きょうのコラム「時鐘」 2011年3月1日

 悪さのタネは尽きないもの、と半ば感心する。ネットの投稿を利用した入試のカンニング疑惑が世間を騒がせる

合格したいという必死な思いよりも、ひと騒動起こしてみるか、というけしからぬ気配がする。他人から知恵を借りておいて「ベストアンサー」とは、おふざけが過ぎる。新手の身代わり受験のようなものである

前田慶次は、戦国時代が好きな女性に人気の武将で、真偽とりまぜて多くの逸話を残す。加賀藩祖・利家の影武者を命じられたが、偽者役に我慢ができず、戦場で堂々と「われは利家の影武者である」と名乗りを上げ、敵をあきれさせたとか

ネット上で、わが回答は借り物である、とあっけらかんと正体をさらすのは、「花の慶次」気取りの悪さに似る。周囲を慌てさせ、怒らせて悦に入る。だが、世の中、似て非なるものは、いくらもある

慶次が影武者と名乗ったのは、利家よりも器量が優れているという自負があってのこと。事実、藩祖に劣らぬ名を残した。ネットに流れた「影武者」の回答は、随分怪しい中身だったそうである。回答者が偽なら、答えもマユツバもの。お粗末な話である。