北が心理戦に反撃警告、実際に挑発可能性も(下)
北朝鮮がこのようにビラに慌てるのは、北朝鮮住民を目覚めさせる「真実」が盛り込まれているからだ。2008年8月に金正日総書記が倒れた直後には「脳卒中にかかった」というビラが飛ばされ、食糧事情が悪化した際には「金正日は人民300万人が餓死するときにもぜいたくな食事を取っている」といった内容が書かれていた。
■生活必需品はさらに脅威
北朝鮮の政権の立場では、ビラと同時に飛ばされる生活必需品も脅威となるだろう。練り歯磨き、歯ブラシ、石けん、即席めん、即席ご飯、ラジオなどは、極寒の状況に置かれた北朝鮮住民にはぜひ必要な物資だ。韓国は2月だけで6億2000万ウォン(約4500万円)相当の物資を北朝鮮に飛ばした。これまでにも、北朝鮮向けのビラとともに落下する1ドル紙幣や生活必需品を拾うため、住民がビラに群がることがしばしばあったという。北朝鮮では1ドルあれば、コメ、豚肉を1キロ購入できる。北朝鮮は落下したビラの回収に軍まで動員しているが、軍人がビラの内容を見ないように監視するのも頭を悩ませているという。生活必需品は金総書記を脅かす奥の手となる可能性がある。
国防研究院のペク・スンジュ博士は「北朝鮮の政権が内部的にかなり過敏になっており、心理戦に非常に神経質になっている」と述べた。
■北朝鮮政権、今年はぜい弱な1年
北朝鮮の政権は過去数年、「権力の時計」を2012年に合わせてきた。12年は北朝鮮が「強盛大国元年」と位置づけた年だ。北朝鮮は昨年、食糧の作況が過去20年間で最高だったにもかかわらず、住民にコメをまともに配給していないのは、困難な今年を乗り越え、来年に配給量を増やし、住民に「強盛大国」を実感させるという高度の心理戦術によるものだ。そんな北朝鮮にとって、韓国側のビラ散布、「キーリゾルブ」のように全軍、全住民への動員令を出さざるを得ない韓米合同軍事演習は大きな負担に違いない。
北朝鮮事情や軍事に詳しい専門家は、「窮地に追い込まれた北朝鮮の脅迫が、今回は恐喝にとどまらず、実際の行動に移される可能性がいつになく高まっている」と指摘した。
アン・ヨンヒョン記者
金真明(キム・ジンミョン)記者
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