねーかよっ。」

『その気持ちは分からなくは無いといえば無いな。』

「うん、私もこういう文章書く時も有るし、少し大げさに言い過ぎたという気はする。
しっかし、ここまでフルスロットルで最初からは書かないしね。
要はTPOを少しは弁えて欲しいってだけ。」

「その、えーっと、『てぃーぴーおー』ってのを守れば良いんだよな。
よーっしそれならば、今までに破った約束はせいぜい三つ位しかない俺に任せろ。」

『まだ一巡すらしていないのにもう不安になのだが、どうすれば良いんだろうか。』

「……左に同じく。」










               ☆

















              Eternal




















[26205] 第一章
Name: kai774◆93a3a7b1 ID:cf3c74fe
Date: 2011/03/02 15:53
第一章【起・アナタの存在を知って】






外に出ている時に、
突然意味も無いのにもふと、空を大きく仰ぎたくなる。







そんな衝動に駆られる人がもしも私以外に居るのならば、
そしてその人の名前を貴方が知っているのならば、
是非とも私にその方の名前を教えてください。

あぁ、そうそう。
もしも、貴方がそういう衝動に駆られる人ならば、
私は貴方に尋ねて良いですか。






貴方はどうして空を仰ぎたくなるのですか。







――えっ、私はどうなのかと。

ははっ、そうですね。
こちらが質問をするのならば、
先に私が答えるというのが人としての礼儀ですね。
そうですね、私は――


















…………くこー


















               ★


「あっちゃー、駄目ですねコリャ。
アルバートさん、この子完全にクースカピーですよ。」

『うむ。まぁ寝る前の様子を伺うと、
至極当たり前で当然のことであるっちゃあるが。』






何と素晴らしくかつきらびやかで、
人々の目を楽しませる満天の星空よ。






という感じの歯の浮くようなお世辞の一節すらも、
誰もが決して言わないだろうと思われる
ウンザリするような曇天の下に私は居た。



うん、多分。



蛇足だろうしそれこそ多分分かってくれていると思っているけど、
多分と言ったのは唯単純に目を瞑ったまま、
微睡んでいる状態だから確信しては言えなかっただけ。
それ以上でもないしそれ以下でも無い。


さてさて、それはさて置き。


今の私がどういう状況下に居るのかは、
きっと五、六割位は分かってくれていると思う。

更につけ加えておくと今は野宿中であり、
私が焚き火の近くでついさっきまで熟睡しており、
今は頭のおおよそ半分が動き始めたということだろうか。

冬の寒い朝の時に、中々布団の中から出たくないあの気持ち。

冬の寒い夜の時に、首から下をぬるま湯に浸かっている感覚。


今が大体そんな気分なのだ。


ただし、環境は「真夜中+肌寒い夜+数時間前まで降雨+土の上+毛布がシーツも加えて二枚だけ」、
と非常に劣悪だけど焚き火の近くで寝ている為に文句は言えない。



だって、寝る直前まで約三十時間以上ぶっ続けで動いてきたんだから、
だって、寝る直前に清流を汲みに川の中央まで入って凍えたんだから、
もう少しくらい寝かせてくれたって良いじゃないの。

それに何となく身体も毛布も暖かくなってきて、
更に気持ちよくなってきていると言うのに。



もしもこの現時点に置いては命よりも大事な毛布をあいつが引っ剥がしてきたら、
そん時には、一体どうしてやろうかしら。ウフフフフ。



『しかし、この寝相の悪さはどうにかならんのか。
最早ここまで埒外だと唯々呆れて閉口するしかないぞ。
一体こいつは何才児なんだ、全く。』

「その割には結構ペラペラ話してません?
という冗談はさて置き、うーんこのまま寝かしておいて大丈夫ですかね-。
特に現在の寝ている位置的に。相当際どいですよー、何か色々と。」

『もう別に放置でもしておけば良いんじゃないか。
ここまでしっかと寝ている人々を起こすのに快感を憶えるような趣味はもっておらん。
もう暫くこのままにしておくとするか。』


断固として起きようとしない私に見切りをつけたのか二人、
いや一人と一羽は立ち去って言った。


そうよ、それで良いのよ。お二人様。
有難う、普段全く読んでくれない空気をこと珍しく読んでくれて。
私はこの感謝の気持ちで今にも天に昇りそうな気持ちでございます。
っというのは流石に誇張しすぎかな。


寝ること以上に嬉しいことは指で数え切れる程しか思い付かない、
そんな私にとっては歓喜の余りで、
もしも完全に目が覚めていたら思わず叫んでいただろう。




さてさてそれでは今暫くもう一度、
あのゆるやかで心安らかで落ち着ける空間に自分の身を任せていこう。




「私」という存在の境界が消え失せて、あの形容しがたい存在と同化していくにつれて、
本来ならば急速時には余り動かない筈の交感神経を刺激されていく。
とは言えども脳の活動は私の意識を段々と朧かにしてゆく。




おお、なんて明瞭で美しい矛盾なのだろうか!




