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子宮頸がん予防ワクチン、ホントに有効なの?安全なの?

nikkei TRENDYnet 2月21日(月)11時23分配信

子宮頸がん予防ワクチンに対し、さまざまな情報が出てきている。今回は改めて、子宮頸がん予防ワクチンについて、有効性、安全性を、東京大学医科学研究所附属病院 内科 湯地晃一郎氏が解説する。

【詳細画像または表】

 子宮頸がん予防ワクチンの公費助成が昨年開始されました。国と地方自治体が50%ずつ費用を負担するという形で、ほぼ100%の地方自治体が助成する方針を決定しています。

 子宮頸がん予防ワクチンの認知が高まる一方で、このワクチンが本当に有効なのか、また安全であるのか、疑問の声がネット上で散見されます。

 本連載「受ければ安心、知らないと損する!!  日本のワクチン」の第1回では、「誰もが感染源の危険性!?  子宮頸がん予防ワクチンが必要なワケ」と題して、子宮頸がん予防ワクチンの必要性について述べました。

 本稿では、子宮頸がん予防ワクチンの有効性と安全性について、解説します。

Q1 子宮頸がんを予防するには、どうすればいいのでしょうか?

Q2 子宮頸がん予防ワクチンは、本当に予防効果があるのでしょうか?

Q3 子宮頸がん予防ワクチンは、他のワクチンに比べて危険なのですか?



Q1 :子宮頸がんを予防するには、どうすればいいのでしょうか?

 子宮頸がんの予防と早期発見には、検診とワクチン接種の組み合わせが重要です。

 ワクチン接種だけで完全に予防できる訳ではなく、また検診だけですべてのがんが早期発見できるわけでもありません。両者を併用することが極めて重要です。

 なぜでしょうか。以下に解説します。

 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus, HPV)の感染が原因です。HPVの感染経路は性交渉です。このため、性行為の経験があれば、誰もが感染する可能性があります。ただし多くの場合、自然にウイルスが排除されます。しかし一部が、前がん状態を経てがん化します(詳細は前回連載「子宮頸がんはウイルスでうつるって本当!? 」を参照)。

 コンドーム着用は、HPV感染を防ぐ有効な手段ですが、100%の予防効果はありません。

 感染予防には、HPV感染前の、初交前のワクチン接種が有効です。現在日本で承認販売されている2価ワクチン(サーバリックス)は、危険度の高い2種類のHPV(16/18型)感染による発癌を予防できると考えられています。日本人では、子宮頸がんのうち67%で、HPV16/18型が発がんに関与していると報告されています。HPV16型、18型以外に対しては効果がないため、2価ワクチン接種だけで子宮頸がんの予防が100%できるわけではありません。

 検診も早期発見のために非常に重要です。日本の検診受診率は24%と、諸外国(米国85%、英国79%、韓国57%)に比べ、大幅に低くなっています。日本で子宮頸がん患者が若年層に増えているのは、若い世代の人々が検診を受けていないということが大きな要因です。子宮頸がんは、初期症状がまったくない場合が多いことから、20代からの定期的な検診受診が極めて重要です。健診にも限界があります。子宮頸がんのうち20%を占める腺がんは、検診での早期発見が難しいため、ワクチン接種による予防が有効です。

 以上から、ワクチン接種と検診の組み合わせが重要であることをおわかりいただけたと思います。ワクチン接種と健診を、全女性の85%が受けた場合、95%の子宮頸がんが予防できると推定されています。

Q2 :子宮頸がん予防ワクチンは、本当に予防効果があるのでしょうか?

 ワクチンの有効性ですが、日本で承認発売されている2価ワクチン (サーバリックス)では、2種類のHPVによって生じる前がん病変を、ほぼ100%予防することが報告されています。現在ワクチン接種後7.3年の間、前がん病変の予防効果が示されています。研究結果からは、20年以上効果が続くことが見積もられています。

 前がん病変からがんになるには数年〜10年以上という時間がかかるため、ワクチン接種により前がん病変にならなければ、がんになることもありません。現段階ではワクチン接種から7.3年以上経過した女性のデータしか存在しないため、がんの予防効果が示されていないのですが、将来的に予防効果が示されることは理論上、確実だと見積もられています。

 以上のことから、子宮頸がん予防ワクチンが予防に有効であることは、世界的な共通見解となっています。

 世界保健機関(WHO)は、「性的活動年齢に達する前の若年者に子宮頸がん予防ワクチンを接種し、 HPV の初回感染を予防すべき」との立場を発表しています。

 また日本では、社団法人日本産科婦人科学会、社団法人日本小児科学会、特定非営利活動法人日本婦人科腫瘍学会の3学会が、「ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種の普及に関するステートメント」を発表し、子宮頸がん予防ワクチンの接種を推奨しています。

