TPPについて様々な議論があるようですが、相手国の市場が小さいとか、輸入が増えるだけで輸出が増やせる余地が少ない(から反対)という議論には、ちょっと違うだろうと感じています。



■貿易拡大で国際分業が進展する

まず、経済学の初歩ですが、比較優位の原則が示すように、たとえ絶対劣位であっても交易の拡大は双方の利益になります。

大事なのは、比較優位がきちんと作用するように、国内の衰退産業を政府の補助金などで延命させないことです。それよりは、衰退産業から成長産業へ、人がスムースに移動できるような補助をすればいいと思います。

比較劣位のものから比較優位のものへ、日本の生産をシフトできれば、海外の生産力を有効に活用することができる――そう考えれば、輸出が伸びるから得だとか、輸入が伸びるから損だという考えから解放されるはずです。

もちろん、現実問題として、輸出をいかに伸ばすかに注力するのはとても大事なことだと思いますが。



■国内規制改革のエンジンに

これまで、行政の許認可にぶら下がる産業や、その中でも本当は許認可がなくなったほうが商売がしやすいという業者にとって、国内政治のために不当に規制されてたケースが多々あるはずです。

国際協定で機会均等が達成されれば、本当に競争力がある企業や産業が、国内市場においても存分に力を発揮できます。「またガイアツか」とがっかりする必要はありません。どこの国においても、国際協定のおかげでフラットな競争環境が作れた、という事例はあるはずです。決して日本だけの話ではないと思います。

あるいは、今までは日本人どうしの慣行により、規制がなくても摩擦の起きなかったことも多々あるかもしれません。国際取引や外国人の起業が増えれば、これまで必要とされなかった規制や取締も必要になるかもしれない。規制の強化は社会的コストの増大を招きますが、随時見直す習慣ができるのはいいことかもしれないです。

衰退産業から成長産業へ、という新陳代謝とともに、無駄な規制から必要な規制へ、という新陳代謝も社会の活性化に一役買うような気がします。



■貿易拡大で雇用拡大

輸入が増えるだけでも、物資の運送や荷役、海上保険や資金決済など、付随する産業は仕事が増えます。

まだ先の話かもしれませんが、途上国のインフラ整備は日本を手本とするところも少なからず出るでしょう。家内制手工業の盛んな地域では、日本の宅配システムなどに喉から手が出るような気がします。その時のために、いま日本市場を開放しておけば「損して得取れ」の結果を生むかもしれない。

円建て輸入が増えれば、輸出国はその円を日本に向ける可能性が高いと思います。国際金融でも日本がさらに主要なプレーヤーになれそうです。

その他、思いも寄らないところで雇用が創造されることもあると、私は考えます。市場が自由なほど、我々の思っている以上に効率化が進むはずです。何が伸びるかではなく、何かが伸びるはずなんです。

空洞化する国内産業と引換にせよ、どっちみちそうした動きが避けられないのであれば、早くに実現するほうが望ましい。



以上、思いつくままにあげてみました。素人の思いつき、と言われればそれまでですが、国内産業が一方的にだめになるわけじゃない、というのはご理解いただけると思います。

だいいち、競争条件を全く同一にしたところで、国内市場に地理的に近いのは国内産業なのですから、この優位は覆しようがない。国内に不利な条件設定をするということではないはずですから、さほど怯える必要はないと思います。

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