完全に同化したと思ったら、
最後の最後には果てなく続くかのような、
奈落の底に居る何かに「こんにちは」をしに静かに落ちていく。

その何かに私は出会った記憶は今の所無いけれども。











あぁ、甘美で病み付きになるあの感覚の素晴らしさよ!











「それじゃー、どうしますかね。
この手間を掛けて作ったこの食事。
それにしても意外にも食事作れるんですねー。」

『仮にも一、二年は一人旅を続けて来た身だ、
こんな食事が作れなかったら到底旅を続けられないだろうよ。
こういう食事ならば直ぐに材料は釣りや狩りをすれば、比較的楽に調達できる。
野菜やら果物は余り採れないのが難点の一つといえばそうだ。
しかし、少なくとも腹は膨れるし十分に元気は付く。』

「んー、言われてみればそうですね。
後、見た目や匂いからしてかなり美味しそうですよ、これ。」


ピクッ。
そういえば、私ろくに食事していなかったなぁと、
滓んだ思考で第三者の視点から思っていた、最初は。

しかし一度澱んでいたとしても意識し始めると途端に意識は覚醒していくものであって、
事実私はそうなった。

あっ、ヤバイ。本当にお腹の音が鳴りだしてきそう。
それと今更気付いたんだけど、今私って焚き火の近くにいるのね。
だから背中やら喉やらが妙に熱くなっているのね。

そう思うとポニーテールの毛の先端が焚き火の中に入って、
私の体まで燃え広がるみっともない自分の姿が瞼の中にありありと浮かんできた。





それは不味い。





「寝ていたら、何時の間にか焼死してしまいました。えへっ。」なーんて、リクレール様に復活してもらう時に答えたら、
リクレール様がどれほど呆れかえった顔をなさるのだろうか。
想像がつきそうだが、それを遥かに上回りそうな予感がする。


それに又十数回は生き返られる保証はあるとはいえ、
生物の本能として死にたくはないという気持ちは流石にある。
多分他の人々とは違ってその気持ちは少し弱めだろうけど。

かといって、まだゴロゴロしたいしなぁ。
どうしようか、むむむ。


『本当か、そう言われると少し含羞みたくなるな。
それよりもだ。こいつ用に作った食事の分をどうするかが、俺にとっては問題だ。』

「非常に勿体無いですが捨てる羽目になりますかね。
私は御覧の通り実体はないですから食べられませんしね。」

『大食漢という程じゃないが相当食べる方の俺でも、この分も全て食べるのは辛いな。
一般的な一人前よりかは十分多めに作ったのが誤りだったか。』


止めて止めて止めて。本気で腹の音がなりかかっているんだから。
あーあ、折角二度寝でもしようかと考えていたのに、
すっかり眼がさえてしまったじゃないの。

はぁ、そうしたら観念してそろそろ起きようかな。

お腹も空いているし、
意識がもう完全に明瞭となってしまっている。







所で、











起きる時に一体何て言うべきなんだろうか。










それを数分間色々と悩んだ挙句に最終的には何ごとも知らない振りをして起き上がり、
フェザーと本当にそういう所は鈍いアルバートの視線が妙に痛く感じられたことについては省かせてもらいたい。
素直に起きれば良かったのに私の馬鹿。



               ★



食事の間はフェザーが見張り番でもしますよと申し出てくれたので、
その言葉に甘えて私は羽を伸ばしていた。

実際の所は気を使って二人きりにしてくれたんだろうが、
生憎ながら私はその気は全くないんだけどなぁ。
きっとあいつも見る限り、女にそういった意味での興味なさそうだし。

近くにあった平たい岩に座り、
膝の上に置いた作って貰った食事に目を落とす。

縁の周りが歪つで黄ばんでいる皿の上には、
出来てから時間が余りたっていない焼き魚が数切れ程乗かっている。

魚以外にもどう考えてもその辺で狩りや採取をして得た、
と思われる肉や山菜を具として混ぜた汁物がある。

確かにフェザーの言っていた様に、汁物は見た目や匂いからして美味しそうだ。
だけど世間には外見は素晴らしくとも中身がアウトな物は、
意外にもゴロゴロ転がっているもんだ。

如何にも料理とは無関係にしか見えない、
「あの」アルバートが作ったものだと言うのならば尚更だ。

たかが焼き魚とは言えども、
世にも恐ろしい味の可能性がある。正直に言うとそう思っている。

一呼吸置いてから恐る恐る武骨な箸で小さめに切って、
焼き魚を一口だけ口まで運ぶ。

「あっ、美味しい。」

決して御世辞のつもりではなくて、心からの本音だった。

生過ぎず、かといって焼き過ぎておらず丁度良い焼き加減。
それにこの魚は噛みやすくて、
脂がのっており非常に美味しくなっている。

そして残念なことに、
私はとあることを受けいれなければならない。



何とはあえて言わないが、私はアルバートに負けた。





そう。





この外来語を話す長身のthe不審者に、
たった今とあることで負けてしまったのだ。




身の丈以上もある大剣をぶんぶんと戦場で振り回してたり、
箪笥を担いで全力疾走しても息が途切れなかったりするし、けれどさ。

私、私、女性だからね。
こんなんでも心はうら若き女の子だからね!

