最近、IaaS型クラウドの流行の裏で、VPSがひそかな人気を集めています。
VPSは、クラウドのような従量課金やAPIアクセス、柔軟なリソース増減はできませんが、その分安価な価格設定が行われることが多く、数ヶ月以上利用するのであればクラウドよりも非常に安価で高いパフォーマンスを得られることが特徴です。
また、コントロールパネルで起動、停止、再起動などの操作や、OS再インストールなど、クラウドで言うところの「セルフサービスによる」という部分は多くのVPSで実現されており、さくらのVPSに限ってはコンソールをホストOS経由で直接アクセスできるなど、物理サーバの置き換え用途としても十分に利用できる内容となってきました。
さらに、申し込みから利用開始まで数分から数十分程度で行えるなど、従量課金ではないことと解約が手動となる点を除けばIaaS型クラウドに決して劣るものではありません。
ただ、たくさんのVPSが各社から提供され、なかなか選べないよという方も多いのが実情です。
今回は、さくらのVPSのほか、話題を呼んでいる日本ラッドさんのSaaSes Osukini Serverと、DTIさんのServersman@VPSを取り上げ、それぞれのVPSについて比較をしてみました。
いちおう公平に書くようにしましたが、色眼鏡で見ていただいても結構です。m(_ _)m
それでははじめに各社の仕様をまとめてみます。
プラン名 | さくらのVPS | Osukini Server | Serversman@VPS | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
512 | 1G | 1.5G | 4G | 8G | LT | ST | GT | XT | Entry | Standard | Pro | ||
初期費用(円) | 0 | 2,980 | 4,980 | 9,980 | 19,980 | 6,000 | 6,000 | 10,000 | 14,000 | 0 | 0 | 0 | |
月額(円) | 980 | 1,480 | 1,980 | 3,980 | 7,980 | 450 | 980 | 1,980 | 4,980 | 490 | 980 | 1,980 | |
年払い割引 | 1か月分割引 | なし | なし | ||||||||||
試用期間 | 2週間 | 2週間 | 記載なし (キャンペーン対応) | ||||||||||
メモリ容量 | 512MB | 1GB | 1.5GB | 4GB | 8GB | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 256MB | 512MB | 1GB | |
HDD容量 | 20GB | 30GB | 50GB | 120GB | 240GB | 50GB | 100GB | 200GB | 400GB | 10GB | 30GB | 50GB | |
SWAP設定 | ○ | ○ | × | ||||||||||
リモート コンソール |
○ | × | × | ||||||||||
固定IP | v4 | ○ | ○ | ○ | |||||||||
v6 | × | × | ○ | ||||||||||
追加IP | × | ○ 月額500円 |
× | ○ 1個 |
○ 3個 | ||||||||
IP逆引き | ○ | ○ | △ 制限あり | ||||||||||
仮想化プラットフォーム | KVM完全仮想化 | Xen完全仮想化 | OpenVZコンテナ | ||||||||||
OS | CentOS | ○ | ○ | ○ | |||||||||
Debian | ○ | ○ | ○ | ||||||||||
Ubuntu | ○ | ○ | ○ | ||||||||||
Fedora | ○ | × | × | ||||||||||
FreeBSD | ○ | × | × | ||||||||||
現在のキャンペーン | 今なら初期費用半額 | 今なら最大2か月分を無料に | |||||||||||
その他の制約等 | 試用期間中は2Mbps制限 試用期間中はOP25Bあり |
VPN設定不可 iptablesエントリ数の上限あり |
これではわかりにくいので、一番の関心事であろう価格について、それぞれ初年度にいくらかかるかを比較してみましょう。
また、メモリ1MBあたりの単価、HDD 1GBあたりの単価も見てみます。
プラン名 | さくらのVPS | Osukini Server | Serversman@VPS | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
512 | 1G | 1.5G | 4G | 8G | LT | ST | GT | XT | Entry | Standard | Pro | ||
年間の利用額(円) | 10,780 | 19,260 | 26,760 | 53,760 | 107,760 | 11,400 | 17,760 | 33,760 | 73,760 | 5,880 | 11,760 | 23,760 | |
メモリ1MBあたり(円) | 21.0 | 18.8 | 17.4 | 13.1 | 13.2 | 22.3 | 17.3 | 16.5 | 18.0 | 23.0 | 23.0 | 23.2 | |
HDD 1GBあたり(円) | 539.0 | 642.0 | 535.2 | 448.0 | 449.0 | 228.0 | 177.6 | 168.8 | 184.4 | 588.0 | 392.0 | 475.2 |
ここで、グラフ化してそれぞれのプランがどのような位置にあるのかを見てみます。
まず、メモリの容量を横軸にした価格帯です。
導入費用が絶対価格で最も安いのはServersman@VPSのEntryプランですが、概ね価格帯は似通っているといえます。
低スペック帯では唯一256MBモデルを出しているServersman@VPSが安価であり、512MBあたりでは3社とも同様の価格となり、高スペック帯ではさくらのVPSがもっとも安価ということがわかります。
次に、HDD容量を横軸にした価格帯を見てみましょう。
総じていえるのは、Osukini Serverが飛びぬけて大容量であるということでしょう。
例えば、1万円の場合にさくらのVPSは20GB、Serversman@VPSは30GBのところ、Osukini Serverは50GBと大幅に大きいことがわかります。
最後に、ベンチマーク比較を見てみましょう。
既にこれらのVPSサービスの利用者の方がunixbenchで計測されていますので、その情報を見てみたいと思います。
