トラブル続出中
チャイナタウンと化した公営住宅このままなら中国人で貸し切りになる

2011年03月01日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

コラム一覧
print
rss
upperline

 何人かの住民の話を聞くうち、団地から300mほど離れた場所に中国物産店があることもわかった。地元住民によると「中国人しか行かない店」だという。約8畳大の店内をのぞくと、食材、調味料など100種類ほどの乾物が並ぶ。商品名や説明はすべて中国語で、日本語はまったく書かれていない。中国のドラマ、映画のビデオ(VHS)、CDや中国語の新聞も置かれている。この店が地域に住む中国人の食と情報を支えているようだ。

 さらに物産店の近くには中国人が経営する中華料理店もあった。昼時は過ぎているが、ラフなシャツを来た中国人男性2人が食事をしながら会話を楽しんでいた。さしずめ近隣中国人の社交場だろうか。団地住民によれば、この店に来た中国人が夜遅くまで騒いだため、周囲の住民から警察に苦情が寄せられ、深夜にパトカーが来たことが何度かあったという---。

 実はいま、このように「チャイナタウンと化した公営・公団住宅」が全国的に広がっている。本誌が外国人住民が多いとされる主だった公営・公団住宅に取材してみても、「約1500戸の賃貸住宅のうち、300戸以上を中国人世帯が利用しています」(千葉県船橋市の『行田団地』自治会)、「年々中国人は増えていて、いまでは団地の4割ほどは中国人世帯となっています」(埼玉県川口市の『芝園団地』自治会)といったところが続々と出てくる。

 中国人人口が5年前に比べて6割も増えたという長野県駒ケ根市でも「市営住宅に入居する中国人は多い。特に『馬見塚市営住宅』では5年前に全戸数の3分の1ほどが中国人世帯になっていた」(馬見塚市営住宅の住民)、埼玉県本庄市にある『県営本庄小島住宅』ではペルー人、ブラジル人、中国人などの外国人の割合が3割を超えているが、「特に最近は中国人が増えている。南米系の外国人が'08年からの不況で大量に工場を解雇になって祖国に帰ると、取って代わるように20代、30代の若い中国人が入ってきた」(県営本庄小島住宅の住民)というのだ。

口コミでどんどん集まる

 背景にあるのは、中国人の大量流入。法務省入国管理局の統計によれば、外国人登録した中国人は'09年末に68万人を超え、10年前の2倍以上に膨らんでいる。外国人登録者数では'07年に在日コリアンの数を抜いて以来、中国人が3年連続で最多である。

「日本に住む中国人が一番苦労するのは家探し。民間住宅は賃料が高いうえ、手ごろな物件があっても外国人を断るところがある。そのため、民間より家賃が安く、かつ在留資格などを満たせば外国人にも門戸が開かれている公営・公団が受け皿になる。いい団地があるという噂は口コミであっという間に広がり、続々と仲間の中国人が移り住んでくるのです」(全国のチャイナタウンを取材するノンフィクション作家の河添恵子氏)

 さらに公団・公営住宅側にはこんな事情がある。

「建物の老朽化、住民の高齢化が進んだ結果、〝空洞化〟が深刻な問題になっているところは多い。老人が白骨化して発見される孤独死の現場となることもあり、イメージが悪化、若者が離れていった。こうした事態を危惧した公団側は空室を埋めるために家賃を一定期間無料にするなど様々な対策を講じているほどで、外国人が来てくれることは渡りに船なんです」(住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏)

previous page
2
nextpage


最新号のご紹介

underline
アクセスランキング
昨日のランキング
直近1時間のランキング
編集部お薦め記事
最新記事