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[25341] 【習作】ジミーとメダルと女怪人と(仮題) (銀魂×仮面ライダーOOO)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:c79db0de
Date: 2011/02/25 22:06
何か思いついたので、練習がてら書いてみました。

とりあえず週一更新を目指して頑張ります。

予定では有る程度OOOサイドの話を進めたら、銀魂サイドの話に移る予定です。

01/09:1話投下
01/13:2話投下、誤字訂正
01/22:3話(前編)投下、誤字訂正
01/24:3話(中編)投下、誤字訂正
01/28:3話(後編)投下
02/02:4話(前編)投下
02/09:4話(後編)投下、誤字修正
02/17:5話(前編)投下、誤字修正
02/25:5話(後編)投下、誤字修正



[25341] メダルとミントンと謎の少女
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:c79db0de
Date: 2011/02/25 22:07
侍の国と呼ばれていた時代が今は昔となってしまった江戸の町、いまではこの国は事実上「天人」と呼ばれる異星人によって支配されているのが現状だ。

そのため今のこの国の有り様に不満を募らす連中、「攘夷浪士」と呼ばれる奴等が現れてしまった。

「攘夷浪士」は「天人」からこの国を救うというお題目の元で行動を行っている、過激な連中なんかはテロ行為も辞さない危険な連中である。

そんな奴等から江戸の治安を守るために、彼等「真選組」という組織は存在している。





軸足に重点を置き、体が前屈みにならないようにしてラケットを構える。
体に余計な力が入らないように意識する、変に力を入れてしまうとシャトルへ力が伝わりにくいのだ。
頭の中でシャトルの軌道をイメージする。
スマッシュを行うための最適な位置へシャトルが来た瞬間、一閃、何千・何万と繰り返して素振りしてきた完璧なフォームよりラケットが空を切る。
見事にスマッシュが決まり、シャトルが開いてコートに叩きつけられるイメージが自然と浮かぶようだ。

「よし、今日も絶好調」
「何が絶好調だ」
「痛っ!?」

ミントンの素振りをしていた最中、何時の間にか後ろに立っていた男に頭を小突かれる。

「何、仕事中にミントンやってるのかなー、山崎くん?」
「ふ、副長!?」

自分に不意打ちを喰らわせたくわえ煙草の男が、自分の上司である土方十四郎である事を理解して男は怯えた。
過去も仕事中にミントンをやっている事がバレて、ボコボコにされた経験がある事を思い出した男は咄嗟に言い訳を始める。

「い、いや…副長!?これは遊んでいたのではなく次の任務に備えて、緊張感を維持をするためにミントンを行なっていただけで…」
「くだらねー言い訳をしてるんじゃねぇ。いいから着いて来い、お前がミントンをしながら備えていた次の任務をして貰うぞ」
「は、はい」





「潜入捜査ですか?」
「そうだ、お前には今日からこの美術館に潜り込んで貰う。何でもその美術館を襲う計画を攘夷浪士が建てているらしいんでな」

ミントンをしていた男、山崎退は真選組の監察方(密偵)の職に就いている。
攘夷浪士の中に潜り込み、計画を阻止する仕事は朝飯前なのだが…どうも今回の仕事に山崎は違和感を感じていた。

「はー、攘夷浪士がですか。奴等が美術館なんかに何の用が有るんですかね、もしかしてその美術館には天人が絡んでるんじゃ…」

攘夷浪士は天人を敵視している、もしその美術館に天人と繋がりが有るのなら襲撃の計画があってもおかしくは無いと山崎は考えた。
しかしその推測は土方によってバッサリと否定されてしまう。

「いや、その可能性は低いだろ。その美術館は鴻上ファウンデーションが経営しているからな」
「えっ、鴻上ファウンデーションってあの財団の…」

鴻上ファウンデーション、それは近年に突然力を付けた謎の巨大財団である。
未だに全貌が掴めていない存在だが、少なくとも「天人」との繋がりが有るという噂は今のところ無い。
そのため攘夷浪士達がテロのターゲットとして選ぶ可能性が無いとも言えないが、少なくとも優先度は極めて低いと考えてもよいだろう。

「でも、天人が絡んで無いなら何で美術館なんかに…」
「それが解らないからお前に探って貰うんだろうが。頼んだぞ、山崎」
「了解です、副長」











鴻上ファウンデーションが経営する美術館に警備員として潜入した山崎、美術館の内部から調査を開始し始めたが…。

(はー。もう潜入してもう二週間になるけど、全くの収穫無しかー)

攘夷浪士達が狙う位なのだから、美術館を装って武器等の保管庫にでもなっているとも思って色々と探ったが、此処に有るのは訳の解らない美術品だけ。

(ヤバイ、マジで手詰まりになってきた!?もう一層、此処に襲ってくる攘夷浪士達を捕まえた方が早いんじゃ…)
 
思考が警察に有るまじき危険な方向になり始めた山崎だが、同じ警備員の服装を着た男に声を掛けられてその思考を止められる事になった。
「どうしたんですか、山崎さん。そんなに難しい顔をして?」
「ああ、火野くん。 いや、ちょっとウトウトしちゃってね…」

この美術館の警備員をアルバイトでしている、火野映司に声を掛けられる山崎。
どうやらよからぬ考えをしていた事が顔にも出ていたらしく、火野に不審に思われたらしい。

「駄目ですよ、眠っちゃたら。 俺達は今日の夜勤当番なんですから」
「はっは、それもそうだね」

今、山崎は美術館の夜間の警備勤務を行っている。
よくよく考えてみればこの時間には自分達と他数名の警備員しか美術館に居ないため、攘夷浪士達が押し入る絶好の機会と言えるだろう。

(まずい、これは気を引き締めないとな)

攘夷浪士達の意図は結局解らなかったが、真選組として最低でも此処を守らなければならない。
自分に課せられた使命を再確認した山崎は、改めて自分の任務を全うする事を決意するのだった。











「…それでその前の上司が横暴でさー、何につけても言葉と一緒に手が出てくるんだよ」
「へー、それは大変でしたね」

無駄な決意から数十分後、眠気覚ましに興じ始めた火野との雑談で山崎はすっかりと自分の任務を忘れていた。

「いやー、今でもあの上司の事は夢に見るよ。全く、仕事中にミントンぐらい許してくれてもいいじゃんかよ!?」
「し、仕事中にミントンはまずいんじゃないですか…」

火野の朗らかな人柄につい気が緩んでしまい、思いっきり愚痴を始めた山崎。
勿論、山崎の言う前の上司というのはあの鬼の副長である事は言うまでもない。

「本当、火野くんが羨ましいよ。火野くんは世界中を旅してるんでしょ?」
「はい、このバイトも次の旅の資金を集めるためにやっています」

聞く所によるとこの火野という青年は、世界を放浪してい回っていると言う。
本来なら警察官として定職も持たずにフラフラする青年を止めるべきなのだが、
今の環境に不満が溜まりっ放しの山崎には、火野の自由さがとても輝いて見えていた。

「いいよなー、旅。俺も何処か他の場所へ旅立って、こんな面倒な仕事から開放されたいよ…」
「いやー、そうとも限らないですよ、山崎さん」
「えっ!?」

何か思い出しているのか、何処と無く遠くを見つめたような視線で火野は語りだした。

「俺も色々とそこら中を見て回ってきましたが、解った事がひとつだけ有るんです」
「解った事って、一体どんな事が?」
「結局、何処に行っても楽園なんて物は存在しない。皆それなりに苦労して生きていました」

楽して助かる命が無いのは何処も一緒ですよ、そう言い火野は山崎を励ます。

「はー、やっぱりそうだよな。楽して助かる命は無いのは何処も一緒ねー…」

それを聞き、現実の厳しさを教えられて落ち込む山崎であった。











「ぐーがー」
「うーん、土方のアホーー…」

その後、話し疲れた山崎と火野は夜間警備を忘れて眠ってしまった。
この間に同僚の警備員に成りすましていた攘夷浪士達が、美術品を盗難しようとしていた事。
そして美術品の一つに封印されていた欲望の化身、「グリード」と呼ばれる怪人たちが目覚めた事に気付かぬまま…。











「なんじゃこりゃーーーー!!」

目が覚めた山崎は無残にも荒れ果てた美術館を目撃し、驚愕の声を轟かせた。

「えっ、マジ!? 俺が寝ている間に攘夷浪士達が美術館を滅茶苦茶にしちゃったのかー!!」

正確には攘夷浪士のちょっかいによって目覚めたグリード達と鴻上の私兵であるライドベンダー隊との戦闘の結果なのだが、勿論暢気に眠りこけていた山崎が知る筈も無い。

「ヤバイ、これはマジでヤバイぞ…。この事か副長にバレたら、職務放棄とみなされて確実に斬られる!?」

この美術館を襲う計画を建てていた攘夷浪士達を探る筈がまんまも出し抜かれてしまい、しかも事件中に自分は眠っていたという不始末。
このままでは確実に行われるであろう鬼の副長の制裁を逃れるため、山崎は必死に考えた。

「どうする、どうするー! はっ、そうだ、俺が一人で犯人を捕まえればいいんだ」

常識的に考えて今から犯人を追っても、容易く捕まる筈無いのだがテンパリ中の山崎はそこまで気が回らない。

「よし、そうと決まったら早速、犯人を追っかけないとな 」

その場から駆け出そうとしたら山崎、しかし足元かから金属を弾いた音を聞いて足を止めた。
どうやら何かを蹴飛ばしたらしく、山崎は自分の足元に視線を降ろす。
そこには鳥の紋様が描かれた赤いメダルが落ちていた、山崎は思わずそのメダルを拾って眺めた。