何かこういう弁解をする時点で、
つくづく女の子らしくないんだなぁ、私。





……はぁ。





『んっ、それなら良かった。
この魚がお前の口に合うかいまいち確証がなかったんでな。』

「この魚とても美味しいよ。
脂がのっているし、食べやすいし。
多分あそこの湖で釣ったんだろうけど、一体この魚何て名前?」

『分からん。』

「いや、分からないって。
あんた、それって大丈夫なの。安全性的に。」

『分からない物は分からんから仕方あるまい。
どうやら渾名みたいのは付いていたらしいが、
俺が人から教えて貰った頃には聞かなくなったな。』


ふっとここで疑問が一つ出て来たからぶつけてみる。
きっとあいつも考えたんだろうけど。

「何であんたが居た世界と、
殆ど同じ魚がこの世界にも存在しているのかな。」

そう、あいつはこの世界の元々の住民ではない。
私もこの世界で生まれ育った訳じゃない。




あいつとは違うのは、
私は元々どの世界にも居なかったということだ。



そう言えば今まで名乗っていなかったわね。



こんにちはで良いのかな。
始めまして、私の名前はナナシ。

以降、暫くの間は宜しくね。



決して漢字でもなくて平仮名でもなくて、あくまでも片仮名。
だからといって数字でもないからね、念の為に言って置くけれど。


名前の由来は当然のように「名無しの権兵衛」から来ているんだと思う。
思うに疑問を抱いた人も居るだろうけど、この名前は私が付けたものじゃない。

私を生み出してこの世界に送り込んだ、
女神であるリクレール様が付けてくれたものだ。



『それは俺も釣りをしている時に思ったし、逆に俺が聞きたいことだ。
考えられる可能性としては幾つかあげられると思う。』

「うーん、一応この世界とあんたの世界の海洋環境が、
酷似していたなんてのも考えられるけど。」

『先ず有りえんな。そんな偶然。』

「えぇ、そうね。」

『その次に考えられるものとしては、
この世界が時間軸を除いて俺の居た世界と同じ世界ではないのかということだが。
之について異論はあるか。』





実は、そうじゃないかと私は確証している。




あいつは腕は相当立つとはいえども、
この世界のトーテムよりかはあいつのトーテムは僅かに弱いし、
理力もといフォースを操る力なんてはそもそも消え去っているけれども、
それこそここの海洋環境よりも酷似している。


他に思いあたることと言えば、
私がシズナさんの見舞いに行った時の帰りのあいつの行動程度か。


私と共に家の中に入りシズナさんを一目見ると、
顔色を変えたかと思ったら慌てて外に出て行った。

サーショの街を出てから理由を尋ねると、
学生時代の女友人と雰囲気が非常に似ており思わず逃げてしまったと述べた。


他人の空似じゃないのと聞いてみると、
 俺の友人もよく床に横たわっていて、その状況を思い出してしまったと、
あいつは言葉を濁しながら呟いてスタコラサッサと先に進んでいった。







その背中が私には異様に寂しく感じられたので、
それ以上の追及は止めた。







何はともあれ私も全然異論は無いと言い返す。
するとあいつはお前もそうだったかと言うと、
箸を止めて視線を斜め上に向けてから続けて言った。

『俺のようなトーテム能力者の存在、
宗教になっていないが人々に根付いているリクレール信仰、
サーショに居た俺の知り合いに似ている女性、
それとおまけ程度だが海洋環境。
俺の居た世界と関連性があるものを、
直ぐに想起できたものを単純に列挙してみたが。』

「どれもこれも偶然の一言で済む代物じゃないわね。
こんなのが全て偶然だったら奇跡どころじゃ済まないでしょうに。」

『あぁ、同感だ。
一応、言語やら理力もといフォースを操る力やら等については変化したり消滅してしまっている。
この辺に関しては時代の変遷で補足説明出来るだろうから、
今は棚に上げておこう。』

「伝承や民話で何かしら関連付きそうな物は無いの。」

『古くから伝わってきた伝承や民話か。確かに史実を基にしている物は多いと言われているな。
しかし残念ながら、俺は余りそういう話を聞いて育たなかったらな。』

夜空を見上げて苦笑いをしながらそう言った。


あいつと話してみるとせいぜい二十代の印象が強いし、
実際にそうだろうけれども遠目から見ると妙な貫禄が有り実際の年齢が上にみえる。


そんな印象を抱いてしまうのは、
幼い頃から多くの修羅場を潜りぬけて来たからだろうか。
単に老け顔の可能性も高いけれど。





私は知っての通りまだ生後一ヵ月にも満たないので、
修羅場を経験したことがない。

彼是数日以上経過しているからそろそろ来るのだろうか。
実はの所、砦戦は真夜中に突入しに行ったせいかあっさりと攻略出来たからか、
折角の準備が殆ど意味が無くなってしまっていた。




