2011年3月1日3時1分
92.4兆円の2011年度予算案は28日夜、衆院予算委員会で与党の賛成多数で可決された。3月1日にも衆院を通過する。予算は憲法の規定で30日後に自然成立するため年度内成立は確実になったが、歳入を裏付ける予算関連法案は年度内成立のめどが立たず、菅政権は衆院採決を先送りした。歳出の議論だけを進める異例の事態だ。展望を欠く菅直人首相の政権運営は厳しさを増すのが必至だ。
内閣支持率は2割前後と低迷し、当面の政権浮揚策は見当たらない。民主党代表選で対決した小沢一郎元代表側だけでなく、党内中間派や首相を支持してきた議員からも公然と退陣論が語られる。小沢氏に近い衆院比例の16議員が予算案採決の衆院本会議に欠席方針を決めるなど、政権の求心力低下は著しい。
首相は28日の衆院予算委で「まず予算を(衆院)通過、成立させていただき、できるところから予算関連法案を成立させていただく」と語った。参院で予算案の審議を進める間に衆院側で野党と予算関連法案の歩み寄りを探る。
政権は、協力が得られれば参院の過半数が得られる公明党との関係を最優先。同党の意見を採り入れ、子ども手当法案に所得制限を盛り込むことも検討する。一方、赤字国債を発行する特例公債法案や、法人実効税率5%引き下げなどの税制改正法案は同党の賛成が見通せない。
首相周辺からは「与野党のどちらが先に激突回避で逃げるかという『チキンレース』だ」との声が上がり、「特例公債法案が通らなければ議員歳費や政党交付金を停止していく。我が党は蓄えがあるが、困るところも出てくるはずだ」(民主党幹部)と強気の見方もある。だが、ある政府高官は「政権内で強気と弱気が交錯している」。関連法案が年度内に成立せず、4月以降の国民生活や経済状況に影響が出てくれば、国民の批判が政権側に向きかねない。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。