「これは…、何かのメダルか? …あ、こんな事をしている場合じゃ無い!?」

自分が危機的状況に瀕している事に気づいた山崎は、拾ったメダルをポケットに入れてそのまま駆け出した。











とある路地裏で明らかに人と異なる造形の存在、封印より目覚めた3体グリード達は苛立っていた。

「どういう事だ、何故俺のコアメダルが足りない!!」

体中のあちこちに昆虫の特徴を持つ緑色の怪人、ウヴァが自分の激情のままに叫ぶ。
しかしウヴァの下半身は上半身の意匠と比べ、何故か貧相な姿をしていた。

「メズール、何処だー」

他のグリードたちの比べて一回り巨大な下半身を持つ銀色の怪人、ガメルは何かを求めるように視線を彷徨わせる。
ガメルの上半身も下半身のそれと違い、貧弱な造形になっていた。

「コアメダルの在処なら解るよ、どうやらあいつが持っていったらしい」

全体的に猫科のイメージを思わす姿をした怪人、カザリがウヴァの疑問に答えた。
ウヴァの体も他と同じように、上半身が貧しい物となっている。

「何、あいつがか!? くそっ、姿が見えないと思ったら、そんな事をしてたの
「本当、よくやるよね。コアを殆ど失った状態で復活した癖に…」

彼らグリードと呼ばれる存在は、コアメダルと呼ばれる9枚のメダルによって構成されている。
しかし美術館にあった石碑による800年間の封印から開放された時、グリード達は自分たちのコアメダルが何枚か欠けている事に気づいた。
そのため体の一部が不完全な状態、「セルメン」と呼ばれる姿で復活をしてしまったのだ。

「くそっ、コアメダルを取り返してやるぞ」

自分のコアメダルを取り戻すため、ウヴァが動き出した。











山崎は当ても無く江戸を彷徨い、美術館を襲ったであろう攘夷浪士達を探していた。
事件を起こした犯人が街中をうろついている訳が無いのだが、自分の命が掛かっている山崎は気付かない。

「はぁ、はぁ…。くそっ、何処にも見当たらないぞ」

走りつかれて息が切れかけて、その場に立ち止まった山崎は何処からか悲鳴を聞きつけた。

「きゃっ!?」
「えっ、あの声は?」

市民を守る警察の一員である山崎は、すぐさま悲鳴の聞こえた方向へ走り出す。






「何だあれ、新種の天人か!?」

悲鳴が聞こえた現場に辿り着いた山崎、そこで彼は少女に襲い掛かる謎の怪人を目撃する。
青い服を着た少女が何かに苦しむように蹲り、カマキリを擬人化したような姿の怪人が少女と何か話しているようだ。

「くっ、ウヴァのヤミーか?」
「何故コアメダルを奪い、我々から離れたのだ? アンクなら兎も角、お前がそのような行動に出るとはな…」
「ふん、所詮グリードは欲望の化身よ。こんな状態では、カザリ辺りにカモにされるのが目に見えていたからね」
「まあ理由などどうでもいい、コアメダルを返して貰うぞ」

ウヴァによって生み出された緑色の怪人、カマキリヤミーが少女に今にも襲い掛かろうとしていた。
事情が解らないが少女を守るため、山崎はカマキリヤミーに向かって駆け出す。

「止めろ、婦女暴行の罪で逮捕する!!」
「がっ!?」

カマキリヤミーに不意打ちを与えた山崎だが…。

「何だお前は!」
「うわぁーーーーーー!?」

人を大きく上回る強大な力を持つヤミーに歯が立たず、あっさりと返り討ちになってしまた。

「何なのよ、貴方は?」
「安心しろ、俺は警察だ。 此処は俺が引き受けるから、君は早く逃げるんだ」

突然の乱入者に驚く少女に対して、山崎は逃げるように指示をする。
そのまま少女を追い掛けようとするカマキリヤミーに、山崎は再び立ち向かった。





「邪魔をするなー!!」
「ぐへぁーーーーーー!?」

力の差は歴然なのに関わらず、山崎はカマキリヤミーに立ち向かい続けた。
その姿を見ていた少女は、謎の乱入者の正体にこう結論を付ける。

「何だ、ただの馬鹿か」
「ちょっと待て!? 君のピンチに颯爽と現れた俺に対して、馬鹿呼ばわりとはどういう事だー!!」

少女の自分に対しての扱いに思わず抗議を入れる山崎だが、その隙をカマキリやミーは見逃さず手痛い一撃を喰らってしまう。

「いい加減にしろー!!」
「うわぁ!?」

カマキリヤミーの強烈な一撃に、山崎は吹き飛ばされてしまう。
その衝撃で山崎のズボンから先ほど拾った赤いメダルが零れ落ちてしまった、それを見て驚きを露にする少女。

「あ、あれは!? ……もうこの手しか無いようね」

山崎が落としたメダルを拾った少女は、そのまま倒れ付している山崎の側に近寄る。

「君は…、逃げろって言ったじゃないか」
「ねえ、貴方。 名前は何て言うのかしら?」
「えっ…、山崎 退だけど…」
「そう、サガルね」

山崎の名前を聞いた少女は、長方形の形をした何かを取り出した。

「サガル、貴方の勇気には感心したわ」
「いや、さっき馬鹿呼ばわりされたばっかりなんだけど…」

少女の手のひら返しの思わず突っ込みを入れた山崎だが、気にせず少女は話を続ける。

「あのヤミーは強力よ、このままでは私たちは二人ともやられてしまうわ」

手に持った板状の物を山崎の腰に近づける少女、するとその板状の物が光りだした。
光と共に板の上層部を覆っていた物が弾けとび、オーズドライバーが山崎の腰に巻きついた。

「うわっ、何だこれは」
「そ、それは、封印の…」

突然、腰に訳の解らないベルトが巻かれたのを見た山崎と、そのベルトを見たカマキリヤミーは驚きの声をあげた。

「ふっふっふ、私が持っていたのはコアメダルだけじゃ無かったのよ」
「おい、これは一体…」
「サガル、私たちが生き残るには奴を倒すしかないわ」

山崎の疑問を意に介さず少女は山崎が拾った物を含む三枚のメダルを、山崎に手渡す。

「メダルが三枚、此処に嵌めこむのよ。 そうすれば力が手に入るわ」
「力が…?」
「乗せられるな!? その力を使えばただでは済まないぞ!!」

少女に言われるがままメダルを嵌めようとした山崎だが、カマキリヤミーの静止の声を聞いて手を止めてしまう。

「おい、あのカマキリ野郎が滅茶苦茶焦った声で止めたぞ!? このメダルってそんなにヤバイのか?」
「多少のリスクが何よ、このまま私と共倒れをしたいの?」
「やっぱりリスクがあるんじゃねーかよ!?」
「早くしなさい、サガル! 変身するのよ!!」
「止せーーーーーー!?」





攘夷浪士を追っていたら何故か怪人と戦う嵌めになり、終いには助けた少女に変身しろと命令される。
何で俺がこんな目に遭うんだと現実逃避しかけた山崎だが、ふと昨晩に聞いた火野の言葉を思い出す。
そこで山崎は覚悟を決めて、少女に向かって意味有りげな笑みを浮かべた。

「な、何なのよ…」
「いや、ちょっとした事を思い出してね」

山崎は自分が今朝拾った赤いメダルを天高く弾き、それを再びキャッチする。

「楽して助かる命が無いのは何処も一緒か…、確かにその通りかもな!!」

その言葉とともに山崎は、ベルトのバックル部にそれぞれ鷹・虎・飛蝗の意匠をした3枚のメダルを嵌めこむ。
ベルトが嵌めこまれたバックル部分、オーズテドラルが斜めに傾いた。

「これを使いなさい」

少女が駆け寄りベルトの腰部分に接続されていた円形の物体、オースキャナーを山崎に渡す。
山崎はそのオースキャナーを手に持ち、3枚のメダルの上をなぞる様に滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


高らかな金属音が鳴り響き、山崎は自然とこう呟いた。

「変身っ」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。


何処からか聞こえてきた歌とともに、山崎の体が光に包まれる。
そして次の瞬間、山崎の姿は「仮面ライダーOOO」へと変わっていた。





「何だ、あの歌は!? タカ、トラ、バッタ、って一体…」
「歌は気にしなくていいわ、それはオーズ。 それならあのヤミーに勝てるわ」
「気にするなって言っても…、うわ。 何か体も変わっている!?」

山崎は突然聞こえてきた歌や、自分の姿が変わっている事に驚いていた。
頭部は赤い鳥の紋様に緑の複眼が、上半身は黄色く腕に虎の爪のような物が備わり、下半身は緑色。
胸には上から腰に嵌めたメダルと同じように、鷹・虎・飛蝗が描かれている。

「くっそー、コアメダルを渡せーーー!!」
「うわぁ!?」

その間にカマキリヤミーが変身した山崎、オーズに向かって攻めかかってきた。
カマキリヤミーが腕にある鎌で襲い掛かってくるのを見た山崎は、咄嗟にその鎌を振りおろす腕を受け止めた。

「へっ?」
「くっそーー!!」

先ほどまでの自分ならあっさり吹き飛ばされている筈だったが、今の山崎は余裕でヤミーの力を受け止める事が出来る。
そのまま山崎はヤミーに対して、自分の腕に付いている虎の爪のような物で斬りかかり反撃を与えた。

「おおー、スゲー! 力が溢れてきた!!」

山崎は今までのお返しとばかりに飛び掛り、連続で蹴りを浴びせていく。

「ぐはっ!?」

その攻撃に思わず蹲るカマキリヤミーだったが、まだ余力が有るらしく山崎に腕の鎌で斬りかかってきた。

「図に乗るなーーー!!」
「だーーっ!?」

カマキリヤミーの猛攻にたじろぐ山崎、それを見た少女はもう一枚のメダルを取り出した。

「サガル、これを使いなさい」
「えっ?」

山崎に緑色のメダルを投げ渡す少女、それを受け取った山崎は虎のメダルと交換して再びオースキャナーを滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"タカッ!"、"カマキリッ!"、"バッタッーー!!"。


また例の歌が響き渡り、山崎の体を光が包んでいく。
そして光が止むと山崎の姿は腕の虎のような爪が無くなり、変わりにカマキリヤミーと同じような緑色の鎌が備わっていた。