『そんな俺でも一つ思い当たる話があってだな。
伝承や民話というよりかは一種の御伽話しに分類されるが、
間違いなくこの世界を指し示しているのがある。』

「ほお。」

『題名が多種多様で最も有名な物としては、あー、そうだな。
『名無しの英雄』だろうか。』


それまでゆっくりながらも動かしていた箸を思わず止めて、
あいつの顔を覗き込むように見る。




向こうからは目を見開き口もあんぐりと開けている、
という間抜けでもあり不気味でもある顔をしているのだろうか。






『きっとお前の想像通りだ。
正に今お前と俺がやっている旅の事だ。』

「それっ、それ本当に本当なの。」

声が震えているのが自分でもよく分かった。

『ここで嘘を言って何になると言うんだ。
唯一つここに来てから、その話の中で気になる事がある。』


あえて何も言わずに無言で頷く。


『俺がその中で全く出て来ないんだ。』

「はぁあぁっ?」

巷での有名な話や噂に自分の名前が全く出てこないのが悩みの種なんだ、
とナルシストめいたことを突然言われた経験の有る人は他にも居るのだろうか。

ふと、頭の片隅でそう思った。

『いや、だから自惚れという訳では無いぞ。勘違いしているようだが。
例のその話は世の中で流布されているものは簡略化されているが、
原本は大人も読むようなファンタジーに分類される古典小説だと認知されてある。』

「ここに来てからそれが想像で作られた小説では無くて、
実際に起きた事柄を題材にしている、つまりノンフィクション小説や歴史小説だと知った訳ね。」

『そうだ。しかも下手すると歴史の資料として古典という面以外からも重要な代物かも知れん。
これから言うその話の内容は俺が全部読んだ訳では無くて、
最早暗唱できるまで読んだと思われる姉からの受けうりだが、良いか。』

構わないわと応答してから、
特に意味もなく空を見上げた。




単なる雨も雪も降らない満天な夜空だ。
今までに飽きる程見てきたこの光景。
なのに何故私は空を見上げたく、空を仰ぎたくなるのだろう。

分からない。自分でもさっぱり分からない。



もしかしたら、自分でも分からないから理由を求めにそうしたくなるのだろうか。馬鹿馬鹿しいにも程があるけど。








私は空を見つめていた。







その御伽話しに空を仰ぎみる描写なんて、
多分存在しないんだろうと何故か淋しくも感じながら。








               ★


「うーん、確かにあんたが出てこない点以外は、話の概要とこの世界が完全に一致してるわね。
それこそ不気味で鳥肌になる程に。」

大よそ十数分程あいつはそれの内容について、
時々冷めた汁を飲み物代わりにして飲みながら話した。
真っ先に抱いた感想は私が述べた通りのまんまだ。

しかし、時間が経つ内にあいつが言ったように、
何故あいつが擦りとも出てこないのかという疑問が浮上してきた。

「そして、確かにあんたがうんともすんとも出てこないのが気になるわね。」

だろ、とあいつは小さく相槌を打ってから肩の力を抜いてから、
少々力無さげに言った。

『今の話の中ではマントを羽織った少女――要するにお前だな――がたった一人で旅をしている。
最初に三人称視点で書いている人物が俺では無いかと考えたのだが。』

「流石にここまで一人旅だということが強調されていれば、
何も言えないなぁ。」

『それに僅かに見た限りだが原本の文体は俺の書くような文章ではなかったしな。』

となると、と右手の人差し指を天に向けて、
少し間を置いてから続けて短文を一つ。



「あんたがこの世界に来ていなかった。」



その人差し指をあいつに向ける。


このような結論に達した理由はごくごく単純なもので、
消去法をしつづけていたら最後まで残っていた答えはこれだったから、それだけだ。
恐らく本来ならばこれが真っ先に結論として上がる代物だ。





だけど、これを実際に認めるのは精神的にかなりキツいものがある。











何故なら、だって――――











あいつは軽く頷いてから
至って普通のトーンで私に続けて言った。

『俺も初めはその結論に至ったし、
確かに一般的には納得できる答えでもある。』


一般的にはな、一般的には、とその部分を強調して繰り返し呟いた。


『だが、当事者の俺としては些少ではすまない問題があってだな。』


矢継ぎ早に言葉を鎖のように繋げていこうと思ったのか口元の端が浮いたが、
躊躇して止めたのかその口元はそれ以上上がることなかった。
自らの口に出してしまうとその事実を認めないとならなくなるから恐れているのだろう。



ならば、せめて。





「あんたが元の時代に帰れない可能性が極めて高いことでしょ。」


突き放すように単刀直入に強い口調で言う。
それに内容が飛躍しすぎだけど同じことを考えていたに決まってから、
あえてあいつに対して説明はしない。





何度も繰り返して言うが、世界観はもとより、地理、街や人々の名前、歴史は全て同じ。

小異はあるものの主人公である郡青色のマントを羽織り、
銀髪の青年の十代後半の女の人の行動までもが私の行動と似ている。


あいつは概要のみしか話さなかったから違う可能性もあると言えばあるけど、
その主人公と私もきっと似たような口調、
ううん、まるっきり同じ口調なのかもしれない。

何か、そんな感じしかしないというのが本音だけど。



何はともあれ。

あいつが話した物語は事実を元にしたものであって。


あいつはここと時間軸が同一の世界に住んでいた。



分かりやすく言えば、




あいつはこの世界から遥か遠い未来の住人だ。





もしも近い未来に居たのだったら、
言語の違いから生じる問題とは衝突しなかっただろうし、
まず私の姿をみて、えー、えーっと「名無しの英雄」だと気がついたんじゃないか。

