きょうの社説 2011年2月28日

◎金沢に「本田コート」 少年サッカーの「聖地」に
 サッカー日本代表・本田圭佑選手が、北陸の子どもたちに大きなプレゼントを届けてく れた。高校時代を過ごした金沢市にこの夏完成する人工芝の少年サッカー場「本田圭佑クライフコート」である。

 2009年にオランダ2部のVVVフェンロでMVPを獲得した本田選手の活躍を評価 し、オランダのNPO法人ヨハン・クライフ財団が20万ユーロ(約2200万円)の造成費を提供することが正式に決まった。選手時代に欧州年間最優秀選手賞(バロンドール)を3度受賞した往年の名プレーヤーと、ワールドカップ南アフリカ大会で大活躍した本田選手の名を刻むサッカー場は話題性十分で、このコートでのプレーは、全国のサッカー少年、少女のあこがれになるだろう。

 本田選手は、造成場所について打診した財団に対し、金沢市を推薦した。「サッカーを する子供たちの励みになれば」と話しているという。本田選手は昨年暮れ、七尾市でサッカー教室を開いたほか、同市と金沢市の小学校にサッカーボール200個を贈るなど、「第二の故郷」に深い愛着を持ってくれている。本田選手の名を冠したサッカー場を少年サッカーの「聖地」に育てたい。

 ヨハン・クライフ財団は1970年代に欧州リーグで活躍したクライフ氏が設立し、こ れまで世界100カ所以上に「クライフコート」を寄贈している。金沢市に造られる「本田圭佑クライフコート」はアジアでは初の施設で、金沢市の城北市民運動公園内の多目的広場に、42メートル×28メートルの人工芝コートが設置される。日程が合えば、完成式には現在ロシアリーグに所属する本田選手が顔を出してくれるかもしれない。

 金沢市は財団から寄付を受け、新年度当初予算案に通路や植栽などの周辺整備事業費8 00万円を計上し、維持管理を行うことになる。本田選手の名を冠したアジアで唯一の施設だけに、全国のサッカー少年、少女たちの注目の的になるはずだ。全国規模の大会などを通じて、金沢の新名所を売り込む工夫が求められる。「本田コート」から第2、第3の本田選手が生まれることを期待したい。

◎アフガン医官派遣 安直な印象がぬぐえない
 アフガニスタンに自衛隊の防衛医官と看護官を派遣する政府の構想が、暗礁に乗り上げ た形になっている。政府の憲法解釈に抵触する恐れのある負傷者の治療を国際治安支援部隊(ISAF)から要請されていることに加え、ISAFとの間で協定の締結が必要で、その国会承認を受けることが、現状ではきわめて困難だからである。

 アフガン国軍の医師らを教育、指導するため防衛医官らを派遣する構想は、インド洋で の給油活動に代わる人的貢献策として菅直人首相が昨年11月、オバマ米大統領に「前向きの検討」を約束し、その後、アフガンを訪問した政府調査団がカルザイ大統領にも表明したことである。構想がここで頓挫すれば、国際社会が取り組む「テロとの戦い」において、日本の評価がまた低下する恐れがある。

 アフガン復興支援に自衛隊を派遣し、人的貢献をアピールする方針はよしとしても、現 行の防衛省設置法に基づく対応に、そもそも危ぐがあった。つまり、今回の医官派遣は同法の規定にある「教育訓練」の一環で、補償も十分でない「海外長期出張」扱いというのは、いかにも小手先の対応で、安直な印象がぬぐえない。

 また、他国の武力行使と「一体化」する活動は憲法上許されないという政府解釈に縛ら れ、負傷者の治療は活動対象から外されている。これでは、人道支援策として胸を張ることはできない。

 自衛隊の国際貢献活動の在り方について、国会論議を深めてこなかったツケが回ってき ているともいえる。自民党は昨年の通常国会で、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法(一般法)の「国際平和協力法案」を提出した。イラク復興支援やインド洋での給油のように、事案ごとに特別措置法を制定する従来のやり方を改め、恒久法で自衛隊の海外活動を迅速に行う狙いである。こうした考え方は民主党内にもあり、北沢俊美防衛相も「必要性について真剣に議論したい」と述べているが、自民党の法案は継続審議扱いとなったままで、審議の進展が期待できそうにないのは残念である。