奴隷解放を宣言したリンカーン大統領、黒人の権利拡大に力を注いだキング牧師、歌で世界平和を訴えたジョン・レノン…。米国で凶弾に倒れた有名人を挙げればきりがない。銃の怖さを知っているはずなのに、手放せない市民が多い。不思議な国である
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今年1月、アリゾナ州で起きた乱射事件は大きな衝撃を与えた。子どもを含む6人が死亡、下院議員が重傷を負った。米国には約3億の人口に近い数の銃があるとされる。事故も多く、1日平均約50人が死傷している、との報道もある
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米国に留学経験のある同僚の話だと、スーパーで食料品や日用品を買う感覚で拳銃や弾を手に入れることができるそうだ。趣味で拳銃を持っていた友人に異論を唱えたところ、「銃の所持は市民の権利」と強く反論されたという
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乱射事件後、銃の規制を求める声は盛り上がってはいない。逆に銃の売り上げが伸びた州もあるほどだ。もともとは規制派のオバマ大統領も世論を意識してか、就任後は規制について積極的な発言をしていない
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「銃の文化」が根付いているということなのだろうか。銃という武器に向き合う姿勢の差は、日本人にとって大きな問題だ。おのずと戦争や軍事に関する考え方も異なってくるからだ。菅直人政権は安全保障面で無批判に米国への傾斜を強めている。銃にこだわり続ける文化の違いにも目を凝らした方がいい。