 子宮頸がん予防ワクチンに、本当に予防効果があるのか、疑義を唱える声が一部にありますが、その主張の内容には前述の前がん病変・がんの予防効果を疑うに至るような、医学的論拠は示されていないものがほとんどです。

 さまざまな立場や考え方からワクチンの安全性という重要な課題について違った主張が報道され、混乱や不安を感じた場合には、「前がん病変の予防効果、前がん病変とがんの関係、ワクチン接種開始からの観察期間について記載されているかどうか」を、その主張が正当かどうかの目安にするといいと思います。

 日本国外では4価ワクチン(HPV16、18型に加え、6、11型感染を予防)ガーダシルが発売されており(メルク、日本では万有製薬=MSD、承認待ち)、さらに9価ワクチン(V503)も治験中です。

 日本国内では、理化学研究所の神田忠仁先生が開発されたワクチンの全世界での独占使用契約を、武田薬品工業が取得したことが昨年大きな話題となりましたが、まだまだ実用化は遠いです。

 4価ワクチンでは、子宮頸がんに加えて、HPV6型・11型感染によって引き起こされる肛門癌・尖圭コンジロームの予防が可能であり、女性だけではなく男性にも予防効果があることが示されていますが、日本では製造販売承認待ちの状況ですが、今後の動きに着目です。また、男性向けのワクチン接種が承認されている国もあり、我が国でも議論が必要です。

Q3 :子宮頸がん予防ワクチンは、他のワクチンに比べて危険なのですか?

 子宮頸がん予防ワクチンの接種では、副作用が多発しているのではとの声があります。

 2010年12月28日の読売新聞に、「子宮頸がんワクチン 失神多発 肩の筋肉に注射、激痛」との見出しの記事が掲載されました。これに対し2011年1月7日の毎日新聞は、「ヒブなど3ワクチン 安全上、懸念なし」との見出しの記事を掲載しています。

 実は、この2つの記事は、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会でのデータを報じたものです。同じデータでも、ずいぶん印象が異なります。

関連リンク(厚生労働省HPより)

平成22年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料3−1 子宮頸がん予防ワクチンの副反応報告状況(PDF)資料3−2 Hib(ヒブ)ワクチンの副反応報告状況(PDF)資料3−3 小児用肺炎球菌ワクチンの副反応報告状況(PDF) 注釈:本稿ではわかりやすくするため、副作用と副反応の2つの異なる単語を同義に用いています

 安全対策調査会では、子宮頸がん予防ワクチンの接種に関し、「安全上、特段の懸念はない」と結論づけましたが、副反応の中で、発熱・失神がそれぞれ11件生じた、と報告されました。推定接種者数は40万人です。約4万人に1人の確率でした。

 ちなみに、同じく公費助成が決定されたHib(ヒブ)ワクチンの副反応では、熱性痙攣が9件、発熱が8件、痙攣が5件生じたと報告されています。推定接種者数は140万人です。14万人〜28万人に1人の確率です。小児用肺炎球菌ワクチンでは、発熱が17件、痙攣が3件です。推定接種者数が70万人ですので、5〜20万人に1人の確率です。

 この確率が示すもの。それは子宮頸がん予防ワクチンのみが特別に危険であるとはみなせないということです。

 ただし、子宮頸がん予防ワクチンを11歳〜14歳の女児に接種する場合、失神は最も多い副反応ですので、注意しながら接種する必要があります。 日本小児科学会予防接種感染対策委員会は、子宮頸がん予防ワクチンに限らず、他のワクチン(インフルエンザワクチン、MRワクチン、DTワクチン、日本脳炎ワクチン)に関して、予防接種後の失神に関する注意点について声明を出しています。10歳以上、注射への恐怖心が強い人、起立性低血圧に注意し接種すること、また接種後15〜30分の安静が推奨されています。

 日本国内で販売されている2価ワクチン、サーバリックスに、AS04というアジュバント(ワクチン増強剤)が使われていることで、不妊・流産などの副作用があり危険ではないか、との声があります。

 アジュバントは免疫増強剤であり、ワクチンの作用を高めるために添加されます。ワクチンの種類に応じて、様々なアジュバントが用いられています。現時点で、動物実験・人間において、不妊・流産などの生殖に関する副作用が多くなったとの報告はありません。

 以上まとめると、子宮頸がん予防ワクチンにだけ副作用が多い、というわけではない、のが現状です。接種についての正しい知識の普及、そしてそれを理解した上での接種が重要だと考えます。

(文/東京大学医科学研究所附属病院 内科 湯地晃一郎)


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最終更新:2月21日(月)11時23分

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