かなりちゃんとした事実を纏めた話が後の後にまで伝わっているのだから、
十数年後やら数十年後やらの近い未来ならばもっと詳しく、
あー、その、「名無しの英雄」やらが伝わっていてもなんら可笑しくない。

にしても自分のことをこれで言ってみると何かこそばゆくて、
怪しげなことを叫びながら背中を無性に掻きたくなる。






『……やはり、お前もそう思うのか。』

諦めをつけたように深い溜め息をして、
じっと私の方を見つめてくる。



黒い眼帯の奥底からも覗いてくるような、
そんな鋭い眼差しだった。






その眼の中に頭を抱え、
項垂れているあいつの姿が見えたのは気のせいではないだろう。






「そもそも先に話を切り出したのはそっちでしょうに。」


そう返されると肯定するしかないが、
とぼそぼそと言ってからあいつは目を逸らして俯いた。




別にあいつが私にこの日に言いたかった理由は、
別に分からなくもない。


少し話が飛ぶけど例えば貴方がふとした拍子で、
一生に使いきれない位の量の大金を手に入れたとしよう。

しかもそのお金は苦労して手に入れた物では無くて、
偶然どこかの道元で拾ったようなもの。



はい、そこっ。

大金を道端で拾ったら量の嵩張りや、
重さのあまりに持ち運びきれないんじゃねーの、
という突っ込みはしないの。これ、例え話なんだからっ。


えー、ごほん、本題に戻って。




そうしたら次に貴方はどうしますか。





今迄買いたくても買えなかったものを嬉し涙を流しながら買いに行く。

どや顔をしながら大人買いをしてみる。

贅沢品の収集をしてみる。

レストランやバーなどで皆に奢ってみる。

何となく高笑いをしながら外で散撒いてみる。

等々と色々と上げてみるけど、
案外こんな行動をする人は少ないんじゃないだろうか。


私。私ならば、そうね。




その大金に手をつけずにそそくさと逃げていくと思う。




今、私がチキンだと考えたでしょう。
いいよ、別にそう思ってくれても構わないわよ。        くすん。



でも、どのような経緯で自分の手元にまで辿りついたのか、
全く予想の付かない天文学的な数字を持つ大金。

これを訝しまない人っているのだろうか、
いや恐らく殆ど居ないでしょう。

もしも「ぐへへ、ぐへへ、金だ。金だー!」とか、
「ヒャッハー、大金だぜー!」とか叫びながら各々の事に使うような奴が居たら、
そいつはよっぽどの金の亡者か、
生きることさえも満足にいかない貧窮な人じゃないかなと私は思う。




さて置き、その金は出所が不明な物なのだ。
だから次のように勘繰る人も多いだろう。


もしかしたら、麻薬やら臓器売買やら闇のルートを駆使して作られた物かもしれない。

もしかしたら、本当に超大金持ちがうっかり道端に落としてしまった物かもしれない。

もしかしたら、逃亡中の泥棒が今暫くの間は逃げる為に隠していった物かもしれない。

もしかしたら、その中に爆弾を仕掛けて無差別テロを引き起こす為の物かもしれない。

もしかしたら、神様が人がどんな行動をとるのか知りたいので置いた物かもしれない。





分からない。



全く手掛かりが無い状況なのだ。



本当に想像と言う名の妄想をするしかない。

ずっと迷宮の中を彷徨い続けていくしか無いのだ。





えっ、
そんな例は絶対可笑しいよ、だとか、
有り得ないだろ、之。常識的に考えて、って突っ込みたいの。
何、既に突っ込んでいるから安心していいよと。


いやいやいやいや、だからこれ例え話だから。


一番最初の文章が英語で表すと、
"If you were to get a large quantity of money,what would you do?"で始まる文章だから、ね。うん。



