混乱ここに極まれり、という観のある最近の政治情勢。民主党政権になってから、日米関係はギクシャクするは、尖閣諸島問題は起きるは、とにかくロクなことがない、との感想を持つ方も多いのではないでしょうか。
ただその中で、「これはイケるかも」と感じた政策があります。それが今回の特集で取り上げた「法人税の5%減税」です。
ご存じのように、日本の法人税の実効税率は約40%と、世界の主要国の中でも最も高い水準にあります。それを5%引き下げて約35%にしようというのが今回の政策です。先進国、新興国が競って法人税を引き下げる中、日本だけが高いままでは、企業はどんどん海外に逃げていってしまいます。ただでさえ人口が減って潜在成長力が落ちているのに、国富の源泉である企業が日本を逃げ出してしまっては、経済成長は夢のまた夢です。そうした事態を避けよう、というのが減税の目的でした。
ところが、です。実はこの減税、ほとんど効果がなさそうなのです。というのも、減税に必要な財源を、これまで企業に認められていた優遇税制などの縮小で賄ってしまったからです。
例えばメーカーなら、これまでは研究開発に使ったお金の30%を税額控除できたのですが、これを20%に引き下げてしまいました。つまり、全体の税率が下がったものの、控除できる額が減ったために、全体では大して税額が変わらなくなってしまったのです。
これではほとんど意味がありません。本来、法人税を減税した場合の財源というのは、企業が儲かるようになることで生まれる「将来の税収増」に求めるべきなのに、今現在の税収の帳尻合わせに終始した結果です。
実は今回の特集では、2009年度決算を基に、上場企業の実際の「法人税負担率ランキング」を弾き出しています。前述のように日本の実効税率は約40%ですが、このランキングから分かるのは、実際の税負担率にはバラつきが大きい、ということです。これは、世界の低税率国を目指して拠点を分散させた結果でもあります。海外での納税額が増えて、企業全体での負担率が低下したというわけです。
今回の5%減税が意味のないものだとしたら、企業の日本脱出は止まりようがありません。韓国のサムスンが受けている様々な税額控除を調べてみると、日本のパナソニックの何と10倍という数字も明らかになりました。
世界に冠たる「重税大国ニッポン」。詳しくは特集をお読みください。
詳しくは、日経ビジネス2月28日号をお確かめください。
【特集】
間違いだらけの法人税5%減税
サムスンの税額控除はパナソニックの10倍
【主な内容】
●正味の減税率はたった0.6%?減価償却、研究開発など優遇策縮減で効果薄く
●法人税負担ランキング・こんなに違う実負担率、シャープ負担率ゼロの理由
●サムスン支える韓国の戦略税制、台頭する「国家資本主義」各国の税支援とは?