[2011.3.1]
No.313
急速に進む韓国の高齢化
嚴 在漢
韓国では、高齢化が急速に進んでいる。2050年には、全人口のうち65歳以上が占める割合は40%を超える見通しだ。参考までに10年時点での65歳以上の占める割合は11%であった。
韓国保健社会研究院(保社研)は、50年には韓国の平均寿命は約3年延び、出生率が1.28という水準にとどまれば、65歳以上の人口は1871万人となり、その割合は42.3%に達すると発表した。つまり、50年には経済協力開発機構(OECD)に加盟する国のうち韓国は65歳以上の割合が断トツとなる「高齢化した国家」になる見込みだ。
10年度における韓国の全体福祉支出は、GDPの8.9%であった。しかし、高齢化が進むにつれ、医療費が増加していくと、50年にはGDPの21.7%に達する。
保社研の今回の発表は、06年に統計庁が推定した将来の韓国の人口構成とは隔たりがある。当時、統計庁は50年に韓国人の平均寿命を男性82.87歳、女性89.92歳とし、65歳以上の割合を38.2%と推定した。
しかし、すでに統計庁の予想よりも早く平均寿命が延びており、10年度の予想も外れるほど、韓国の高齢化は急速に進んでいる。高齢化に伴う社会福祉の問題は、韓国特有の福祉政策に対するジレンマではなかろう。韓国政府の頭を悩ませているのは、高齢化の速度だ。国民健康保険は、10年時点で1兆2994億ウォン(約963億円)の赤字を余儀なくされており、11年1月末段階の積立金はわずか6日分を賄うにすぎない状況だ。
なお、韓国で65歳以上の高齢者の貧困率は45%と言われており、OECDに加盟する国では最も高い。さらに、自殺率や交通事故の死亡率も、他の先進国に比べて非常に高いという調査結果も出ている。
国民健康保険の問題は、韓国政府が「支出を減らしつつ、収入は増やす」と常套的な対策ばかりを打ち出している間に、もはや“時限爆弾”になってしまった。このまま、もし医療費の増加傾向(00〜10年間のペースで推移)が緩和されなければ、GDP対比の健康保険支出は、現状の2.9%から20年には5.5%に、そして50年には20%強まで増えるという、想像し難い規模まで拡大する見通しだ。
10年に35兆ウォン規模だった健康保険の支出は、20年に93兆ウォン、40年に368兆ウォン、そして50年には623兆ウォン(約46兆円)まで膨らむと試算されている。
直ちに、国民保険料で支出の増加分を相殺するためには、20年における健康保険料は現状の5.9%から9.7%まで引き上げなければならない。現在のように、医療費が無駄に使われたり、国民が健康保険料の引き上げに継続して反対し続けていると、50年における韓国の若者が負担すべき割合は、想像を絶するものになる。
儒教思想の風習が根強い韓国。高齢者や目上の人を尊敬するのが美徳であるという社会通念は、まだ変わってはいない。しかし、今後さらに高齢化が急速に進み、若者たちの負担する割合がとてつもなく大きくなることが顕在化した時、果たしてこの美徳が維持できるかは不透明である。
高齢者がたくさん集まるソウル市内の公園
地下鉄の構内でも高齢者たちを多く見かける