中国GDP、地方で「水増し」報告疑惑 やっぱり鵜呑みにできない (2/2ページ)

2011.2.28 05:00

中国国家統計局のGDP速報値発表を取材する国内外のメディア=20日、北京市内(共同)

中国国家統計局のGDP速報値発表を取材する国内外のメディア=20日、北京市内(共同)【拡大】

  • 上海市内の繁華街、南京東路を歩く人たち。消費など内需拡大も中国のGDPを大きく押し上げている

 10年の行政区ごとのGDP統計をみると、成長率で最も高かったのは、温家宝首相の出身地である直轄市の天津市で前年比17.4%に及ぶ。四川省や海南省、内モンゴル自治区なども軒並み同15%を超える急成長ぶりだ。しかも31行政区のうち実に29行政区までが、国家統計局による全国の成長率の同10.3%を超える成長率を発表した。

 全国成長率の10.3%を下回ったのはわずかに直轄市の北京市の10.2%と上海市の9.9%のみ。中国最大の経済都市であり、昨年は上海万博開催で潤ったはずの上海市が、中国全体の成長率では最下位という不思議な統計結果になっている。地方幹部の人事考課にGDP指標が大きなウエートを占めていることが、内陸部など中央の目の届きにくい行政区で水増しを生みやすい背景にありそうだ。

貧困層1億5000万人

 一方で、中央政府は成長率などGDPの「量」を求める姿勢から、経済の「質」を求める姿勢に転換しつつある。中国外務省の馬朝旭報道官は、15日の記者会見で、GDPの日中逆転について、「中国経済の発展の遅れや欠点にも目を向けなければならない。中国がまだ発展途上国だという属性は変わらない」との考えを示している。

 同報道官は「中国は13億の人口を抱え、1人当たりGDPは世界100位前後。世界平均の半分にも満たず、1日1ドル以下で暮らす貧困層は1億5000万人だ」と、「質」の低さを強調した。経済大国としての国際的な責任論からの逃避や、経済格差の拡大による低所得者層からの批判に対処する側面もある。

 北京ではすでに、中国がいまや規模の拡大よりも、党幹部など特権をもつ一部の層だけが極端に豊かになる格差問題の是正や、富の再配分など、経済大国として本来あるべき国家体制を整える必要に迫られていることを明らかに認識している。

 しかし、その国家戦略の前提となるはずの統計数値の信頼性がかくも低い現実を、中国自身がどう直視するか。国際社会はその動向を注意深く見守っている。(上海 河崎真澄)

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