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大学入試:ネットに京大問題 投稿者、携帯から質問27回 掲示板で他人に回答も

 <追跡>

 ◇京大、きょう被害届

 京都大は27日、入試問題が試験時間中にインターネットの質問掲示板に投稿されたことが偽計業務妨害にあたる疑いがあるとして京都府警川端署へ28日に被害届を出すことを明らかにした。同志社大も京大などとの連携を表明しており、追随するとみられる。入試問題漏えいが刑事事件に発展する可能性が出てきた。

 京大は、同様の不正が判明した同志社、早稲田、立教の3大学とも情報交換し、協力していくという。合格発表は当初の予定通り3月10日に行う。合格者が不正行為をしたことが判明すれば合格を取り消す方針。

 一方、投稿者の人物像や投稿の手口については、ネット上に残された記録から悩める男性の文系学部受験生像も浮かび上がるのだが、愉快犯の大胆な手口もうかがえる。ユーザー名は「aicezuki」。匿名登録で利用可能の「ヤフー知恵袋」への登録は昨年12月18日。年齢などの個人情報は非公開に設定している。

 昨年12月22日の初質問から、京大入試の英語問題を投稿した今年2月26日午前9時45分までの間に行った質問は計27件(うち3件は削除)。すべて携帯電話(携帯端末)からのアクセスで、試験時間中に投稿した入試問題は文系学部のものとみられる。

 英語、数学の問題以外の質問投稿も。「市販の薬で睡眠薬自殺はできるか?」(1月16日)。「仙台市内でいい心療内科を教えて」(1月18日)。大学入試センター試験が1月15、16日実施なので、悩める受験生の心情をのぞかせたと言えなくもない。

 他人の質問への「回答」も3件行っている(1件は削除)。男女関係、恋愛感情の質問に、突き放した回答も複数見られるなか、「お互いのことを思っているということですよね」などと相手を気遣う文章を投稿。また、自分の体験を交え「きっと彼はあなたがいないとダメだと思っているハズ」と応援する回答も。この際、自分を「ボク」と表記していた。

 ネットでは「アイ スズキ?」「逆から読むと『行くぜCIA』」などさまざまな「臆測」が渦巻いている。

 ◇複数の可能性も

 入試時間中に複雑で長い問題文を打ち込むことはまず無理。ただし、携帯電話(高機能携帯端末)などで問題を撮影し、画像、動画、音声を電子メールに添付するなどして送信することはできなくはない。一部携帯ではシャッター音も消せる。

 ただ、ネットに投稿するには、画像を文字に直す(テキスト化)必要がある。名刺を読み込んでテキスト化するソフトなどはあるが、変換ミスが発生する。投稿された文面には誤字脱字は見当たらず、そのソフトを使った可能性は低い。

 するとやはりある人物が試験時間中に画像を送信し「aicezuki」がテキスト化して投稿、回答をコピーし試験教室にいる人物にメールしたという方法が考えられる。

 ただし、「aicezuki」として振る舞うことは、IDとパスワードさえあれば誰でもできる。普段このユーザー名を使う人物が、試験時間中、他人に同IDを渡して教室外で活動させることも可能だ。また教室内で回答を知るには、メール文書読み上げソフトの音声をイヤホンで聴く▽着信メールを見られる腕時計を使う--などが考えられる。【高橋望、広瀬登、五十嵐和平】

 ◇携帯電話対策、頭悩ます大学 電源切り、かばんへ コートはボタン留めて

 「電波遮断か、身体検査か」--。携帯電話を使った入試問題の漏えいが発覚した大学では、警察への被害届提出を決める一方、有効な再発防止策が見いだせず、頭を悩ませている。

 京大は他大学同様、携帯電話対策に神経をとがらせていた……はずだった。机の上に置くことが許可されているのは、受験票、鉛筆(シャープペンシル可)、鉛筆削り、消しゴム、時計のみ。携帯電話は電源を切った上、筆箱と共にかばんの中にしまわせる。開始前には、試験官が「身に着けていることが分かっただけで失格にする場合もある」と繰り返し念を押している。「コートの中で操作される恐れもある」と、着る場合は全てのボタンを留めるよう指示。トイレに行く場合は試験官が同行する。

 立教大も同様で、トイレに行く際は、受験生に持ち物のないことを確認。同志社大では試験開始前、トイレに不審者がいないかチェックもする。しかし、さすがに個室の中まではのぞけない。

 今回、従来の対策では不正を防ぎきれないことが露呈した。京大では「コンサートホールのように、試験会場は電波の受発信をできなくすればいいのか」「身体検査で携帯電話などの持ち込みを禁じるしかないのか」--といった声も上がる。

 立教大の担当者は「初めてのケースで戸惑っている。流出が明らかになった他大とも連携を取り、投稿者を特定したい」と話した。

 早稲田大広報課は再発防止策について、「そこまで話せる段階ではない」と話した。【広瀬登、五十嵐和大、森禎行】

毎日新聞 2011年2月28日 東京朝刊

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