「ええーーー、また姿が変わったーーー!!」
「まだメダルかあったのか!? くそっ、コアメダルを渡せーー!!」

またカマキリヤミーが鎌で山崎に襲い掛かってくる、しかし山崎は逆に自分の手に備わる鎌でカマキリヤミーを切り裂いていく。
カマキリヤミーが切り裂かれていき、それに合わせて傷口から灰色のメダルが落ちていく。

「せいっ、せいっ!」
「くっ…」

山崎の猛攻に倒れるカマキリヤミー、そこで山崎は止めを刺そうと腕の鎌に力を溜めていく。
そしてそのままカマキリヤミーに飛び掛り、山崎は渾身の一撃を繰り出した

「はーーーー、せいやーーーーーーー!!」
「ぐわぁーーーーーー!?」

その一撃を受けたカマキリヤミーは、爆発して自分の体を構成していたメダルがばら撒かれた。






「えっ、あのカマキリ野郎はメダルで出来ていたのか? …ていうか正当防衛とは言え、天人を殺害しちゃったよーー、俺!?」

もしあの天人が何らかの大物だったら、確実に外交問題に発展してしまう。
そうなったら自分は確実責任を取らなければならず、もしかしたら自分だけでなく真選組全体に責任が掛かるかもしれない。

「どうすんの、俺!? どうするーーーーーー!!」
「……やっぱり唯の馬鹿ね」

最悪の想像に悶える山崎の狂態を眺めて、少女は辛辣な発言をするのであった。



[25341] 欲望とスイーツと元同僚
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/01/22 14:26
「……ていうか、もうどうしよもなくね!? 仕事ミスっただけなら兎も角、天人まで殺害しちゃってもう腹でも切るしか…」
「何時までやっているのよ。 いい加減、それを返して貰うわよ」

前話からずっと悶えていた山崎からベルトを外す少女、その瞬間に山崎の姿は普段の物に戻った。
これが切欠に混乱状態が治った山崎は、少女に今までの事態に付いて質問攻めにする。

「ちょ、ちょっと待って! 教えてくれ、このベルトは一体何なんだ、それにあの天人は…?」
「ふっふっふ、まあまあの量ね。 サガル、ちょっと拾うのは手伝ってくれない?」

しかし山崎の問い掛けは華麗にスルーされ、少女はカマキリヤミーから出たメダルを集めだす。

「おい、人の話を聞けよ!」

少女の対応に流石に怒りを覚えた山崎は灰色のメダル、セルメダルを拾い続けている少女に近付いた。
しかし、次の瞬間……。

"キキィーーーーー!"。

「うわっ、何だ!?」
「待て、それは私の…」

山崎達の頭上から赤と銀の体を持つ、鳥のような何かが複数舞い降りきた。
明らかに人の手によって造られた鳥モドキ、タカロイドと呼ばれる人工のそれは地面に散らばったセルメダルを拾っていく。

「くそっ、返しなさい!」

セルメダルを取り返そうと少女は追いすがるが、時既に遅く全てのタカロイドは天高く飛び上がっていった。

「何なのよ、あれは!?」
「知るか、俺もあんなのは初めて見たよ!? ていうかそろそろ事情を説明してくれ!!」

殆どのセルメダルを持っていかれてしまい、少女は山崎に怒りをぶつける。
理不尽な怒りをぶつけられた山崎の方も、ついに堪忍袋の尾が切れたらしく喧嘩腰に応じた。








鴻上ファウンデーション本社ビルの一室、そこに先ほどのタカロイド達が集めたセルメダルが積み上げられていた。
役目を終えたタカロイド達は自分の体を折りたたんでいき、缶のような状態に変形していく。
その様子を眺めていた一人の男性は、喜びを笑みに浮かべながら呟いた。

「たった一日でこれ程のセルメダルが集まるとは…。やはり私のライフワークには必要なのかもしれないね、グリードと…、オーズが」










とある病院内のベンチ、そこに包帯まみれの二人の男が腰掛けていた。
彼らは昨晩、警備員に扮して美術館を狙う計画を実行した攘夷浪士達であった。

「くそっ!? 折角一儲け出来ると思ったのに…、何が天人をぶっ潰せる力が手に入るだ!?」
「まあ、あの化物の力は凄かったけどね…」

この攘夷浪士達は先日、とある筋からあの美術館に天人を倒せるくらい凄まじい力が眠っているという情報を聞きつけたのだ。
その話を信じた彼らはその凄まじい力を手に入れようとした結果、見事グリードの封印を解く羽目になったのである。
結局グリードとそれを止めるために現れた鴻上の私兵との戦いに巻き込まれてしまい、このように病院送りになってしまった。

「はー、やっぱり田舎に帰った方がよかったかな?」
「何言ってる! あいつらが現れたおかげで、俺たち武士は貧乏暮らしを強いられるようになったのだぞ!!」

どうやら彼らは、天人襲来の煽りを受けて職を失った武士であるらしい。
気落ちする仲間を励ます攘夷浪士の片割れは、紙を丸めた物を取り出して広げた。

「見ろ、これは天人が利用する現金輸送車のルートだ。 これを襲えば当面の軍資金は稼げるぞ」
「ええー、もう止めとこうぜー!」

先の悪巧みの結果、大怪我を負ってしまった事で及び腰になっている片割れ。

「馬鹿、この金さえ手に入れれば暫くは遊んで暮らせるんだぞ!」
「えっ、攘夷の軍資金にするんじゃ?」
「うるさいぞ、それはそれだ!? 兎に角金だ、金さ手に入れれば何でも…」

まだ見ぬ金に胸躍らせる相棒を冷ややかに見えていた片割れは、ふと何かの気配を感じた。
その方向に振り向いた彼は、自分たちを見ている存在を認識して悲鳴を挙げた。

「お、お前は…、あの時の!?」
「うん、何だ…、はっ!?」

攘夷浪士たちの前に昨晩に目撃した緑色の怪人、ウヴァが立っていた。

「その欲望、使わせて貰うぞ」
「はわわわわ…」

セルメダルを取り出すウヴァ、それ同時に先ほどまで襲撃の計画を経てていた攘夷浪士の額に長方形の穴が出来る。
まるで自販機の投入口のような黒い穴に、ウヴァは手に持ったセルメダルを入れるのであった。

「ひ、ひいいいい!?」

セルメダルを入れられた男の体がから、何かが這い出てきた…。











「ふーん、この紙に書かれた料理が出てくるのね」

とあるファミレスの店内、そこに山崎と少女が向かい合わせに座っていた。

(メニューの見方も解らないとは、まさか世間知らず箱入り娘ってオチじゃ無いよな?)

自分の名をメズールと名乗った少女の要望、落ち着いた所で話をしたいと言う希望を聞いて近くのファミレスに連れて来た山崎。
しかしメズールはファミレスのシステム自体理解していなかったらしく、山崎は今まで注文の仕方についてレクチャーをしていた所であった。

「やっぱりずいぶんと変わったのね、人間の世界は…」

(人間の世界だと!?やっぱりメズールは天人なのか…)

注文を終えたメズールの呟きを聞き、山崎は自分の推測に確信を深めた。
傍目には美しい少女にしか見えないメズールだが、山崎はある光景を目撃して彼女が人間では無いと考えたのである。

(しかし、メダルを吸収する天人なんて聞いた事無いぞ?)

山崎は先ほど、拾ったセルメダルを自分の体に吸収するメズールの姿を目撃している。
メズールが体にメダルを取り込む瞬間、一瞬だけ彼女の全身から沢山のメダルが見えたのだ。

(さっき襲ってきた怪人も体がメダルでできていたよな、だったらメズールとあいつは同じ種族なのか?)

物珍しそうに周りを見渡すメズールを眺めながら、山崎は自分の疑問を思い切ってぶつけてみた。

「なあ、メズール。 もしかしてお前とさっきのカマキリ野郎は同じ種族なのか?」
「はぁ、冗談じゃ無いわ!? 私とあんなヤミー如きを同類扱いしないで欲しいわ!!」

山崎の質問が気に触ったのか、メズールは極めて強い口調で否定した。

「いいわ、説明してあげるからよき聞きなさい…」

そこからメズールの口から出た話に、山崎は仰天するのであった。





グリード、800年前に封印された欲望の化身。
グリード達は昨晩、何者かよって封印が解かれて目覚めたばかりである。
グリードは人の欲望を元に、ヤミーと呼ばれる怪物を生み出す。
先ほどのカマキリ野郎も、グリードによって創られたヤミーである。
山崎が変身したあれは、グリード達を封印したオーズと呼ばれる者。

「それで私たちグリードは、コア…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? 少し、頭を整理させてくれないか?」

メズールの口から紡ぎ出された荒唐無稽な話を理解するため、山崎は一時的に話を止めた。

(800年前に封印されたって、じゃあこの子はこの見た目で800歳以上!? いや驚く事はそこじゃ無いだろ… )

彼女の話が本当ならグリード達は、昨晩山崎が夜勤していた美術館から目覚めた事になる。

(えっ、あの破壊跡はグリードって連中がやったのか? でも封印ってのを解いた奴も居るらしいしな、この話が彼女の与太話って可能性も有るし…)

普通ならこんなうそ臭いなんて笑い飛ばすだけだろう、しかし少なくとも山崎が変身したオーズの力は本物だった。
とりあえず山崎は、グリードの話が真実か確かめるためにメズールへ質問を投げかける。

「ちょっと質問だけど、メズールとあのカマキリ野郎の姿が違うのはどうしてなんだ。 君はどう見ても人間にしか見えないんだが?」
「私のグリードとしての本当の姿は別にあるわ、これはあくまで仮の体よ」
「じゃ、じゃあその本当の姿ってやつを見てみたんだけど?」

