NEC:「国内市場頭打ち」が背景に レノボと合弁

2011年1月21日 21時46分 更新:1月22日 0時46分

 NECが中国のパソコン(PC)最大手、聯想(レノボ)グループとパソコン事業の合弁会社を年内にも設立する交渉を進めていることが21日、明らかになった。NECの100%子会社を母体にレノボが過半を出資する方向だ。NECブランドは維持するが、スマートフォン(多機能携帯電話)の躍進などもあり、NECに強みのある国内市場は頭打ちの見通し。世界で存在感を高めるレノボの資材調達力や販売網を活用することで、パソコン事業のテコ入れを狙う。【弘田恭子】

 NECがレノボと提携交渉を進める背景には、価格競争の激化する国内市場だけで生き残るのが難しくなっていることがある。

 調査会社IDCジャパンによると、国内パソコン市場は10年に約1500万台。これをピークに今後はスマートフォンや米アップルの「iPad」のようなタブレット型端末にも押され、頭打ち傾向が続く見込みだ。国内市場がじり貧となる中、レノボと生産や開発、資材調達を一体化することでコスト競争力強化を図るほか、レノボの中国での販売網活用も視野に入れている模様だ。

 NECは国内パソコンメーカーの先駆けで、かつては「98」シリーズなどのヒットで、国内シェアの過半を占めた。95年には米パッカードベルに出資するなど日本のリーダー的存在だったが、海外メーカーの台頭などもあり競争力が徐々に低下。海外では00年以降、米国、欧州などから撤退し、09年には海外事業から手を引いた。

 国内市場で首位を維持するものの、世界規模の生産販売で価格競争力を強める大手との差が広がる中で「独力で世界に出ていくのは現実的ではない」(関係者)と判断したと見られる。

 ◇レノボ、日本で劣勢返上期す

 レノボは84年に中国の政府系研究機関が出資して発足した中国のパソコン最大手メーカー。05年に米IBMのパソコン部門を買収して以降、世界で存在感を高めているが、調査会社MM総研によると国内でのシェアは4.5%(09年度)にとどまる。NECの販路を活用して日本での劣勢返上を狙うほか、NECの最新の高速通信技術を活用して、次世代端末の開発を進める。

 ただ、「NECは純国産でサービスも充実していることがセールスポイント」(IDCジャパンの片山雅弘マネジャー)との指摘もあり、合弁会社設立後もいかにNEC色を維持できるかが課題になりそうだ。

 ◇NECは事業構造の立て直しも狙う

 今回の提携により、NECは事業構造の立て直しも狙う。NECの10年9月中間連結決算の当期(最終)損益は270億円の赤字だった。赤字は電機大手8社のうちでNECのみ。不採算の半導体事業を10年4月にルネサステクノロジと統合させ、携帯電話事業も10年6月にカシオ計算機、日立製作所と合弁会社を設立するなど事業の再編を進めている。ただ、他の電機各社が旺盛な新興国需要などを背景に回復基調にある中で、構造改革の遅れが目立っている。

 収益が上向かない原因の一つが海外事業の弱さだ。09年度の海外売上高比率は19.9%にとどまる。ソニーの海外比率は7割超、NEC同様IT事業が主力の富士通は3割以上を海外で稼いでおり、電機大手の中でも突出した低さだ。

 このため、遠藤信博社長は、インターネット上からソフトやデータをパソコンなどに取り込んで使う「クラウドコンピューティング」事業などを中心に、17年度に海外売上比率を50%まで高める目標を掲げており、10年8月に中国IT大手「東軟集団」との提携を発表するなど海外事業強化を急いでいる。「NECはレノボとの提携でクラウドの海外展開がしやすくなる可能性がある」(アナリスト)との指摘もある。

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