28日に佐賀地裁(若宮利信裁判長)で行われた、安永健太さん取り押さえ死を巡る審判の第12回公判。検察役弁護士と、被告弁護側の主張が真っ向から対立する中、昨年7月の初公判から計23人の証人が証言した審判は、事件から3年を超え、この日、結審を迎えた。双方が立証に自信を見せる中、被害者参加人として参加した遺族からは「やはり真相は分からないまま」との不満も漏れた。
「懲役1年を求刑する」。検察役弁護士からの言葉を、県警巡査長、松雪大地被告(30)は論告の書面に目を落としたまま、表情を変えずに聞いた。最後の意見陳述では「無罪」を強い口調で主張していた。
暴行があったか▽暴行でけがが生じたか--。二つの争点を巡り、検察役と弁護側が主張を展開した。鍵になるのは、検察役が重要な証拠として挙げた「殴ったのを見た」という証人2人の証言。「信用できる」と主張した検察役に、弁護側は「暴行を認める証言は、あくまで殴ったように見えたという程度に過ぎず、信ぴょう性に欠ける」とし、双方の主張が衝突したまま結審し、判断は裁判所に委ねられた。
一方、遺族は複雑な思いをのぞかせる。被害者参加人として全公判に立ち会った父孝行さん(49)は「暴行の有無が争われた裁判で、結局、あの日の真相は分からないまま」と不満を漏らし「被告が自分の取り押さえ行為のどこか悪かったかについて見直すつもりがないことに大きな怒りを感じる」と述べた。【蒔田備憲、田中韻】
毎日新聞 2011年3月1日 地方版