ここでメズールがあのヤミーのように変化すれば、話の信憑性が高まると考えて山崎はメズールに質問する。
しかしメズールは不機嫌そうに山崎の要求を拒否した。

「…無理よ、今の私はこの姿以外になれないわ」
「えっ、じゃあやっぱり…」

何故できないのか追求しようとした山崎だが、丁度その時にファミレスの店員が来てしまい話の腰を折られてしまう。

「コーヒーとスペシャルジャンボパフェをお持ちしました」
「へっ、スペシャルジャンボパフェ!?」

店員が持ってきた優に5人分は有りそうな巨大なパフェを見て驚く山崎、それを尻目にメズールはパフェを食べ始めた。

「おいーっ!? 好きなものを頼んでいいとは言ったけど、流石にそれは無いだろ!!」
「あら、中々イケルわね」

山崎の抗議を無視して、メズールは黙々とパフェを食べながら説明を再開した。

「グリードの体は核となる9枚のコアメダルと、セルメダルで構成されているわ。 ちなみにヤミーにはコアメダルは無い、あいつらの体は全てセルメダルだけで作られているの」

コアメダルが棒でセルメダルがアイスの部分、ヤミーは棒が無いアイスだろうとメズールはパフェに乗っていた棒アイスを食べながら解説した。

「コアメダルって、さっきのやつが言ってたあれか?」

コアメダル、コアメダルと叫びながら襲ってきたヤミーを思い出す山崎、メズールはその問いに同意をした。

「ええ、そうよ。 あいつは私が他のグリードから奪ったコアメダルを取り返し来たのだから」
「ちょっと待て、グリードはお前の仲間だろ!? お前はそいつらから、大事なコアメダルってのを奪ったのかよ?」
「仕方ないでしょ、そうしないと私のコアが奪われていたかもしれないのだから」

山崎の突っ込みに、悪びれる様子も無くシレッと答えるメズール。
その発言に脱力しそうになった山崎だが、よくよく彼女の発言を思い出し気になる点を発見した。

「……ん、奪われていたかもってどういう事だ?」
「普通、封印が解かれた時は9枚のコアメダルが揃っている筈だったわ。 けど目覚めたとき……、私のコアメダルは一枚しか無かったのよ」

9枚中1枚という事は、メズールの体は本来の10%強しか残ってない事になる。

「それじゃあ、元の姿に戻れないって言うのは…」
「コアメダル一枚じゃ、この姿を維持するのが精一杯って事よ。 今は体を構成するセルメダルさえも不足しているから、正直この姿で居るのもキツイわね」

そう言い苦しそうな表情を見せるメズール、彼女の消耗を表すかのように体を構成するメダルが一瞬ぶれて見えた。

「だ、大丈夫か…」

メズールの弱った姿を見た山崎は、彼女の状態を心配しようとした。
しかしその時、メズールは何かを感じたかのように顔をあげる。

「ヤミーの気配、これはウヴァの物ね…」

そう言い残し、メズールは席を立ってファミレスを出ていく。

「おい、ちょっと待てよ!」

慌ててメズールを追いかけようとする山崎だが、誰かが後ろに掴まれて止められる。

「お客様、お勘定!!」
「……あっ!?」












「きゃーーーーーー!!」

メズールの後を追ってあるビルに入った山崎は、逃げ惑う人達の中心で暴れる白い怪人を目撃する。
その怪人はATM機を力付くで抉じ開け、中にある現金を奪っていた。

「あ、あれは何なんだ?」
「あれは白ヤミー、産まれたてのヤミーよ」

白い包帯が体中が巻かれていてミイラ男のように見える白ヤミーは、手に入れた現金を体に吸収していく。

「あいつもグリードが産み出したって言うのか…」
「そうよ、あれば棒の無いアイスって訳」

眼の前でどんどんと金を吸収する白ヤミーを見て、山崎はメズールに手を出した。

「ん、何よ?」
「ベルトを貸してくれ、あいつを倒さないと!」

ヤミーは人の力ではとても倒せない事を先の戦いで嫌と言うほど知った山崎は、メズールからまたオーズのベルトを借りようとする

「駄目、もう少し待つのよ。 あのヤミーはまだ成長するわ」
「成長って…」

山崎を制止したメズールは、ヤミーの習性に説明をする。

「ヤミーは餌を取れば取るほど成長して、内部に沢山のセルメダルを貯めるのよ」
「餌って…、一体何なんだ?」

ヤミーを成長させる餌が何か尋ねた山崎に、メズールは哀れみを込めたように答えた。

「人の欲望。ヤミーは人間の欲望を糧に成長するわ」
「嘘だろ、あれが欲望で…」
「どうやら時代は変わっても、人の愚かさは何も変わってないようね。 あーあ、可哀想」

人間の欲望が、あんな化物を産み出した事に驚愕する山崎。
その時、現金を吸収し続けた白ヤミーが何か悶えるように震えだした。
そして次の瞬間、白ヤミーの体から巨大な昆虫のような物が産み出される。

「うわっ、気色悪!?」
「ふっふっふ、中々の大物ね」

少なくとも人型であったカマキリヤミーと違い、姿が昆虫そのままの産まれたヤミーは山崎に生理的嫌悪を抱かせる。
白ヤミーから成長した巨大な昆虫形ヤミー、オトシブミヤミーが六つの足を動かして移動を開始した。











オトシブミヤミーは、さっきまで自分が居たビルに六つの足でよじ登っていく。
しかも壁を食べながら登っていき、それに合わせてオトシブミヤミーはどんどんと成長していった。

「おい、いい加減あれを止めないと」

ビルが破壊されていき人々が逃げ惑っている様子に、山崎はヤミーに対して怒りを覚えていた。
その姿を眺めていたメズールは、不思議そうに尋ねる。

「サガル、どうして貴方は変身してあれと戦いたいの? 別に貴方には何も関係ないでしょ」
「関係ある、何故なら俺は真選組の一員だ! 江戸の市民を守るのが俺の仕事なんだ!!」
「……やっぱり、ただの馬鹿のようね」
「また馬鹿呼ばわりかよ!? え、今良い台詞言ったよね、俺!!」

山崎の必死の抗議を無視して、メズールはオーズドライバーを取り出す。

「サガル、私と取引をしましょう。 さっき、私のメダルが不足している事は話したわよね」
「ああ、聞いたけど…」
「貴方はオーズの力で真選組とやらの仕事をする、その代わり私のメダル集めに協力して貰うわ」

そう言って、メズールは山崎の目の前にオーズドライバーを見せた。
メズールの取引内容に一瞬を躊躇いを見せた山崎だが、周りから聞こえてくる悲鳴に後押しされてドライバーをもぎ取る。

「契約成立ね、しっかり稼いでくるのよ」
「早く、メダルを出せ!」

メズールが投げ渡した3枚のコアメダルを受け取り、山崎はオーズドライバーを身に着ける。
メダルを全て嵌めこみ、腰からオーズキャナーを握り3枚のメダルの上を滑らした。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


「変身っ!!」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。

例の歌が響き渡り、山崎はオーズへと変身を果たした。












「…と意気込んで見たものの、どうやってあそこまで登ろうか」

ビルを登りきったオトシブミヤミーは、屋上で派手に暴れてた。
悩む山崎の前に一台のバイクが止まり、バイクの搭乗者が何かを持ってこちらに近付いてくる。

「あれ、あいつは何処かで見た事あるような…」

どうもバイクに乗ってきた男に見覚えがあった山崎、そして男が自分の前に立った時にそれが誰かを思い出した。

「あ、お前は後藤じゃないか!? 数年前に真選組を止めたお前が、どうして此処に?」
「……ある方からの誕生日プレゼントだ、受け取れ」

山崎の質問に無視した後藤は、何かに耐えるように手に持った箱を開いた。
その中には奇妙な形をした大剣、メダジャリバーと数枚のセルメダルが入っている。

「えっ、これを貰って良いのか?」

メダジャリバーを手に取って繁々と眺める山崎。

「メダルをあの自販機に使え」

そう言って後藤は箱の残っていたセルメダルを手渡し、近くに設置してあった自販機を指さした。

「おい、この状況が解っているのか!? 暢気にジュースなんて飲んでる暇無いだろうが!!」
「いいからさっさと行け、山崎!!」

後藤の強い言葉に渋々と従い、山崎は自販機にメダルを投入した。
その次の瞬間、自販機が変形を初めてバイクの形なってしまう。

「はぁーーーっ!? 自販機がバイクになっちまったよ!!」

その様子を見ていたメズールは、後藤がセルメダルを使っている事を疑問を抱いていた。

(何故、人間がメダルを…?)

山崎は眼の前に現れたバイク、ライドベンダーにとりあえず跨ってみた。
その時、オトシブミヤミーによって破壊されたビルの破片が山崎の方に落ちてきてしまう。

「ヤバイ、乗れ! メズール!!」

"ブルルルルルルーーーー!!"。

慌ててメズールも乗せた山崎は、ライドベンダーを急発進させて何とか回避する。

「これも贈り物だそうだ」

後藤は自分の乗ってきたライドベンダーを自販機の形態に戻し、セルメダルを入れてボタンを押す。
すると自販機の取り口から大量の缶が零れ落ちてくる、後藤はその一つを手に取った。

"タコカン!"。

後藤の手に持った缶が変形して、タコのような形になり空を舞い始めた。
他の缶達もそれに合わせてタコの形態、タコロイドとなっていく。

「えっ、缶がタコになった!?」

数十、数百に昇るであろうタコロイド達が、上空に飛び上がっていく。
タコロイド達はビルの方に密集して集まっていき、最終的にビルの屋上まで道が出来てしまった。

「こ、これを登ればいいって事なのか?」
「山崎、剣の方にもメダルを入れておけ」

よく見ればメダジャリバーにメダルの投入口があるが、先を急いだ山崎はそのままオトシブミヤミーへ向かう事を決める。

「サンキュー、後藤! 何だか解らないけど、助かったぜ!!」

そういい残し山崎は、タコロイドで出来た道をライドベンダーで駆け上がっていった。





「おらーーーーーー!!」

ビルの屋上に辿り着いた山崎は取りあえず、すれ違い様にメダジャリバーでオトシブミヤミーを切り裂く。

「ギギャーーーーーーー!?」

苦痛の声を漏らし傷口からセルメダルを放出するオトシブミヤミーに、ライドベンダーを乗り捨てた山崎は向き合った。
ちなみに山崎と一緒に屋上に上がったメズールは、せっせと落ちたセルメダルを回収している。

