きょうのコラム「時鐘」 2011年3月2日

 「人事異動のころに事件あり」。警察にはこんなジンクスがあるという。金沢の女性遺棄事件の容疑者逮捕で捜査本部幹部が会見するのを見て思い出した

昨年の春先にも石川と富山県境の山中でスーツケースの女性遺体遺棄事件が発覚した。12年前の春にはまれに見る凶悪事件とされた野々市町OL殺人事件が解決し、事件発表日に内示があって当の刑事部長が40年の警察人生にピリオドを打つドラマを見た

2007年の能登半島地震発生や06年の射水市民病院の安楽死問題の報道も3月だった。異動前後に大事件大事故が起きても行政の流れを止めることはできない。その時にこそ、血の通った人間によって命を与えられた組織体の存在が問われる

組織に「端境期」を生じさせてはならない。異動期に大事件が多いと言われるのは件数の多さではなく印象の強さからだろう。青竹のように節を作りながら無限に伸びる組織の成長のエネルギーを伝えるジンクスだ

行政も企業も学校も組織体に変わりはない。予想外の出来事が待っている。春3月。組織の芽を伸ばす試練の季節を迎えたように思う。