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【スポーツ】

川内優輝が世界陸上代表内定 市民ランナーが日本人トップ

2011年2月28日 紙面から

2時間8分37秒で、日本人トップの3位でゴールした川内優輝=東京ビッグサイトで(北村彰撮影)

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◇東京マラソン2011

 ▽世界選手権男子代表選考会▽27日▽9時10分スタート▽都庁前〜東京ビッグサイトの42・195キロ(エリート、一般、車いす)▽10キロ(一般、障害者)▽参加者3万6445人▽スタート時の気象、晴れ、気温10・7度、湿度37%▽東京新聞共催、東京中日スポーツ後援

 最強の市民ランナーだ! 埼玉県職員の川内優輝=埼玉陸協=が2時間8分37秒で日本人トップの3位に入り、今夏の世界選手権代表に内定した。実業団に所属していない市民ランナーが快挙を成し遂げた。初マラソンで4位となった尾田賢典=トヨタ自動車=も2時間9分3秒で代表候補に名乗り。優勝は2時間7分35秒のハイル・メコネン=エチオピア=。女子は、タチアナ・アリャソワ=ロシア=が2時間27分29秒で制した。

 「死んでもいい」。川内は心の中でつぶやいた。39キロすぎ、前にいる唯一の日本人、尾田を一気に抜く。残り3キロ。すべてを出し切り、フラフラになりながら無心で走った。市民ランナーが日本人トップでゴールを駆け抜け、世界選手権の代表に内定する歴史的瞬間だ。「無事にたどり着いてよかった…」。そう思ったと同時に倒れ込んだ。

 精も根も尽き果てた。手足のけいれんが治まらず、医務室で横になったまま、しばらく立ち上がれない。ゴールから1時間後、ようやく会見室に姿を現した。

 「埼玉県庁の川内です。市民ランナーでもやれるということを見せられました。フルタイムで働いているので、限られた時間の中で効率いい練習をしているつもりです」

 身分は埼玉県職員。普段は春日部高定時制の事務を担当している。「生徒たちからは『ジム』と呼ばれてます」と笑う。勤務時間は午後0時45分から午後9時15分まで。仕事前に2時間練習するのが日課だ。もちろんパートナーはいない。「ちょっと寂しいんですよね」。平日は近くの公園、週末は後輩やランナー仲間と駒沢公園を走る。夏の週末には、実業団ではあり得ない山の中を42キロ走ることもあるという。

 エリートとは程遠い、自称「落ちこぼれ」。強豪校の春日部東高に入学したものの練習にはついていけなかった。学習院大の時、学連選抜で2度、箱根駅伝に出場したのが全国大会で残る唯一の記録だ。

 大学卒業直前と、昨年の東京マラソンで4位入賞したときの2度、実業団から誘いがあった。「今のスタイルで結果が出ている。無理に変える必要はない」。自分の練習はエリートよりも雑草の方が向いている。市民ランナーにこだわりがあった。

 合宿や遠征で年間70万円ほどかかり、3位の賞金200万円は「本当に助かる。お金をもらっている実業団と違って、お金を払って陸上をやっている。本当に陸上が好きでないとできないです」。そんな“陸上好きの市民ランナー”が世界選手権の代表になった。23歳の公務員2年目。果たして休暇はとれるのだろうか。

 「有給は毎年使い切れないので、こういう時に使わせてもらえればいい。明日は8時半から仕事。入試の願書受け付けで一番忙しい日なんです」

 フルマラソンの翌日は朝から本業。“市民ランナーの星”に休みはない。 (森合正範)

 

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