韓国で30年にわたり日本の反省を呼び掛ける日本人(下)

「謝罪と和解の牧会」を行うソウル日本人教会の吉田耕三牧師

日の丸、君が代は悪行の名残

 一大決心をして韓国に渡った後、自然と歴史問題に深くかかわっていくようになった。君が代、日の丸、靖国、独島に対する吉田牧師の立場は堅い。「君が代は植民地時代に天皇をたたえた歌で、日の丸は植民地時代に悪行を受けた被害者が見たら過去の苦痛を思い出させる象徴です。公式に国家や国旗と認めてはいけない」。同氏はさらに「普段は優しい韓国人も、独島の話が出ると目じりがつり上がる」と話し、指で自分の目をつり上げる仕草をした。「日本人は決して韓国人の独島に対する愛情に勝つことはできない」

 吉田牧師は、日本の子どもたちによる感想文40編を見せてくれた。タプコル公園に立ち寄り、3・1独立運動の話を聞いた女性教師が、子どもたちが書いた文章を送ってきたのだ。「日本の蛮行に対する悩みと悲しみが、子どもたちの感想文にそのまま表れている。大切に保管している」

 吉田牧師は、渡韓準備をしていた70年代末、NHKに抗議の手紙を送った。「韓国は隣の国で、日本による植民地時代にわれわれが言語を奪おうとした国なのに、どうして韓国語の講座がないのか」。これに対しNHK側は「『韓国語講座』とすると在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から抗議を受け、『朝鮮語講座』とすると在日本大韓民国民団(民団)から抗議が来るためできない」と回答した。すると吉田牧師は「神様の知恵」でこのような提案をした。「では、南北双方が使う言葉で『ハングル講座』としてはどうだろうか」。こうして81年、NHKはラジオでハングル講座を開始し、現在はテレビ講座も行われている。

 韓国で牧会を行う父親を見ながら「牧師と結婚するのはいやだ」と言っていた長女の範子さん(38)は、淑明女子大4年のとき、板門店を訪れた日本人伝道師と出会って結婚し、牧師の妻となった。牧師になると決心した次女、由架子さん(34)は今年、神学校を卒業する。家族には至らない父親だったが、吉田牧師は気にしていない。「韓国にいたため両親の臨終にも立ち会えなかったが、それでも神様の国へ行けば、2人が『ご苦労さん』と言って肩をたたいてくれると信じている」

李泰勲(イ・テフン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る