あー、げふんげふん。



兎に角、こんな不安な種を抱えながら誰にも言わずに、
何事も無かったかのように平気な顔をして日常生活を送る。

そんな事が出来るような鉄の心臓を持っている人間はそう居ない。
大体の人は不安の種を除去するか、他の人に吐露をする。







人間なんて一人では生きていけない、
弱い生物の内の一種にしか過ぎないのだ。







かの有名なロビンソン・クルーソーのように、
それこそ無人島で一人きりになったら別だろうが、
自分の周りに他の人が居たら、



一人で、
    ひとりで、
         独りで、


居るのは到底堪えられないだろう。






あぁ、それこそ、又、もしかしたら、だけど、
この世界の人に、仇なすとされている、竜人だって、









私達と、同じ、なのかも、しれない。








『元々何時死んでも可笑しく無い環境にこの身を置いていたが、』


ふっ、とギザっぽく笑って、
二、三分の間俯いていた顔をあいつは上げた。


――いや、あの笑いは自らへの嘲笑めいたもの臭かった気がしてならない。
そう女の勘が叫んでいる。



『こうしてある意味では、
余命宣告されるとなると辛いものがあるな。』


あいつはそうやって寂しげに嗤っていた。




あぁ、そう言えば何であいつが元の時代に戻れないのか、
という説明がまだだったわね。



「まさかタイムパドラックスをこの目で見る羽目になるとわね。」



そう、タイムパドラックス。



何らかの形で名前を聞いたことのある人は多いんじゃないのかな。



えっ、知らないの。嘘でしょう。



『単なる言い違いだと思うがパラドックスなパラドックス。』


パドラックス、パドラックス、パドラックス。

頭の中で同じ言葉を反芻してみる。

パラドックス、パラドックス、パラドックス。

再度脳内で繰り返し呟いてみる。




……最初の方が言いにくい。




「そうと知っているに決まっているじゃない。
幾らそんな単純な言葉を間違う訳なんてないでしょう。」



そう、タイムパラドックス。



何らかの形で名前を聞いたことのある人は多いんじゃないのかな。




『なら、良いが。』

普通の人ならにやついた顔や笑ってくるのだろうが、
さっすがアルバートさんマジで鈍感だわー。

本気で私の言葉をそのまま飲みこんだらしくて、
ケロッとした表情で見つめてくる。





逆に無性にいたたまれない気持ちになってくるから、
いっそのこと大爆笑して欲しいんだけど。





さて、本題に戻ってタイムパドラ、じゃなくて、タイムパラドックス。




数多くのSFをテーマとした映画や小説にドラマ、それにゲーム、
と言ったバラエティーやエンターテイメントに登場して来るこのタイムパラドックス。



登場人物が何らかの方法で過去の同一の世界へと行き、
「登場人物がから見ての」過去の現象、事件を変える。
そして元の居た時代に戻ったら未来が変わっている。

要約するとざっとこんなものだろうか。



それじゃぁ試しに今回の場合で憶測を入れつつ、
当て嵌めて今までの状況を箇条書きしてみると、



・事故やら偶然やら何やらが発生して、あいつがこの時代に来る。
・私がここに来てから四日目の夜に例の翻訳できるブツを渡し、
 あいつは私の誘いに乗って連いていく。
・共に旅をしていく内に、例の古典の内容とそっくりな事に気付く。
・自分がその古典に全く出てこないことにも気付いてしまう。
・現在八日目の深夜で、今日休んで明日にでも離れに居る島の敵と戦いに行く予定。


何となくだけど、離れの島の敵と戦い無事に勝利したら私達の旅ももう終わる。
そんな予感を心の奥底から何かがひしひしと訴えかけてくる。


気になるけど今は構っていられない。
ここから先はあくまでも予想であり想像にしか過ぎない。

けど限りなく事実に近いものだと思う。

・(きっと)旅が終わってあいつは元の時代に帰ろうとする。


が、ここで大きな問題がでてくる。


元々あいつがいた世界でのこの時代の歴史は、
「この旅に『アルバート・ウェスタリス』という人物は全く関わっていなかった。
そもそも『アルバート・ウェスタリス』はこの時代には存在しなかった。」ということになっている。



しかし、今私達が居る世界、つまりあいつの世界からみた過去では、
「この旅に『アルバート・ウェスタリス』は大いに関わっている」という事実が出来てしまった。





ここでタイムパラドックスが起きている。






別に歴史上の舞台に新たな役者が一人登場しただけだから別に何ら問題は無いかと、
最初は思った。






『なぁ今思ったんだが俺が帰る世界では、
例の話の中に俺が登場するのだろうか。』

「かもしれないけど、
それこそ驕りというものじゃないかな。アルバート君。
それに実名で登場していたら色々と問題が出ると思うよ。」

『肝胆相照らしていた仲から根堀り葉掘り聞かれそうだな。』

「いや、研究者辺りから尋問としか思えないような質問攻めにあうんじゃないの。」


言われてみるとそうだな、
と腕を組んであいつは唸りながら考えこんだ。




さっきの話を続けていくわね。





だけど、この舞台は以前の講演を元にして新たな講演が行われる。
あいつの居た時代から見たら、この時代は途方もつかない位昔だ。


言わばこの時代はあいつの時代にとってみれば、基礎土台の中でも要となる部分だ。

その要が僅かでも動いたら、後の設計や講演はどうなっていくのか。
当初の予定とはどれほど異なっていくのか。






友人がその世界に居なかったり、

親友が見知らぬ人達になってたり、

家族構成自体が変化してしまったり、

身の周りの自然環境が変改していたり、

住んでいた場所の地形が褶曲していたり、

自分の世界の歴史が歪曲させられていたり、

そもそも自分の過去に手が加えられていたり、

そもそも自分の容姿がまるっきり異なってたり、

そもそも自分の存在がこの世から消されていたり、



想像だにつかない。










そもそも、あいつは帰れるのだろうか。




偶発的にここへ来たに違いないから、必ずしも同じ時代に帰れるとは限らない。




(孤独なタイムトラベラーか。)
心の中でぽつりと言葉を漏らす。





空虚である私の心の中にある湖に、
冷たな水滴が一滴落ち波紋を引き起こした。


この波紋は遥か先にまで届いてゆくのだろうか。


私の知らぬ彼方まで歪な弧を描きつづけるのか。



(ある意味で元の場所に「還」られる私は恵まれているのだろうか。)

