【赤木智弘の眼光紙背】入学試験問題流出事件に感じた涼風
眼光紙背提供:眼光紙背
2011年03月02日08時00分
赤木智弘の眼光紙背:第171回
しかし、これが当人の目的が「こうして騒ぎになること」であれば、今のところ彼はネットワーク&ITを利用し、完璧に目的を果たしていることになる。
私には、当人の目的はカンニングではなく、騒ぎを起こすことだったと考えるほうが腑に落ちるのである。
かつて戦中の日本で「贅沢は敵だ!」という標語に対し、「敵」の前に「素」という言葉を加え「贅沢は素敵だ!」とした落書きがあったという。
「すべての日本人は、人間らしい感情をお国のために差し出せ」という社会全体からの強烈な抑圧に対し、ちょっと一言付け足すことで風穴を開け、人間らしさ国民の手に取り戻す、名落書きであった。
現在の日本社会もまた、個人に対して「失敗したら自己責任なんだから、一切失敗するな」という強烈な抑圧を加えている社会である。
その中で「大学受験」は、子供が企業の正社員として日本人らしい生活を送ることができるか、一生非正規労働で家族ももつことができずに野垂れ死にするかの分水嶺としての機能を有してしまっているように見える。
試験問題が流出した学校の1つである早稲田大学は、会見の中で「大学そのものが信頼性を失うというようなことがあっては、決してそれはあってはならないことだ」(*5) と語ったということだが、その大学の信頼とやらが、企業に「優秀な」学生を橋渡しする「選抜制高級ハローワーク」としての信頼に過ぎないのであれば、今回の事件は日本人への抑圧機能としての「大学」という存在を批判し、風穴をあける一撃とも言えるのではないだろうか。
以上は、私の勝手な誇大妄想であって、事件を引き起こしたのは、単に間抜けなカンニンググループなのかもしれない。
それでも一種の清涼感を私が感じたのは確かなので、私の勝手な妄想が壊れないためにも、彼らが逃げおおせることを祈っている。
*1:京大入試問題、試験中に携帯で流出…受験生がネット投稿か?(スポーツ報知)
http://news.livedoor.com/article/detail/5374047/*2:京大等で入試問題の回答を知恵袋で問うた人がいた件(Twitter)
http://twitter.com/#!/InsideCHIKIRIN/status/41688806453157888*3:もう「自分の頭の中に、答えを保存してるかどうか」(Twitter)
http://twitter.com/#!/InsideCHIKIRIN/status/41689502913134592*4:かりにも一流大学が「入学者をどうスクリーニングすべき(Twitter)
http://twitter.com/#!/InsideCHIKIRIN/status/41694964333150208*5:入試問題ネット流出 京大、立教大、同志社大、早大が警察に被害届を出す方針決定(フジテレビ)
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20110228-00000889-fnn-soci