「そりゃ寂しいですよ」。元広島東洋カープの「鉄人」、衣笠祥雄さん(64)が解体中の旧広島市民球場について思いを語った。26日に中区で開かれたスポーツと平和についてのシンポジウムに参加した衣笠さんは毎日新聞の取材に対し「あそこは学生スポーツのメッカとして、野球場として使ってほしかった」と話した。
75年のリーグ初優勝に中心選手として貢献し、当時世界一の2215試合連続出場を果たした衣笠さん。印象深いのは、キャッチャーボックスから見た光景だという。「入団当初は捕手でしたからね」と振り返る。
リーグ初優勝のパレードの時、衣笠さんはファンから「おめでとう」ではなく、「ありがとう」と言われた。「苦労して作り上げたカープが26年目にして優勝した喜びをファンと共有できた。野球に出会え、広島に入団して良かったと思いました」。初優勝の優勝ペナントを受け取ったのは旧球場だ。「優勝を待っていた県民、市民が多かったんです。球場で受け取って初めてみんな信じたというか、『おい、ほんまに勝ったぞ』って。これが一番印象深いです」
球場が壊されていることに実感がないという衣笠さんは「無くなったと感じるのは、全部無くなった時じゃないでしょうか」と話した。【矢追健介、寺岡俊】
毎日新聞 2011年2月28日 地方版