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「東京マラソン 公務員・川内優輝が世界陸上代表に 市民ランナーでもできると胸張る」優勝はメコネン

2月 27 日, 2011 年, 11:22 am

27日=有明 「市民ランナー川内、世界陸上へ」(写真) 5回目の東京マラソン(兼、男子は世界陸上選考会)が都庁から有明・ビッグサイトまでの片道コース42・195㌔で行われ、エリート男子ではエチオピアのメコネン(30)が2時間7分35秒で初優勝を果たした(優勝賞金800万円)。2位にビウォット(ケニア)、日本人1位(3位)には、2時間8分37秒で、市民ランナーの川内優輝(23=埼玉陸協、写真)が5回目の東京で日本人最高タイムをマークした。実業団選手を途中抜いての8分台で、陸連が規定した2時間9分29秒以内、選考会日本人トップの条件をクリアして世界選手権代表に内定した。
  川内は、学習院大の陸上部時代、「学連選抜」として箱根駅伝に出場。07年、09年とも6区山下りを走りそれぞれ6位、3位と活躍した異色の市民ランナー。卒業後には実業団ではなく、定時制に勤務する公務員として市民ランナーの仲間と指導者を持たず、月間600キロほどを走る時間をやりくりして力をつけてきた。「市民ランナーでもやればできる」としていた夢を実現した。
一方、ランニングを職業とし、実業団で恵まれた環境と練習時間を確保されていながら結果の出せない実業団ランナー、何よりも指導者たちにとって、強烈な「ショック療法」(沢木専務理事)となった。

 女子は、およそ2年ぶりのマラソン出場となった渋井陽子(三井住友海上)が、27㌔過ぎで勝又美咲(第一生命)をとらえて首位に。しかし40キロ手前で、アリャソワ(ロシア)がスパートしてそのまま2時間27分29秒で優勝。渋井は抜かれて最後は4位。大阪女子マラソンではペースメーカーを務め、今回初マラソンに挑んだ樋口紀子(ワコール)が2時間28分49秒で2位(日本人1位)となった。

 車椅子男子は、副島正純(40=シーズアスリート)、同女子は土田和歌子(36=サノフィ・アベンティス)が4連覇を果した。この日のフルマラソンには3万3353人が参加し、97.2%と高い完走率だった。

  コラム「お金をもらって走るのが実業団、お金を払ってでも走るのが市民ランナー」

  日本人1位で世界選手権代表に内定した市民ランナー・川内は、レース後けいれんを起してしまい、会見にもゴールから1時間半ほどが経過してから登場。「遅れてしまいすみませんでした」と、深く頭を下げるなど埼玉県の公務員として、春日部高校定時制の事務を扱う職員を務めている日常をうかがわせた。
 レースは序盤に速いペースの集団で力を貯え、その後少しずつペースをあげながら38㌔を過ぎてトップに。途中、自分が独走している状況に「(こんなに前にいることを)どうしたものかと思いながらも」とコメントして会見場の記者を笑わせた。日本人トップのトヨタ自動車、尾田をとらえたときには、「ついていこうとか並ぶとせこいことを考えずに、前半力を貯めた分思い切って前に行こうと」とレースの行方を自らの勇気で決めた。
 公務員としての生活の中で、日々の練習は公園を2時間程度走るのが精一杯。水曜日と土曜日に時間を捻出しながらペース走などを取り入れてきた。今回は順位は8番以内、タイムも10分を切る程度を想定して臨んだという。この日も苦しかった地点の沿道で「川内君ならできる!」「がんばれ埼玉!(ユニホームに埼玉陸協とあったため)」と声援が聞こえ、励まされたという。1月の都道府県対抗駅伝のアンカーを務めながら、順位を落としてしまったことで「埼玉の皆さんに申し訳ない。名誉挽回になったでしょうか」と笑顔を見せた。自身を、「高校、大学、実業団とエリートの育成枠からのオチこぼれ」と評しながら、「お金をもらって走るのが実業団のランナー、私はほかの市民ランナーのみなさんと同じに、自分でお金を払ってでも走る。そこが違う」と、市民ランナーのプライドをにじませる。
 かつて、ミュンヘン五輪男子マラソンでは采谷義秋氏が高校教員として代表に選ばれ、92年のバルセロナ五輪前も、現在資生堂の弘山勉監督が、監督も指導者も持たない市民ランナーの立場で福岡マラソンで2位に入る大活躍を見せて話題を呼んだ。
 世界陸上への出場権を手にしたことについて、「市民ランナーでもやれるということ、川内がやれるならオレでもできる、世界に向ってできるということを示すことができたと思う。でも、こんなレベルでは全くだめ。より高いレベルで練習を積まないと世界では戦えない」と、今後のトレーニングへの課題をあげていた。陸連も、「今後、川内選手の希望を聞きながら、強化指定(S、A、B,Cがある)をしサポートしたい」としている。
 世界陸上の代表に決まった場合は、有給休暇を取るか、公務員の専念職務を免除してもらうか、いずれにしても実業団のように自由にはいかない。「有難いことに、きょうは宿泊させて頂きます」と、27日は招待選手の特典で都内に宿泊。しかし28日は、一年でもっとも忙しい日という、高校の願書受付が朝9時15分から始まるため新宿から朝7時台のJRで出勤します、と殺到するメディアの取材に答えていた。
 瀬古、中山両氏の時代から、月間走行距離を積むことによって海外の強豪と戦ってきた日本男子マラソン界だが、川内は月間わずか600キロ、刺激を入れる練習も週二回ほどでほとんどがジョっギングでトレーニングを積んだ。東京マラソンの日本人ベストタイム、また昨年でも1人しか切ることのできなかった2時間10分を、実業団、陸連の強化とは無関係だった市民ランナーが突破したことで、男子マラソンの強化の問題点をも浮き彫りにする結果に。坂口泰・日本陸連男子マラソン部長は「実業団何をやっているんだ、ということになるのかもしれないが、そう簡単に言うのではなく川内君の存在をきっかけにもっと挑戦してほしい」と、苦しい表情を見せた。
 男子の残る選考レースは、3月6日のびわ湖となる。

 〇・・・優勝したメコネンは、ホンダにも1年在籍。昨年からマラソンを始めこれが4回目のキャリアながら、4戦連続での自己記録更新でマラソン初優勝を果した。「東京のような大きなレースに勝てたことがうれしい。ロンドン五輪には出場するのではなく、優勝するための計画で臨んでいる。まずは代表になること。(エチオピアでは)難しいが、なれる、と信じている」と話し、30歳の遅咲きながら五輪金メダルを狙うと宣言した。母国の、そして世界的な英雄、ハイレ・ゲブレシラシエの欠場について「悲しい。彼が出場していればレースはさらに良いものになっただろう」と敬意を込めた。
 

   

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