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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】米軍の対中シフト 同盟の連携強化を怠るな
米軍の対中国シフトが目立ってきた。
米統合参謀本部は米軍の中長期的運用指針となる「国家軍事戦略」(2011年版)をまとめたが、アジア・太平洋を舞台に急ピッチで進む中国の軍事近代化と海洋進出に明確な懸念を示し、日韓など同盟国に一層の連携を求める内容となったことに注目したい。
米軍運用指針の改定は7年ぶりで、オバマ政権では初めてだ。アジアの戦略的環境の激変を強く意識した結果とみるべきだ。日本も昨年末、新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を決めたが、これで十分かどうか。菅直人政権は日米間の綿密なすりあわせを急ぎ、同盟の強化・充実に実効ある協力を進める必要がある。
改定は昨年の米国家安全保障戦略や国防総省の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)を受けたものだ。最大の特色は、旧版(2004年版)では触れなかった中国の軍事的台頭を強調しており、アジアへの影響や具体的対抗策も論じている点である。
戦略的環境の項では、中国の持続的な経済成長に伴って「軍近代化と権益主張の拡大は今後も続く」と予測している。それが中台間の軍事均衡に及ぼす影響を注視するとしているのは当然だ。
北朝鮮の核問題や海賊対策などで中国の役割を評価し、米中軍事対話の深化を求めたのは「前向きで協力的な関係」をめざす米政府の方針に配慮したのだろう。
その一方で、中国の軍拡とその意図には「懸念が続く」とし、南シナ海、東シナ海、黄海での海洋権益拡大や宇宙、サイバー空間への攻勢を警戒対象に明示した。
これらに対抗するため、日韓豪との連携強化や、多国間演習などを通じて東南アジア諸国やインドとの協力拡大も目指している。いずれも旧版にはない記述で、それだけ米軍の対中警戒認識の高まりを示す指針とみるべきだ。
問題は、こうした課題提起に同盟国側の対応が問われることだ。日本について「自衛隊の域外運用能力向上に米軍が協力する」と記述する一方で、韓国を「確かな同盟国」と呼び、日本に一層の努力を求める姿勢をにじませている点もしっかりと受け止めたい。
中国の軍拡に向き合うには日韓の協力拡大も重要な課題だ。日本の宿題が山積していることを首相は改めて認識してもらいたい。
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