それぞれ、「さくらのVPS unixbench」「Saases unixbench」「serversman unixbench」とGoogleで検索して出てきたページから抜粋しています。
- さくらのVPS
- 1464.1(980) - AbyssLukeのガイドライン
- 1540.6(980) - さくらインターネット創業日記
- 1201.1(980) - ヌル日記
- 1502.6(980) - よねすけさんより(コメント欄)
- Osukini Server
- 570.8(ST) - masa23のメモ
- 580.9(LT) - ScrewTurn Wiki
- Serversman@VPS
- 335.3(Entry) - SUEKICHI.org
- 329.5(Entry) - YANO's digital garage
- 235.7(Entry) - ヌル日記
- 465.4(Standard) - AbyssLukeのガイドライン
- 522.9(Standard Turbo Off) - よねすけさんより(コメント欄)
- 774.7(Standard Turbo On) - よねすけさんより(コメント欄)
これを見ると、さくらのVPSが1200から1500程度、Serversman@VPSがEntryで200から400程度、Standardで400?800程度で、Osukini ServerがLTとSTともに600程度です。
unixbenchだけでは結果はわかりませんが、数字を見る限りさくらのVPSが飛びぬけて性能がよいのは間違いなさそうです。
ただ、性能だけを見ても仕方が無いので、価格性能比をマッピングしてみましょう。
やはり性能についてはさくらのVPSが良いですが、興味が惹かれるのはServersman@VPSです。Osukini Serverが価格が上がっても性能が変わらないのに対し、Serversman@VPSはプランごとに性能が変わっているうえ、TurboモードをONにすることによる性能の向上が見られます。
完全仮想化の場合はゲスト空間が利用者に全て委ねられるのに対し、OpenVZの場合はCPU性能をコントロール出来るというのが寄与しているものと思われます。
それでは、ここでまとめにしたいと思います。
比較を実際にしてわかったのは、各社各様に特徴があるなというところで、本当はさくらのVPSを推したいところですが、そうは甘くないようです。
ということで各社の特徴をまとめてみました。
- さくらのVPS
- 高スペックプランになるほど、コストパフォーマンスがよくなる
- リモートコンソールが利用できる
- サーバ性能が飛びぬけて良い
- 利用できるOSが多い
- 初期費用が無い(980プランのみ)
- Osukini Server
- HDD容量が飛びぬけて大きい
- Serversman@VPS
- IPv6が利用できる
- IPv4が複数利用できる(StandardとProのみ)
- 低スペックプランがラインナップされ、最も安い
(過去のキャンペーン適用者で、Entryを月105円で利用できてる人もいるらしい) - 運が良ければ保障以上のメモリを使える(但しプロセスがしばしばkillされる)
- 初期費用が無い
私の結論としては、
- スペックや性能が低くてもとにかく安くということでは、Serversman@VPS
- HDD容量が欲しければ、Osukini Server
- HDD容量はそこそこで良く、月に980円以上出せるのであれば、さくらのVPS
なお上述のとおり、ある程度の値段になると、Osukini Serverか、さくらのVPSという選択肢しかなく、スワップが利用できることも考えると、本格運用の場合には Osukini Server か、さくらのVPSの2択かなと思います。
本当はさくらのVPSだけを推したいところでしたが、さすが岡田さんだけあってOsukini Serverも良くできているという印象です。
また今後、Amazon Web Servicesや、Linodeなども取り上げる予定ですが、皆さんからもご意見などいただければ幸いです。
2011/02/27 @taka0gaさんからの情報提供で、ScrewTurn Wikiさんが計測したOsukini Serverのベンチマーク結果を追加しました。
2011/02/28 よねすけさんから頂いたコメントを元に、さくらのVPSと、Serversman@VPSのベンチマーク結果を追加しました
2011/02/28 unixbench結果と初年度費用の関係を追加しました。
カゴヤクラウド VPSが正式サービス開始になった際はそれも追加した方がよろしいかと。
使った印象としては反応は良さそうです(ベンチとかはしていませんが)
残念ながら、プレスリリースを見ただけで、Linode に対しては価格面以外での優位性がないことがわかっています。WHTで、アジアの代表的VPSとして名前が挙がるようになってから比較されてはいかがでしょう。また、AWS は土俵が違います。それこそ、さくらのクラウドと比較すべきで、あまり意味があるとは思われません。
初めまして。よねすけと申します。
さくらさんには、telway収容さくらウェブの頃からお世話になっていますw。
以前、性能比較のためにあちこちでUnix Bench 5のベンチマーク取ってありましたので、こっそり貼り付けさせていただきます。何かのお役に立ちますやら。
なお、*から始まるのはその辺にあった実機でテストしたものです。
その辺にあったものなので、OSバラバラですが(^^;
また、IndexスコアはマルチCPUでのものです。
さくらのVPS (CentOS5.5 64bit)
1502.6
カゴヤクラウドβ (CentOS5.5 64bit)
1451.9
*Core2Duo2.8GHz (Ubuntu 9.04/4GB/1TB)
1337.4
ServersMan Standard [ターボON] (CentOS5.5 32bit)
774.7
ServersMan Standard [ターボOFF] (CentOS5.5 32bit)
522.9
*Atom 330 (Ubuntu 10.04/2GB/320GB)
507.6
*AthlonXP 2GHz (CentOS 5.5 32bit/640MB/120GB)
361.1
*Pentium4 1.6GHz (UbuntuServer 10.04 32bit/256MB/80GB)
182.5
*玄箱 (Debian 5/64MB/160GB)
44.1
ベンチ結果のみをみると、さくらのVPSが突出してますねぇ。およそ34クロバコでしたw。