もう一滴、もう一滴と壊れた蛇口のように少しずつ水が漏れていく。
私自身の言葉も口から洩れだしていくのではないかと不安に陥った。









――そうね、貴方は幸せものなのよ。――









湖の奥底から艶やかな声で作られた波紋が返ってきた。









               えっ。







その瞬間に私は掴んでいた意識を手放したのか、
自分の身体が鉛直方向に重力の速度で加速しながら落下していくのを感じた。






「ごめんなさい。」





完全に体が水に漬かる直前に、
空気を求めて水と共に無意識の内で吐き出した言葉はそれだった。



後は溺れていき、湖の底へと向かっていくのみだった。





               ★
















前回のセーブより一時間以上が過ぎました。










セーブしますか?

















               □


バーン歴五百年。
俺が来てから五日目の夜の事だった。





             ごめんなさい。






そう言って、彼女が胸がつかえた動きをしながら突然意識を失った。

予測のつかない現象だったので、
口をあんぐりと閉口ならぬ開口しており俺は木偶の棒となっていた。

やはり使用者と繋がりが深い為に何らかを察知したのか。
あいつが倒れた直後にトーテムのフェザーが焦りながら駆け寄ってきた。
駆ける、というよりかは翔るというほうが行動の意味としては正しいか。


どうやら俺が出会う前にも数回あったらしいので、判断は早かった。
フェザー曰く、まだ疲れが取れていないから暫くの間また寝かして置こうとのこと。

俺は彼女の上半身を抱き起こして下に毛布を引いてやり、
その身体を戻してやる。






彼女を抱きしめてやると、意外なことが一つ。




(何て華奢な体なのだろうか。)



華奢過ぎて、ほんの力を入れてやると直ぐにでも壊れてしまいそうだ。
用法は違っているが砂上の楼閣や天上楼閣を連想させる。







儚い、その一言に尽きる。







確かに素早い行動をするには――こんな事を面と向かって言ったら命が縮まりそうになるだろうが――、
まだ発達途中で二次性徴の途中だからか、
脂肪が余りついていないこの女性の身体はもってこいだ。



(とはいえ、ここまで幼めな体つきをしているとはな。)



彼女本人は自らを二十歳よりも少し上と言い張り、
学校だったら年齢としては俺の後輩であっても差支えのない年齢だ。
しかし見た目に関しては、
特にこのようにグッタリしていると下手すると十五と主張しても十分に通じる。

(だからこそ幾ら年齢を主張しても、
逆に大人に憧れて伸び盛りな子供としか見なされないんだろうが。)

前回アーサと言い合いをしていた姿を連想して思い出し笑いをする。

戦闘中は何というか女とはとても思えない形相やら金切り声を上げたりしたりやらはせず、
基本的に無言で冷静な判断を行い、
積極的に剣を無駄なく振るいながら前へと向かう姿は手馴れた戦士であるのだが。





本当に経験が無かったことを疑う程に。






『フェザー、疲れたので夜風に当たってくるからここを暫く留守にしてよいか。』


野外ですから十分当たっていますけどねー、
と茶化しを入れてから二つ返事を貰ったので茂みを離れて開けた草原へと出ていく。



               □



開けた草原に出ると風が強まり、
首から下に掛けている傷だらけでほつれかけているマントが揺れる。


昨日の正午前に彼女が魔王の心臓掲げて離れの島への道を道標を作った。

その道標はおおよそ半分まで出来ており、
近付いておそるおそる片足を乗せてみるとバランスを崩すこと無く乗っけることが出来た。




『残り半日足らずで終わりなのか。』



様々な実感が全く湧いてこず、
胸の奥でむかむかとした嫌悪感しか覚えない何かが渦を巻いている感じだけがする。





現実とは全く予測のつかないことだ、と相手は居ないが何かに向かって言い放つ。




仮にこのまま生きて帰られたとしても
その世界は俺がこれまでの間生きぬいて来た世界ではない。




俺が生きていた証拠が幾ら存在しようとも、
それはその世界で生きていた「俺」の証拠であって、
今の「俺」が生きていた証拠にはならない。


又下手すると、別の世界の「俺」と会うかもしれない。


それが一番厄介な羽目になりそうだ。

そうなったら目の及ばないような所まで逃げ延びないとならない。
船を繋いでいけるだけの金の余裕はあるはずだから何とかなりそうだが、
道中で今は戦場を渡り歩いている医者の友人と出会う可能性が無きにしもあらず。