「うわっ、デッケー!? もうこれって怪獣じゃねえか?」

成長を続けたオトシブミヤミー、その大きさは優に山崎の何倍も大きさになっていた
山崎への報復にオトシブミヤミーがその巨体を生かして、山崎に殴りかかってくる。

「ガーーーーーー!!」
「うわぁーーーーー!?」

たまらず吹き飛ばされる山崎、それを見たメズールは山崎に蟷螂のコアメダルを投げ渡す。

「何やっているのよ、早く倒しなさい!」
「無茶言うなよ!?」

山崎は受け取った蟷螂のコアメダルを虎の物と交換する。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"タカッ!"、"カマキリッ!"、"バッタッーー!!"。


「やーーーーーーーー!!」

コアメダルを交換する事で備わった両腕の鎌で、山崎はオトシブミヤミーを切り裂いていく。

「おし、イケルぞ!!」
「グガーーーーーーーーーーー!!」
「 …てっ、ああああーーーーー!?」

勝利を確信して思わずガッツポーズを取ってしまった山崎は、その隙を付かれてビルの屋上から弾き飛ばされてしまう。

「サガルっ!!」
「ぎゃーーーーー、落ちてるーーーーーー!!」

地上へと一直線に落ちていく山崎の脳裏に、自分の禄でもない人生が走馬灯のように走る。
最早これまでかと諦めかけたが、来るべき衝撃が幾ら待っても来ない。

"タコッ、タコッ!!"。
「…へ、助かったのか?」

タコロイド達が連なってロープ上に固まり、地面にスレスレで山崎を捕まえる事に成功したのだ。
そのままタコロイド達に引き上げられ、どうにか山崎は屋上に戻る。






「こいつめ、よくもやったなーーーー!!」

殺されかけた恨みを晴らすかのように、メダジャリバーでオトシブミヤミーを切り裂いていく山崎。

「ギギャーーーーーーー!?」

それが効いたのか、悲鳴をあげながらビルの屋上から地上へ逃げるオトシブミヤミー。

「逃がすかよ! 乗れ、メズール!!」

オトシブミヤミーを逃すまいと、山崎はメズールを後ろに乗せてライドベンダーを走らせた。
またタコロイドの道を通って地上に戻り、オトシブミヤミーと対峙した山崎はふと後藤の言葉を思い出す。

「あ、そういえばメダルを入れるんだっけな」
「ちょっと、勝手にメダルを使わないでくれる!?」

メズールの抗議を聞き流して、山崎はメダジャリバーに3枚のセルメダルを投入する。
チャリチャリと小気味良い金属音を鳴らしながら入ったセルメダルが、メダジャリバーの透明になっている腹部分に見えた。

「うぉーーーーーーー!!」

山崎はライドベンダーからメズールを降ろした山崎は、そのままオトシブミヤミーへ突っ込んで行く。
股下にメダジャリバーを突き立てながらライドベンダーを走らせていき、オトシブミヤミーを切り裂く山崎。


「ガァーーーーーーーーーー!?」
「ついでにこれだ!!」

山崎はその状態のまま、メダジャリバーの腹に入ったセルメダル上へオーズキャナーで滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"Triple!"、"Scanning Charge!!"。


オトシブミヤミーの股下を潜り抜けた山崎は、方向転換を行って再びオトシブミヤミーの方を向く。
オーズキャナーを滑らした事で何かの力がメダジャリバーに溜まるのを感じた山崎は、それをオトシブミヤミーに振り下ろして開放する。

「せいやーーーーーーーー!!」

メダジャリバーから凄まじい一撃から放たれ、オトシブミヤミーの体を真っ二つに分断する。
オトシブミヤミーは爆散して、その体から大量のセルメダルが落ちてくるのであった。










「一体何なのよ、あれは!? 何故人間がセルメダルを…」
「つ、疲れた…」

戦いの後、憤るメズールの側で山崎はグッタリと倒れていた。

「しかしまたあの鳥モドキに、セルメダルを持ってかれるとはな。 後藤が出したタコの奴と同系等っぽいし、あいつに何か関係があるのか?」

オトシブミヤミーから出たセルメダルの殆どは、カマキリヤミーの時に現れたタカロイド達にまた回収されてしまった。
そのためメズールは、山崎の戦いの最中に回収した僅かなセルメダルしか手に入れられなかったのだ。
後藤の姿も何時の間にか消えていため、結局色々な事情が解らずじまいである。

「まあともかくあのヤミーも居なくなったし、これで一件落着かな?」

無事にヤミーを倒せた事で気が抜けたのか、山崎は穏やかな表情を見せた。
しかしその表情は、彼の背後からかけられた声が原因ですぐに凍り付いてしまう。

「なーにが一件落着なのかな、山崎くーーーん?」
「ふ、副長!?」

明らかに怒りが頂点が達している様子の土方に、山崎は金縛りにあったように硬直してしまうのだった。


あとがき

思ったより早く二話ができたので載せてみました、
余り銀魂らしい雰囲気にならなくてすいません。

そういえば山崎の住居とかって、銀魂の公式で明言されてましたっけ?
その情報によって、メズール様の住処が変わってくるんで…



[25341] ネコとチャイナと記憶喪失(前半)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/02/25 22:08

「あれ、山崎じゃねえか。 なんだ、死んだんじゃないのかよ」
「おおー、山崎!? お前、一体今まで何処に行ってたんだ?」
「局長!? それに沖田隊長まで…」

怒り状態の土方を直視して硬直状態に陥ってしまっていた山崎だが、聞き覚えの有る声を聞く事で何とか最起動を果たした。
状況を把握するために周りを見渡してみれば、自分の上司である近藤勲や沖田総悟だけでなく真選組の他の連中達も集まっている。

よくよく考えてみればビルが半壊するほどの騒ぎに、自分たち真選組が出動しない筈は無い。
恐らく事件の知らせを受けて辿り着いた現場で、アホ面下げて立っていた山崎を見付けたのだろう。

「山崎くーん、こんな所でボケーっとして任務をどうしたんだい? 君の任務先の美術館が昨日の晩、何故か崩壊しちゃったらしいんだけどなー!!」
「ふ、副長!? それは…、その…」

穏やかな口調で山崎に話しかける土方、勿論彼の目は全く笑っていない。
あの美術館がグリードと呼ばれる怪物に破壊されたと説明するのは簡単であるのだが、とある事情で話す事ができず山崎は土方の問い掛けに口篭ってしまった。

(どうする…!? 仮に美術館の事を正直に話そうとしたら、俺がグリードが暴れている時に暢気に眠っていた事も説明しなければならないぞ!! )

そんな事が副長に知れたら確実に粛清される、そう考えた山崎は必死に生き残る道を考えていた。

「ふ、副長。 これには色々と事情が…てっ、うわっ!?」」

とりあえず言い訳を始めようとした山崎に対して、土方は問答無用で斬りかかってきた。
咄嗟に反応して奇跡的に死の危険から逃れた山崎は、堪らず土方に抗議の声をあげる。

「ちょ、ちょっと待って下さい!?」
「聞く耳持たん! 理由はどうであろうと、与えられた任務を放りだす奴は真選組に必要ない!!」

そう言って土方は冗談では無く本気で山崎を殺ろうと刀を向ける、しかし絶体絶命のピンチへ陥った山崎に救いの手が差し伸べられた。

「待ちなさい、今サガルを死んだらちょっと困るわ。 殺すならもう少し後にしてくれない?」
「おいっ!? 後でなら俺は殺されてもいいのかよ!!」
「うんっ、何だこのガキは?」

ここで山崎が死ねばメダル集めに支障が出ると考えたメズールは、仕方なく土方の粛清を静止する。
メズールからの余りの扱いに抗議の声をあげた山崎だがその瞬間、状況を打開する奇策を思いつくのだった。











「…つまりお前はあのガキを助けるために、仕方なく任務を放棄したと?」
「そうなんです、副長! 昨晩あの美術館で怪物に追われるメズールを見付けましてね、流石に見捨てられなくて一緒に逃げていたんですよ。」

真選組局内の取調室に場所を移し、山崎は土方に先ほどでっち上げた嘘八百を並べ立てた。

「その怪物は滅茶苦茶強くってあっという間に美術館を破壊しましてね、とても立ち向かえる相手じゃ無かったんでメズールと二人で必死に逃げましたよ。もう連絡を入れる暇も無いくらいに…」
「怪物ね…、天人か何かを見間違えたんじゃねえのか? それにそのメズールとかって言うガキは、何故怪物とやらに追われていたんだ?」

山崎の胡散臭い説明に疑いの目を向ける土方は、当然といえば当然の質問を投げかける。

「そ、それは解りません。 先ほど説明した通りメズールは…」
「記憶喪失ね…。 本当なんだろうな、それは?」

何故メズールが記憶喪失という事になっているのか、時は少し前に遡る。





「頼む、メズール! 俺とお前は昨日からずっと一緒に居るって設定で、話を合わせてくれないか?」
「はぁっ、何でそんな事を?」
「しっ、声が大きい!?」

先ほど土方に斬られかかった所を助けられた山崎は、少し二人で話が有ると言いいメズールと二人で少し離れた場所に移動していた。
こちらの様子をチラチラと見ている土方達を気にしながら、山崎は回りに聞こえないように小さな声で話を進める。

「ちょっと事情があって、俺は昨晩からお前と一緒にヤミーから逃げてた事にしたいんだよ。もしお前がここで話を合わせてくれなかったら、俺は副長に殺されちまうんだ!? それでもいいのか?」

中身は兎も角、見た目はか弱い女性にしか見えないメズールを助けるために任務を放棄したという事にすれば、土方を誤魔化せるかもしれない。
そう考えた山崎は最終的に自分の命を盾にして、メズールへ必死に協力を要求した。

