冤罪防止のための必読書
- 誰が読んでもよくわかる− 
裁 判 員 読 本
 
         
 

Back to HOME   

 

  

お問い合わせ  

     
 

1. はじめに

2. 殺人事件の捜査について

3. 殺人事件の公判について

4. 刑事事件の証拠の見方
−はじめに


5. 刑事事件の証拠の見方
−物証について


6. 刑事事件の証拠の見方
−人証について


7. 刑事事件の証拠の見方
−自白について


   秘密の暴露

   財田川事件自白の秘密の
   暴露

   松山事件自白の秘密の
   暴露

   幸浦事件自白の秘密の
   暴露

   鳴海事件自白の秘密の
   暴露

   島田事件自白の秘密の
   暴露

   自白調書の任意性

   取調べの可視化


8. 刑事事件の証拠の見方
−まとめ


9. 量刑について

10.  おわりに

著者略歴

 

   

7. 刑事事件の証拠の見方 −自白について−


   幸浦事件の自白の秘密の暴露


さきほどお話のあった静岡の「幸浦事件」では、自白調書の「秘密の暴露」が問題にはならなかったのですか。

  問題になりました。この事件では、被疑者が殺人を自白して、死体を埋めた場所を自白したのですが、その自白の前に、警察が死体遺棄の場所を知っていた疑いが濃厚になり、その自白が「秘密の暴露」でなくなったので、一審、二審で有罪とされた事件が、最高裁では無罪になったのです。

  このように、本来は最良の証拠である「秘密の暴露」の供述が、ときには命取りになるのです。捜査官が、被疑者が供述する前に、重要な証拠物を発見しておいて、被疑者を誘導して、あたかも被疑者がその隠し場所を自白したかのように調書を作成すると、非常に危険で、冤罪が生まれるおそれがあります。


しかし、この「幸浦事件」のような警察の工作は、きわめて例外的なのではないのですか。

  例外であって欲しいのですが、私が最高検刑事部長のとき、甲府地検の管内で、警察官が死体を埋めたと思われる場所をスコップで掘っているのを付近の婦人が見ていて、その警察官が人骨を発見した後、また元どおり埋めているのを見て驚いたという記事が新聞に掲載されたことがあります。その新聞には、「こういうことは捜査ではよくあることです。」との県警捜査一課長の談話が掲載されており、それを読んで愕然としました。それゆえ、きわめて例外的とは断定できないのではないかと思います。

 他方、被告人が犯人であると認定できる物証がなく、目撃証人もない事件であっても、被告人が任意に殺人を自白して、死体遺棄の場所を自白し、その自白に基づいて、死体が発見された場合には、最良の「秘密の暴露」として、決め手になるのです。


それは、東京で起きた有名な「吉展ちゃん事件」ですか。

  そうです。この事件は、犯人と想定されていた者が別件で刑務所に服役していて、警察では、その容疑者を3回にわたり、警察に移監して取調べを行い、警視庁で捜査能力随一の警察官が取り調べたのですが、捜査が難航し、3回目の取調べの際に、ようやく自白して、死体の遺棄場所を具体的に供述し、警察がその裏付け捜査を行った結果、自白どおり死体が発見されたので、解決した事件でした。


幸浦事件以後の事件で、警察の誘導により「秘密の暴露」の自白調書が作成された著名な事件がありますか。

  あります。


 
        << 前のページ    >> 次のページ
 
 
        本ページの内容についての疑問・ご質問につきましてはメールにてお答えします。   
     

 

© 2005 Nobukatsu Kojima. All rights reserved.