きょうの社説 2011年3月1日

◎金沢の無電柱化 優先順位つけて面広げよう
 石川県と金沢市が新年度、東山地区の無電柱化に重点的に取り組むのは、卯辰山山麓寺 院群の国重要伝統的建造物群保存地区の申請により、「重伝建地区」がひがし、主計町の両茶屋街と合わせて面的に広がる意義を考えても時宜にかなっている。

 国の文化財となる町並みが増えても、電線類がクモの巣状に残っていては風情が損なわ れ、景観価値も半減する。金沢においては歴史景観の保全と無電柱化は一体的な施策であることを認識したい。

 無電柱化に関しては、民主党政権で公共事業が削減され、関連する交付金の見直しや「 歴史都市」事業の縮小などで国の方向性が一段と見えにくくなった。だが、北陸新幹線開業へ向け、無電柱化は金沢の魅力を高める優先度の高い事業である。流動的な要素が出てきたからこそ、その意義を明確にしておく必要がある。

 金沢では軒下配線や裏配線など工法も多様化し、路線の特徴や地域の実情に応じた選択 が可能になってきた。地下にある既設のNTT電話線管路を活用する手法も決まったが、関係者が知恵を出し合えばコストが大幅に圧縮できる好例といえる。予算に限りがあるなかで無電柱化を着実に進めるには、県、金沢市がどの地域を優先し、面的に広げていくのか認識を共有することが大事である。

 東山地区の無電柱化では、県が国道359号の浅野川大橋詰−東山交差点(280メー トル)に着手し、金沢市も東山木町通り(120メートル)の実施設計に入る。ひがし茶屋街、主計町の表通りは無電柱化が進んだが、それぞれの周辺地域では手つかずの道も目立つ。重伝建地区が3つに増えるこのエリアは、金沢城公園周辺とともに、無電柱化を広げる県内の最重点地域と言ってよいだろう。

 歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」制度が事業縮小になるのは極めて残念である。 国土交通省、農林水産省、文化庁が共同所管するこの法律は、文化財行政と景観行政を連動させる大きな意義があったはずだ。文化庁が重伝建地区に選定すれば、その地区の無電柱化を集中的に支援する仕組みはできないものか。法の原点に立ち返り、制度を再構築してほしい。

◎入試問題流出 手口解明と予防策共有を
 京都大や早稲田大、同志社大、立教大の入試問題がインターネット上に流出した問題は 、進化を続ける携帯電話の高度機能とネットの匿名性を悪用した新手のカンニングの可能性がある。入試制度の根幹を揺さぶりかねない問題であり、具体的な手口の解明を急ぎ、不正入試を目的としていることが明らかなら、事件として立件する必要がある。

 韓国では2004年の大学入試で携帯電話を使って正解を教える組織的なカンニング事 件が発覚し、300人近い受験生らの関与が明らかになった。携帯のメール機能などを使えば、大掛かりなカンニングも可能だ。IT技術の専門家も加えて国レベルで対策を講じ、最善の予防策を各大学が共有できるようにしてほしい。

 大学によっては携帯電話の持ち込み禁止を検討しているようだが、チェックには限界が ある。徹底した捜査でカンニングが割に合わない「犯罪」であることを広く知らしめる機会にしたい。

 これまでの捜査によると、京大の場合、受験生が試験会場から何らかの方法で問題を外 部にいる協力者に伝え、インターネットの「質問サイト」で解答を得て、それを再び入手していたとみられる。受験生は携帯電話で問題の写真を撮り、協力者にメール送信していた可能性が考えられる。

 京大では、受験生20人にほぼ1人の割合で監督官が配置されている。厳重な警戒網を 破って不正を働くのは極めて難しいとされてきたが、携帯電話の写真解像度が飛躍的に向上し、たとえば日本語の英訳もネット上の「翻訳ソフト」を使えば、瞬時に正解が得られるという。IT関連技術の進歩で、これまで考えられなかったカンニングが実現可能になった。

 ただ、携帯電話やインターネットをフル活用してカンニングができたとしても、点数の 大幅アップは難しいだろう。メールアドレスの特定や質問サイトの解答例と答案用紙の照合などにより、多くの「証拠」を残すことにもなる。二度と同じ手口を使わせないために、全容解明に全力を挙げ、きついお灸を据えておきたい。