「……し、仕方ないわね、特別に協力してあげるわよ」
「よーし、これで生き残れる希望が見えたぞ! サンキュー、メズール!!」

自分の命が掛かっている山崎の異様な気迫に押されて、メズールは渋々と協力を承諾する。
しかしメズールは協力の引き換えに、山崎に一つの条件を付けた。

「その代わり私もサガルに条件が有るわ、他の人間にはグリードやメダルの事を話さないで欲しいの」
「へっ、それは何でだ?」
「人間にメダル探しを邪魔されたくないのよ」

メダル探しを最優先に行いたいメズールは、障害となり得る要因を極力排除したいらしい。
けどそうなるとメズールの事をどう説明すればいいのか、悩んだ山崎に有る結論が導き出されるのであった。







(…で怪物に襲われた時のショックで記憶喪失になった事にすれば、何を聞かれても知らぬ存ぜぬで通せるだろうと思ったんだが。 取調べでボロ出してないだろうな、メズールの奴。)

屯所に移動した山崎とメズールは別々の場所に移され、山崎は土方に事情を説明しているという状況になった。
少なくとも土方は自分の説明を全く信じてなさそうなため、正直メズールの証言が鍵になりそうである。

「副長ー、まだ俺の話を疑ってるんですか?」
「当たり前だ、記憶喪失なんて設定を出されて信じれるわけ無いだろ!? それにあんだけ堂々と打ち合わせをされたしな…」

土方は此処に来る前に山崎とメズールが自分達から離れて、ヒソヒソと何やら話をしていた所を目撃しているのである。
その後に記憶喪失で何も解らないとか言われても、信じられる筈も無い。
そうこうしている内に山崎の居る取調室の扉が開かれ、メズールから話を聞いていた局員が現れた。

「副長、山崎と一緒に居た少女から話を聞き終わりました。」
「うん、ご苦労。 それで何か解ったなのか?」

土方はメズールから山崎の出鱈目話を否定できる話が出た事を期待して、取調べの結果を尋ねる。
しかし局員の口から出た報告に、彼は仰天してしまった。

「はい、どうやらあの子は本当に記憶が失われているようでした」
「はぁっ!? それは本当か?」

土方はメズールが言う記憶喪失は、山崎がサボりを誤魔化すために口裏を合わせた戯言だと考えていため驚きを露わにする。
局員は何故メズールが記憶喪失と判断したかについて説明し始めた。

「はい、彼女は記憶喪失で間違い有りません! 何せあの子はTVに写っている人間と素で話そうとしたんですよ、しかもこんな小さな箱に人間が入るなんてと本気で不思議がってましたし!!」
「それ、記憶喪失とちょっと違わなくね!? どっちかというと、大昔の人間が現代にタイムスリップした時の反応じゃねぇか!!」
(副長、正解…)

800年前から封印されていたグリードの一人であるメズールは、当然TVなんて物は知る筈も無い。
副長の言った的確な例えに、山崎は思わず心の中で正解と呟いてしまった。
その時、ふと局員の語ったメズールの報告の内容に山崎は疑問を感じる。

「あれ、何でメズールがTVなんて見てるんだ。 取調室にTVなんて置いてないだろう?」
「女の子に取調室は可哀想だったので、彼女には応接室で話を聞きました。」
「ちょっと待て!? 何で身内の俺が取調室で、素性も碌に解ってないメズールが応接室なんだよ!!」

メズールも自分と同じように取調室で話を聞かれていると思っていた山崎は、待遇の違いに思わず怒りの声を出すのであった。












事情の説明を終えた山崎とメズールは、普段局員達が集まる大部屋に来ていた。
部屋内には真選組の中核メンバーも揃っている。

「大丈夫だったか、メズール?」
「別に平気よ。 あのケーキとやらも美味しかったしね」
「おーい!? 俺は取調室で、メズールは応接室でTVを見ながらおやつタイムかよ! あいつら、どんだけ女に甘いんだ!!」

メズールと再会した山崎は、自分とメズールの扱いが余り異なっていた事に改めて憤りを覚える。
そんな中で山崎の無事を心配していた近藤が慰労の言葉を告げた。

「いやー、お前も災難だったな、山崎! まさか例の怪物にお前も襲われたとはな…」
「局長!? 例の怪物って、一体どういう事ですか?」

近藤が例の怪物、グリードやヤミー達の事を認知しているように言った事に山崎は驚く。
そこで土方が山崎に対して、近藤の発言を補足して説明した。

「目撃証言があったんだよ。 例の美術館が怪物に破壊されたとか、怪物が少女を追い回しているとか、怪物がビルによじ登っているとかな。」
「ああー、そういう事でしたか…」

あれだけ派手にグリードやヤミー達が暴れたのだ、それを誰かに目撃されていてもおかしくない。

「しかし残念だったな、怪物に追われてたって言うその女の子が何も覚えてなくて。 記憶喪失なんかになってなければ、例の怪物の事を何か知ってたかもしれないのにな… 」

真選組は美術館やビルを襲った怪物について調査を行っていたのだが、まだその正体の糸口さえも掴めていない。
その人間離れしているらしい姿から恐らく何処かの星の天人だと考えて当たっても見たが、例の怪物の特徴と一致した天人の情報は何も見付けられなかった。

「近藤さん、安心して下さい。 俺がすぐにその雌狐の口を割らせて見せますわ」
「お、おい、総悟!? お前は一体何を…」

沖田が腰に帯びた刀を抜き放ってメズールの前に突き立てる、その行動を見た近藤は慌てて沖田の行動を真意を尋ねた。

「どーも俺は、人間を見下したような眼をしたこの女が気に食わねーんですよ。 なーに、ちょっと躾けてやるだけ…」
「嫌っ!?」
「へっ…、ぐはっ!?」

どうやらメズールの態度がお気に召さなかった沖田は、サドっちくな笑みを浮かべながら彼女を調教しようと試みる。
しかし身の危険を感じたメズールが掌から強烈な水流を放て、その直撃を受けた沖田は吹き飛ばされて気絶してしまう。
こうしてあえなく、沖田のメズールへの調教は失敗するのであった。

「総悟ーーー!? えっ、何この子、今手から何か出したよね?」
「何だあのガキは!? カメハメ波でも使えるっていうのか?」

メズールが放った水流の攻撃に近藤と土方は驚愕して固まってしまう。
彼女がグリードだと知っている山崎は驚きこそ少なかった物の、聞いていた話と違う事についてメズールに問い質した。

「おい、メズール!? あの水鉄砲は何だよ、お前は弱ってたんじゃなかったのか?」
「微量ながらメダルを集められたので少し回復したの、あの位の力なら何とか使えるわ」

先のヤミーから放出されたセルメダルの大半をタカロイドに奪われたとはいえ、幾らかの量は確保したのだ。
メズールは集めたメダルを吸収することで今の姿の維持と、先ほどのような水遊びくらいなら可能な程度には回復していた。

「おい!? 一体あれは何なんだ!!」
「解らないわ。 私、記憶喪失だから」
「舐めてるのか、ガキ! 公務執行妨害で豚箱に叩き込んでやろうか!!」

土方の問い掛けにメズールはお決まりのように記憶喪失と言って誤魔化す。
彼女の態度に怒りを覚えた土方は、沖田に対して暴行を加えた罪を利用して脅しを掛けた。

「まあ落ち着け、トシ。 今のは明らかに総悟が悪いと思うぞ。
「くっ、解りましたよ…。 ガキ、本来ならお上に手を出した罪でしょっ引きたい所だが、今回はこの馬鹿に非があるから特別に見逃してやるよ」
「ぐはっ!? 土方…、殺す!!」

近藤に宥められて渋々と引く事になった土方は、さりげなくメズールの水流で気絶していた沖田を踏みつける。
その衝撃で眼を覚ました沖田は、自分を踏みつける人物に対して改めて殺意を深めるのであった。





「…まあ女子供を守るのも真選組の仕事だ。そのせいで任務を放棄したのは問題だが、今回は特別に粛清は勘弁してやる」
「あ、ありがとうございます!!」

怪物の目撃証言やメズールの存在が山崎の作り話に信憑性を持たせた結果、山崎はとうとう鬼の副長からの粛清を逃れる事ができた。
目の前の死の危険から逃れられた山崎は、喜色満面の笑みを浮かべる。

「ただし! 任務を放棄した罰は受けて貰う、詳しい罪状は後で伝えるからとりあえずお前は謹慎でもしてろ!!」
「その記憶喪失の子はどうやらお前に懐いているようだから、お前にはその子の面倒も任せる。 早くその子を家に帰してやるんだぞ」
「り、了解です、局長、副長!!」

近藤は山崎にメズールの世話を申し付ける、彼は見た目は少女でしかないメズールを早く家に帰してやりたいらしい。
800年前から封印されていたメズールに帰る家など有る訳無いのだが、その事を説明する訳にはいかない山崎は何も言えずに承諾するのであった。



あとがき。

早速、週1更新に失敗しました。
しかも前半部分だけですし…。

後半部は2、3日中にあげれるように頑張ります。



[25341] ネコとチャイナと記憶喪失(中篇)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/02/25 22:09

「あーあ、お腹一杯ご飯を食べたいアル…」

とある公園にあるベンチに、チャイナ服を着た少女が座っていた。
少女は空腹を誤魔化すよう手に持った酢昆布をしゃぶってる。

「全く…、銀ちゃんの甲斐性無し!? 幾らか最近収入が無いからって、あのくらいの食事じゃ全然足りないアルよ」

どうやら彼女は食生活に不満を抱いているらしい、もっと満足できる量の食事を取りたいと嘆く少女。
しかし彼女の食べたいという欲望は、欲望の化身であるグリードと接触する原因になってしまった。

