業界展望台

先進材料への対応進む ドリル穴あけ加工技術

2月10日(木曜日)付 日刊工業新聞 11面 広告特集から

 リーマン・ショック以降厳しい状況が続いた機械工具の市場。ここへきて自動車や航空機、半導体産業、さらに太陽電池などの動きを背景に三菱マテリアルやタンガロイ、住友電工など主力メーカーの設備投資が活発化している。その中で士気の上がるのが高機能製品の開発。高強度アルミ、ステンレスや耐熱合金、チタン、さらに炭素繊維プラスチック(CFRP)をスムーズに加工できることは、メーカー・ユーザー双方にとって高付加価値化の近道であるからだ。 

設備投資、活発化−主要メーカー、高機能品開発に力

 各種切削加工の中でも量的に見て穴あけが占める比重は大きく、また切りくず排出の難しさからトラブルも多いといわれる。とりわけ最もポピュラーな加工法であるドリルによる穴あけは、生産のリードタイム改善に重要な役割を持つ。ただ、効率性へのニーズとともに、業種を問わず軽量化や耐久性アップを狙って非鉄金属や炭素繊維などを部品に採用する傾向がますます強まっている。これらは鉄とは性質が異なり、加工しにくいことが多い。さらに金型への直掘り加工などを目的に、放電加工などで行われていた焼き入れ鋼などに直接ドリルで穴をあけたいとするニーズも増えている。

 焼き入れ鋼を切削する場合は、切りくずの処理より工具の強度と切れ味を両立できるような刃物の形状が問われる。イワタツールの開発したドリルは、刃が欠けにくいうえ切れ味のよい3枚刃形状によってHRC40―70程度の高硬度材まで加工が可能という。

 一方、切りくず処理が問題となりやすいのはステンレスだ。熱伝導率が低い、加工硬化しやすいなどの性質から加工時に切りくずがうまく分断されにくい。穴加工の場合で切削速度を上げようとすると切りくずが詰まり、工具の寿命が短くなるといわれる。一般に工具の加工性を高めるには刃の形状やコーティング見直しなどの手法がとられることが多いが、三菱マテリアルが発売した製品では発想を転換。ドリル強度を下げずにクーラント穴を大きくできる形状を開発。流速が高く冷却性がアップしたと好評を得ている。

 大径の加工には多く刃先交換工具が用いられる。一つのチップ面を変えつつ削れるので経済効率が高く、汎用的に使われることも多い。タンガロイは、チッピング抑制と耐摩耗性を高め2010年度の超硬工具協会技術功績賞を受賞したPVDコーティング材に、クーラントの量を増やし、切りくず排出性を向上したボディーを組み合わせた。ステンレスの高速加工でも安定し、同社が機械技術10年6月号に発表したデータでは、難削材の代名詞、チタン合金に対しても従来の5倍の送りを実現している。

切り粉の飛散防ぐ

 重量あたりの強度が鉄を大幅にしのぐCFRP(炭素繊維プラスチック)。成形技術の向上で航空・宇宙から自動車産業にまで利用拡大が見込まれる。穴あけ加工の割合も多く、ジャンボジェット1機の主翼で数万カ所必要とも言われる。ただ、難削材としても知られ、加工には金属とは異なる問題が存在する。

 まず、穴あけ加工時にはバリや層状はく離(デラミネーション)が起こりやすく、工具摩耗も激しい。これに工具メーカーは切れ味と耐久性の両立で対処。例えば10年の超モノづくり部品大賞部品賞を受賞したオーエスジーの「ダイヤモンドコーティング超硬ダブルアングルドリル」は、刃の形状・角度を工夫し、ダイヤモンドの被膜で高い耐久性を確保した。もう一つが切りくずや粉塵の処理だ。微細で回収しにくく機械の故障だけでなく、作業者の健康への影響も懸念される。その解決を目指して森精機製作所が工具メーカー、集塵機メーカーと共同開発したユニークな切削加工技術が「ゼロチップシステム」。発生した切りくずを工作機械の主軸から工具先端まで続く管路を使い吸引・回収する。

 専用工具にはCFRPやグラファイト用のドリル・カッターと鋳物用カッターがあり、ケミカルウッドなどにも応用可能。切りくずはバキューム装置で吸い上げる仕組みだが、主軸内には非回転のパイプを配置し、遠心力の影響をなくした。カッターの切削除去量はCFRPで毎分60cc、鋳物で毎分96cc。集じん率は最大96%にのぼる。

 CFRP用の工具はスピンドルスルー(クーラント通路)を切りくずがさかのぼる構造でカッターには飛散防止カバーを設けるなど専用に設計。ホルダーも吸引口付きをツーリングメーカーと開発した。ドリルはダイヤコーティングした刃の根もとに吸引口を設け、粒状の切りくずを回収しやすいデザインとした。

作業者の健康配慮

 吸引効果を高めるため、加工プロセスも工夫。ドリルの吸引口がワークに近づくまでは回転を落とし、切りくずの飛散を避け、ワーク上面ぎりぎりに達したあとわずかにドウェル(一時停止)を入れ、周囲に盛り上がった切りくずを吸引しながら切削する。吸引口がワーク中に入れば完全吸引できる。「大きな穴付きドリル、ダイヤコーティング、加工プログラムの三つで成り立つ」(森精機製作所)システムだという。

 詰まりを防ぐためクーラントを使わないドライ加工としたが、吸引による空冷効果で樹脂軟化温度以下に冷却でき、完全ドライで高速加工を実現した。加工端面に切りくずが残らず、穴あけ時のデラミネーションも抑える。システムの対象となる工作機械は立形・横形マシニングセンターで内部に管路を通すためHSKA―63以上の主軸を搭載可能な機種に限られる。だが、溜めた切りくずは直接触れずに廃棄でき、作業者の健康を守り、清掃時間の短縮にもつながる。今後はセミドライを使用し、アルミ・鋼材への対応可能な機種も開発予定としている。

<出稿企業一覧>

企業名   新聞広告
オーエスジー その次の翼で この時代を 全世界を 未来を力強くはばたく
三菱マテリアル WSTERドリルシリーズにCFRP加工用ドリルを追加
タンガロイ 優れた加工面と安定した切りくず排出性を更に追求した新ボディ
ダイニチ 再研磨もうまい店-あの日の超硬ドリル、取り戻したい…
西口製作所 熟練したニシグチの技術力が造り出すリーマ&ドリルで高精度・高効率加工を実現
イワタツール HRC40〜70の焼入れ鋼に穴があく

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