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取り押さえ死 主張食い違ったまま結審

懲役1年求刑

結審後、公判について語る安永健太さんの父、孝行さん(右は弟の浩太さん)=真子生次撮影

 特別公務員暴行陵虐致傷罪に問われた県警の松雪大地巡査長(30)に対する審判は、28日に結審した。検察官役の指定弁護士は「暴行があった」と指摘した一方で、松雪被告側は「殴打は行っていない」と無罪を訴え、公判で双方の主張は終始、食い違ったままだった。

 12回目となったこの日の公判では、亡くなった安永健太さん(当時25歳)の父孝行さん(49)が最初に被害者参加人として意見陳述。「警察官が謝罪や説明をせず、息子が亡くなったことの責任追及もなされていない。このままでは浮かばれない」と語気を強めた。続く論告で3人の指定弁護士が「目撃した人の証言の信用性は高く、被告は左手で前胸部などを3回殴打した」と主張し、「法に忠実であるべき警察官の姿勢として悪質。遺族の被害感情はしゅん烈であり、被告や県警に対する不信感も強い」と述べた。

 一方、松雪被告の弁護団は「殴打行為をしていない」と改めて強調。指定弁護士が申請した目撃証人の証言に関して「最大限評価しても『殴ったように見えた』という程度のものでしかない」と批判した。松雪被告も「暴れる安永さんを精神錯乱者と認め、自傷や他害の恐れがあるので保護した。その行為に際して暴行を加えておらず、傷害を負わせたこともない」と語った。

 昨年7月の初公判以降、車で現場を通りかかった目撃者、一緒に取り押さえた警察官、孝行さんら計23人が証人で出廷。松雪被告の暴行の有無などに関し、当時の様子を証言した。閉廷後の記者会見で、孝行さんは「有罪にしかならないだろう。論告求刑を聞いて確信した」と振り返り、指定弁護士の一人の本多俊之弁護士は懲役1年の求刑理由について、「1週間程度の傷害事案で、過去の事例と照らし合わせて決めた」と説明した。

 一方、松雪被告の弁護人の安永宏弁護士も記者会見し、「無実であることは明白。殴ったように見えたと証言する人がいたが、自信を持って言える人はいなかった。立証はされていない」と述べた。今回の被害者参加にも触れ、「全面的に争っている事案で、被告が死に至らしめた加害者という形での意見陳述は、本来のありようではない」と疑問を呈した。

2011年3月1日  読売新聞)
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