「いいね! その欲望を使わせて貰うよ!!」
「うわっ、猫の化け物アル!?」

欲望を嗅ぎ付けてきたグリード、猫化の生物を印象つける姿をしたカザリが少女に近づいていく。
その手にセルメダルを握って…。












「ふーん、本当に人間の世界は変わったのね」

江戸の町を興味深そうに見回しながら歩く少女、メズールは抱いた思いをそのまま口にしていた。
視線を上を向けた彼女の眼には、地球を支配した天人によって建てられたターミナルとやらが映っている。

「天人ね…。 まさか封印されている間に、既に世界が支配されてるとは夢に思わなかったわ」

9枚のコアメダルが揃えて力を取り戻したら人間の世界を欲望の渦で覆おうと考えていた彼女だが、まさか世界がもう人間の手から離れているとは夢にも思っていなかった。
山崎から今の世界がどうなっているか説明を受けていたが、実際に我が物顔で町を歩く人間離れした異形、天人達が闊歩するのを見る事で漸くその事実に納得する。

「まあいいわ…。兎に角、今は力を取り戻す事を優先しないと…」

この弱った体では何もできないため、メズールはとりあえず世界の事は後回しにしてメダル集めを優先しよう決める。
その時、彼女は近くからヤミーの気配を感知した。

「ヤミーの気配!? この気配は…、カザリの物ね!」

メズールはヤミーの気配が感じられる方へ駆け出した。






「神楽ちゃーーーーん!? いい加減、食べるのを止めてくれないかなー?」
「ゴメン、銀ちゃん!? 手が止まらないアル!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい!? お金は後で必ず払うんで、つけにしておいて下さい!!」

ヤミーの気配の元へ辿り着いたメズールは、とあるコンビニの中で狂態が繰り広げられている事を目撃する
見たところコンビニにある食べ物をどんどんと胃袋に収めているチャイナ服の少女、神楽にヤミーが取り付いているらしい。

「嘘こけ、滅茶苦茶嬉しそうに食ってるじゃねえか!? 本当に勘弁してくれよ、俺を破産させる気かよ! よーし解った、こうなったら実力行使で…」
「ああーーー、体が勝手に!!」
「ぐへっ!?」

神楽の暴食を止めよう力づくで止めようとした死んだような眼をした銀髪の男、銀時は神楽の抵抗にあえなく撃沈する。

「ちょっと神楽ちゃん! 流石にもう……、ぐはぁ!?」
「あ、悪いね、新八。」

山崎と勝るに劣らない地味さを持つ眼鏡の男、新八も神楽にあっさりやられてしまう。
どうやら今の神楽の食事を邪魔しようとすると、取り付いているヤミーが彼女の体を使って抵抗するようだ。

「ふっふっふ、早速メダル集めのチャンスね。 早くサガルを呼ばないと…」

コンビニの中の様子を覗き、ヤミーがいる事を確認したメズールは山崎を呼び出す事にする。
屯所から出る前に山崎から渡された携帯電話を取り出し、メズールは電話をしようとしたが…。

「…あれ? どうやって使うのだったかしら…」

800年前から封印されていて現在生活二日目のメズール様に、携帯電話は少々厳しかったようである。






「ふーー、食った食った! あ、今度は辛いものが食べたい気分ネ」

メズールが携帯電話と悪戦苦闘している内に、神楽はコンビニの中の物を殆ど食べ尽くしてしまった。
しかしまだまだ物足りないらしく、彼女は他の場所へ移動を開始する。

「くそっ、何をやってるんだ!」

コンビニの近くでヤミーを監視していた男、後藤は携帯電話に手間取るメズールを見て苛立ちを覚える。
そうこうしている内に神楽がコンビニから離れていったため、彼は仕方なくタカロイドで神楽を尾けさせるのであった。










「何で携帯掛けるのだけで30分も掛けているんだよ!? 渡すときに使い方も教えたろ?」
「サガルの教え方が悪かったのよ!」

30分ほど時間を費やした結果、メズールは漸く電話で山崎を呼び出すことに成功した。
しかし時既に遅くコンビニの近くに神楽達の姿は無かった、恐らく神楽を追いかけたのか銀時達の姿も見えない。

「あれ、あのバイク…?」

どうしたもんかと悩んでいた山崎達の前に見覚えの有るバイクが止められる。
バイクから降りた男がヘルメットを外し、そこに後藤の顔が現れた。

「あ、後藤!」
「山崎、ヤミーの居場所を知りたいか?」

そう言って後藤は頭上を指差す、そこには何時の間にかタカロイドが飛んでいた。

「あれは前にセルメダルを持っていった、あの鳥モドキか?」
「こいつにヤミーの後を尾けさせた、着いて行けばヤミーの所まで連れってくれる。 移動にはそれを使うといい。」

後藤の視線の先には前にバイクに変形した自販機、ライドベンダーが設置されている。

「あの時のバイクになった自販機か、これに乗れって事だな。 メズール、メダルを出してくれ。」
「…仕方ないわね、ちゃんと使った分は取り返すのよ」

山崎はメズールから受け取ったセルメダルを受け取り、ライドベンダーに投入してバイク形態に変形をさせる。
ライドベンダーの座席にセットされていたヘルメットを被り、メズールを後ろに乗せて走り出そうとした山崎はある事に気付いて止まってしまった。

「どうした、山崎?」
「悪い、後藤! お前のメットをメズールに貸してくれないか?」
「…はっ!?」

ライドベンダーには山崎の分のメットが用意されていなかったため、後ろに乗せたメズールは現在ノーヘルである。
流石に警察官の端くれとして、ノーヘル二人乗りはまずいと判断した山崎だった。





「サンキュー、後藤!」

後藤から借りたヘルメットをメズールに被せて、山崎は今度こそライドベンダーを発進させる。
遠ざかるライドベンダーの姿を見る後藤の表情には苦いものが浮かんでいた。

「くそっ、何であいつが…」

内に秘めた物を抑えているような声で、後藤の口から呟きが零れた。










「ぎ、銀ちゃーーーん、助けてくれアル!? もう胃袋がパンクしそうアルよ…」
「だったらその食い物を口に運んでいる手を止めろよ!! …て、うわぁ!?」

顔を苦痛で歪ませならが神楽は目の前にある弁当を食べ続けていた、もう彼女の体は丸々と膨れ上がっている。
周りで銀時と新八が彼女の暴食を止めようとするが、その度に抵抗を受けてしまい失敗に終わった。
そんな中で二人乗りをした一台のバイクが近づき、銀時達の近くに留まった

「あれ、万事屋の旦那たちだ、こんな所で何をやってるんだろう…。 それよりヤミーは一体何処に居るんだ!!」
「あれよ、あれ! あの女の子供にヤミーが取り付いているわ!!」

タカロイドに連れられてヤミーの居場所まで辿り着いた山崎は、辺りを見回してヤミーらしき怪物を探すが見付からない。
ヤミーを探す山崎にメズールは、今回のヤミーは神楽の中に取り付いていると教えた。
人の体の中にヤミーが居るという事に驚いた山崎は驚愕の声をあげる。

「ええーーーっ!? あのチャイナ娘にヤミーが取り付いているって、一体どういう事だよ?」
「その声は山崎、何そのバイク買ったの? 山崎の癖に生意気だぞ!!」
「山崎さん、丁度いい所に! すいませんが、ちょっと手を貸して貰えませんか?」

その叫びを聞きつけたのか銀時達は山崎が現れた事に気付き、新八が助けを求める声をあげた。
しかし山崎はメズールからヤミーについて聞く事を優先する。

「旦那方、ちょっと待ってください! メズール、あのチャイナがどうなっているのか説明しろ!!」
「あのヤミーは宿主の体内で欲望を吸収しながら成長するのよ、成体になれば表に出るからもう少し待ちなさい」
「そんなヤミーも居るのかよ…」

どうやら神楽に取り付いているヤミーは、彼女の食欲を餌にして成長しているようだ。
流石に宿主と一緒に体内のヤミーを倒すわけにはいかない、ていうかあの馬鹿強い神楽だと返り討ちにあう可能性もあるだろう。
どうしたものかと悩んでいる時、銀時たちは山崎と一緒に居るメズールの存在にも気付いたようだ。

「えっ、よく見たら山崎が女連れ!? おーい、こっちがこんな状況にも関わらず、そっちは楽しく女の子とデートかよーー!!」
「や、山崎さんに彼女が!? そんな…、同じモテナイ系の地味キャラ仲間だと思ってたのに!!」
「山崎の癖に女を作るなんて生意気アル!!」
「うるせーぞ、てめーーーーら! 俺が彼女を作っちゃそんなに悪いのかよ!!」

余程山崎が女性を連れている事に驚いたのか、万事屋の面々が口々に抗議の声をあげた。
別にメズールが彼女という訳では無いのだが、余りの言われように怒りを露にする。

「…はっ、そんな事をしている場合じゃ無かった! 旦那方、実はそのチャイナ娘がそうなったのには原因が有るんですよ」

そう言って山崎は、万事屋の面々に神楽へ取り付くヤミーについて説明を始めた。





「えーーー!? つまり神楽ちゃんの体の中に、そのヤミーっていう化け物が取り付いているって事ですか!!」
「んで、こいつの欲望を食って成長しているねー。 神楽ちゃーん、そんな性質の悪い寄生虫を一体何処で拾ったんだ?」
「うーん、解らないアル…」

ヤミーの存在を聞いて驚きを隠せない銀時、ちなみにその間も神楽は弁当を食べ続けている。
神楽は自分にヤミーを取り付かせたであろうグリードと確実に会っている、山崎そのグリードについて尋ねた。

「グリードって名前の怪物がヤミーを生み出すらしいんです、何か心辺りは無いんですか?」
「このヤミーのタイプはカザリの仕業ね、猫のような姿をした奴よ」
「あー、そういえば公園で猫の化け物にあったアル。 何かメダルをくれるっていうから貰ったアル、すぐに体の中に消えちゃったけど…」

