社説

文字サイズ変更

社説:首長新党 地域に根付く努力を

 春の統一地方選を前に地域政党の動向が焦点のひとつになっている。自治体の首長が党首を務める「首長新党」の進出が特に新しい動きだ。

 地域政党が独自に地方の問題に取り組み、存在感を発揮することは分権時代の流れにも沿う。だが首長と党の存在が密接に関係している場合、それに伴う課題もある。

 首長新党で特に目を引くのは橋下徹大阪府知事、河村たかし名古屋市長がそれぞれ代表を務める「大阪維新の会」と「減税日本」だ。

 橋下氏は大阪府、大阪市を再編し同市を特別区に分割する「大阪都」構想を掲げる。「大阪維新の会」はその実現に向け、4月の府議、大阪市議選などに候補を擁立する。

 一方、河村氏は10%の市民減税などを主張する。同氏支持グループが主導した住民投票の結果、名古屋市議会は解散された。リコールに伴う3月市議選で「減税日本」は過半数の議席獲得を目指す。

 地域政党が注目されたことは初めてではない。地域の抱える課題について住民がネットワークを作り、首長や地方議会、さらに国政にも働きかけることはあり得る。地方分権改革が進む中、これから進展が期待できる政治の領域と言える。

 日本の地方自治は首長、地方議員ともに住民から直接選ばれる二元代表制だ。今後、地方議会の政党化が一層、加速する可能性もある。首長が自らの掲げる政策を実現するため「応援団」を作ろうとすることは、必ずしも否定できまい。

 だが河村、橋下氏の場合、首長自ら政党結成を主導し党首となり、地方議会で多数派形成を目指す。片山善博総務相は「結論として、(首長による)根回しと変わらなくなる」と懸念を示している。仮に多数派形成に成功しても、議会に「野党勢力」は残る。議会を一方的に敵視せず、選挙結果にかかわらず丁寧な合意形成を目指す姿勢が必要だ。

 いずれかの時期に党首が首長の座を去った場合、その政党はどうなるかも首長新党の課題だ。任期切れや目的実現までの「時限政党」と割り切るのであれば、地域に根ざした政党と言い切れるか。

 国政との関係も難題だ。民主党内の一部には首長新党勢力と連携を探る動きもある。橋下氏は中央の動きと一線を画す姿勢だが、河村氏は衆院補選にも候補擁立を目指すなど、この点では対照的だ。

 今後の政治の流れを左右する動きとなるか、一時的なブームに終わるかは未知数だが、ひとつの試みには違いない。「私党」的な色彩を消し、中央政界の思惑にもみくちゃにされないためにも、政策や旗印を明確にしていくことが大切だ。

毎日新聞 2011年2月28日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

PR情報

スポンサーサイト検索

 

おすすめ情報

注目ブランド