(いや、そもそもその友人が別人になっているかもしれないんだよな。)


等とあれこれと考えても所詮は堂々巡りするのみ。
全てを天に任せるしかない。


脳を空にしてこの草原で寝るのも悪くはなさそうだ。


それに明日への体力も温存しなければならないから、
最も合理的な選択だ。








『まさか俺の骨を埋める土地が過去の時代になるとはな。』










何とはなしに最後に一言言ってから瞼を閉じた。
















――雪にまみれたまま熟睡しているアルバートの姿を、ナナシが呆れながら見つけるのはまた別の話。











第一章・了



後書き


初め20kb弱の予定が結局30kbに。
しかも書く予定の内容の内三分の一は削った筈なのに……アレー?
先が思いやられますが、頑張って完結させたいと思います。






何、今更シル幻の2次か。マジで誰得だよ?、
と申しますか。



うん、実の所俺もそう思うんだ。



[26205] 閑話その一
Name: kai774◆93a3a7b1 ID:cf3c74fe
Date: 2011/03/02 15:58
閑話その一【本業勇者ですが作家の物真似しています】

「んっ、ようやく私の番が書き終わったー。」

「おー、お疲れ様。んで、出来についてはどう思うんだ。」

「個人的には久し振りに書いた割には、まぁマシという程度かしら。」

「可もなく不可もなくという感じか。」

「そういうことになるわね。
にしても自分の感情を日記以上に、
細やかに書くのって予想よりもシンドイわね。」

「寧ろそこまで委細に、
ってか詳しく書ける事自体に疑問に思わないのか。」

「残念な事にそういうのはもう慣れてしまったかな。そういうのに関しては。
何だったら一から十まで全ての台詞も交えて書き上げてみようか。」

「それやったら、お前あれか。
勇者ナナシ様の偉業をナナシ様がお筆をおとりになって、
バカ丁寧に丹精籠めてお記しなさった自作自演な本がでる羽目になるぞ。」

「実は以前どこかのちょっとした衛星世界で書いたけど。」

「……マジ?」

「Yes,really.あんた達が出稼ぎに出ている間に暇で暇で仕方なかったからね。
ちなみにその文章。何か今では美化されて古典として扱われてしまってるみたい。」

「馬鹿か、お前は。
それと今までのは棚にあげるがその情報はあのデカいのからのか。」

「えぇ、今じゃ無くて楽しい楽しいお仕事中にね。
ちなみにあいつ現在進行形で就寝中だから肩の力抜いても大丈夫よ。
恐らくあそこまで酷いのは久々でしょうから、そう簡単に起きないでしょうし。」

「んっ、そうみたいだな。あー、だけど今は遠慮しておくさ。
話している最中に起きられたら困るし。」

「それに会話中にお呼び出しが来そうな頃あいだからでしょう。
一番は聞かれたら大爆笑ものだからじゃないの、あんた。」

「それは否定できないな。」

「そんな異様に無邪気な笑顔を浮かべられても反応に困るんだけど。」

「それは悪いな。」

「……ねぇ、さっき私が言った内容理解しているの。」

「ははっ、当たり前じゃないですか。
この私めがそのような内容を、
即座に耳から耳へと抜けるように理解できないとでもお考えのようでしょうか。」
 
「今の発言で完璧に私の判断が間違ってないことが証明されたけど、
大丈夫ですかこの勇者様。」

「とまぁ、変なやり取りは終了させて閑話休題だ。
なぁ、お前はさぁ、あれがそろそろだと思うか。」

「今書いた原稿読めば分かると思うけど、そう遠くない近頃じゃないのかな。」

「やっぱりそうだよな。ぁー、何か緊張するな。」

「最初から知っていた事でしょうに。」

「そりゃそうだけどさ。仕方無いものは仕方――んっ?」


(遠くから重たい扉が軋みながら開かれる音が響く。)


「見た所、今回はどうやらあんたの方みたいね。
ほらほら、お勤めにでも行ってきなさい。」


「へいへい、言われなくとも承知しておりますよっと。」


「じゃあね。私は期待しないで待っているから。」


(男は準備準備を終えると身なりを正し、行儀よく振り返りお辞儀をする。)


「有難う。
この別れはほんの暫くの間ですから、その言葉の通り期待しなくて結構です。
それでは又十五日後までにはお会い居たしましょう。
それでは、又。」


(男、そういうと扉に向かって走っていき中に入る。そして、扉が閉まる音が響く。)




「全く、生真面目すぎるにも程が有るわよ。そう思わない、アルバート。
って、てっきり起きているという落ちなのかと思ったら、本気で熟睡中だとは。
まぁ、そのほうがらしいと言えばらしいけどね。」





               ★







新たなゲームを始めますか?








それでは、貴方に神の加護があらんことを……。






               ★






後書き

見ての通り閑話です。えぇ。
章と章の間にこのような短い閑話でも挿入していくつもりです。



……後、俺にはセリフだけの文章を書くのは、
向いていないことが良くわかりました。ギブミー文章力。


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