案の定、神楽は過去にグリードと出会った覚えがあったようだ。

「や、山崎さん!? 神楽ちゃんが貰ったメダルっていうのが、まさか!?」
「…多分、セルメダルっていうヤミーの元だと思いますよ」

普通猫の化け物とやらから渡された物を素直に受け取るものかと、山崎は思わず脱力してしまった。

「神楽ちゃーーーーん!? 知らない人から物を貰っちゃいけないって、前に教えたよねーーーー!!」
「そ、それよりどうしますか!? ヤミーとやらが成長するのを待ってたら、神楽ちゃんのお腹がパンクしちゃいますよ!!」

この状況を打破するための方法を考える銀時たちだが、そうそう上手い具合に打開策が思いつかない。
そんな状況の中、事の張本人である神楽がとんでもない行動を起こしてしまった。






「あっ、つまり私の中に入るヤミーとかってのを出せばいいアルね。 それならいい方法を思いついたアル!」
「えっ、本当!? 一体どんな方法なんだい?」
「こうするアル。 うげぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「吐いたーーーーーーー!?」

体中の力を振り絞ってヤミーの束縛から僅かに逃れられた神楽は、その場でゲロを吐き始めた。
恐らくゲロと一緒に自分の中に入るヤミーも吐き出せると、神楽は単純に考えついた思い付きでの行動だろう。

「馬鹿ね、そんな事をしてもヤミーが出る訳…」
「ウニャーーーーーー!?」
「嘘っーーーー!?」

たかが吐いただけでヤミーが出る訳無いと、メズールは神楽の浅はかな行動を鼻で笑う。
しかし本当に嘔吐物と一緒にヤミーが現れてしまい、彼女は驚愕の表情を浮かべる事になった。

「うわっ、何か出て来た!? あれが山崎さんが言ってたヤミーか」
「おおー、あれが私の中に居たのかアル。 何か不細工な猫あるね」
「くっそー、あいつが神楽に付いたせいで万事屋の家計は火の車だぞ!? おのデブ猫め…」

神楽の体内で成長した肥満体系の猫型ヤミー、ネコヤミーに対して口々に感想を言っていく。
ネコヤミーは体に付いた神楽の嘔吐物が気になるらしく、嫌そうに身を悶えていた。

「どういう事、サガル!? あんな方法でヤミーを出すなんて、あの小娘は一体何者よ!!」
「いやー、あんまりよく知らないけど色々と常識はずれな娘みたいなんだよ。 と、兎に角これでヤミーは外に出せたぞ、後は倒すだけだ!!」

先ほどの神楽の行動が納得いかないメズールは、山崎に食って掛かっていた。
メズールに負けず劣らず驚いていた山崎だが、そんな事より目の前に現れたヤミーを倒すため腰にオーズベルトを装着する。

「それもそうね…、サガル! さっさと倒してメダルを手に入れるのよ!!」
「はいはい…」

メズールから渡された3枚のコアメダルをはめ込み、オースキャナーをメダルの上を滑らした。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


「変身っ!!」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。


またあの歌が流れると同時に山崎の体が光に包まれて、次の瞬間にはオーズへと姿を変えていた。




あとがき。

そこそこの文量になってしまったので、第3話は3分割しました。
後半の戦闘パートは近日中にあげます。



[25341] ネコとチャイナと記憶喪失(後半)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/02/25 22:09

「はーーーーーっ!? 山崎さんが変身したーーーーー!!」
「おい、山崎! それはどっちかって言うと俺の役目だろ、キバっといくぜーーとか!!」
「うわぁーーー、似合わねーー! お前のキャラと全然合わないアルよ、それ」
「これからシリアスな戦闘シーンに入るって時に、その発言は無いだろう!? ちったー黙ってて下さいよ!! 」

万事屋の面々は、目の前で山崎がオーズに変身した事にそれぞれに驚きを見せていた。
彼らの発言に気勢を挫かれた山崎は、思わず突っ込みの声を入れてしまう。

「シャーーーーーー!!」
「わっ、危ない!?」

その隙を逃さず、ネコヤミーは口からメダル上の光弾を山崎目掛けて放出する。
間一髪でその攻撃を避けられた山崎は、腕に備わった爪でネコヤミーに斬りかかった。

「くそっ、こいつでも喰らえ!!」

"グニャーッ。"

「へっ!?」

山崎の鋭い斬撃は見事にネコヤミーの体に命中した。
しかし攻撃が当たった瞬間、ネコヤミーの丸々と太った体に跳ね返されてしまう。

「この、このっ!!」

"グニャッ、グニャッ。"

腕の爪でネコヤミーを切り裂こうと連続攻撃を加えた山崎だが、全てのネコヤミーの弾力がある体で弾かれた。
ネコヤミーにダメージを与えられない事に焦り、全力で殴りつけてもみたが…。


「くっそーーー、これならどうだ!!」

"グニャーーーーっ、ドーーーーン!!"

「うわっ、こっちに戻って…、ぐはっ!?」

山崎の攻撃によって吹き飛ばされたネコヤミーはそのまま壁にぶつかり、自分の体を利用して山崎の方へスーパーボールのように跳ね返ってきたのだ。
自分の力をそのまま利用されて反撃を受けてしまい、大きなダメージを受けた山崎はその場に蹲ってしまう。





「うわー、思いっきり押されているよ! あーあ、やっぱり山崎は荷が重すぎたかなー」
「流石私から産まれた猫、とっても強いアル!!」
「何でちょっと自慢げなの、神楽ちゃん!?」
「しっかりしなさい、サガル!!」

(あいつらー、勝手な事ばかり言って…)

外野の無責任な野次とメズールの激を受けて、山崎はどうにか立ち上がる。
そしてネコヤミーに対して、今までのお返しとばかりに猛攻を始めるのであった。

「爪が駄目なら、蹴りならどうだ!!」
「フニャ!?」

腕の爪を利用した攻撃では効果が薄いと考えた山崎は、今度はネコヤミーに強烈な蹴りを繰り出した。
その攻撃を受けてネコヤミーは思わずたじろいでしまう、山崎はすかさず連続キックを続ける。

「うぉーーーー!!」
「キシャーーーー!?」

その判断が上手くいったらしく、今度こそネコヤミーにダメージを与えることができているようだ。
山崎に蹴り付けられる箇所から、ネコヤミーは徐々にセルメダルを放出していった。

「フ、フニャ…」
「このまま決めてやる!!」

蹴りを与え続けてネコヤミーは弱ったような様子だ、それを見た山崎は止めをさそうと決意した。
ネコヤミーの正面に立ち、腰にマウントされたオースキャナーを手に持つ。

「確かもう一回滑らせればいいんだよな」

メズールから聞いたコアメダルの力を引き出す方法、ベルトに嵌めたメダルに変身したときと同じ要領でオースキャナーを滑らした。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


"Scanning Charge!!"。


「はぁーーーーーーーー!!」

腰のコアメダルから足へ力が伝わり、山崎の足は飛蝗のような形に変形した。
そのまま空高く飛び上がり、山崎とネコヤミーとの間に赤・黄・緑の色をした3つのリングが浮かび上がる

「せいやーーーーーーーー!!」

山崎は両足を突き出してリングを潜り抜けながら、ネコヤミーに向かって進んでいく。
リングを通るたびに体中に力が増していき、この必殺キックがまともに当たればヤミーは確実に倒せるだろう。
そう、何も邪魔が入らなければ……。






「え、あれは!?」
「はぁ!? 何かの柱が山崎さんとあのヤミーの前に…」

山崎の蹴りが当たる寸前、ヤミーの前に柱が何処からか投げられる。
その柱を破壊しながら進んだため山崎の蹴りの威力が弱まってしまい、ヤミーに対して十分な威力を与えることができなかった。

「へ、一体何が!?」
「貴方を邪魔した奴が居るのよ。 隠れてないで出てらっしゃい、カザリ」

先ほどのネコヤミーへの蹴りが不発に終わった事について、山崎は思わず疑問を漏らした。
ごの疑問にメズールが山崎の攻撃を妨害した者が居ると答え、その張本人を呼びつける。
メズールの呼びかけを聞きつけたのか猫科ような姿形をしたグリード、カザリが何処からとも無く現れた。

「あ、あれは私にメダルをくれた猫の化け物アルよ!!」
「本当、神楽ちゃん!?」

神楽は自分にメダルを渡したカザリの姿を見て思わず声をあげた。
メズールとカザリは緊迫した空気を醸しながら、表面上は差し障り無い会話をしている。

「やあ、メズール。 元気だった?」
「久しぶりね、カザリ。 こんな所に何か用でもあったのかしら?」
「こ、こいつがグリードなのか…」

メズール以外のグリードを始めて見る山崎は、興味深そうにカザリの姿を見て回した。
仮の体であるメズールと違い、カザリの見た目はどちらかといえば天人に近い物が感じられる。
メズールの本当の姿もあんな風に人間離れしているのかと想像を巡らしている内に、グリード達の会話が本題に進んでいた。

「メズール、僕たちの所に戻ってこないか?」
「はあ、馬鹿を言わないでくれる。こんな状態で貴方たちの所へ戻ったら、鴨が葱を背負って来るような物じゃない」

裏切り者であるメズールに対して、カザリはグリードの側へ戻るように提案する。
しかしメズールはコアメダル1枚の状態で他のグリードと行動したら、何時自分の最後のコアメダルが奪われるか解った物ではないと一蹴する。

「いいのかな…。 オーズの力が有るとはいえ、そんな人間の力はたかが知れているよ。 僕たちグリードの力は君が一番知っているでしょ?」
「くっ…」
「おい、メズール!?」

カザリの説得に心が揺れているような反応をするメズール、それを見ていた山崎は焦ったようにメズールを呼びかけた。
しかしそんな硬直状態が、空気の読めない外野からの横槍で崩れてしまう。






「おらぁーーーーーー!!」
「がぁっ!?」
「チャイナ娘がグリードに殴り掛かったーーーーー!?」

何と神楽がカザリに目掛けて襲い掛かってきたのだ、限界に近い量の食事を取ったばかりなのによく動けるものである。
不意を付かれてしまい、カザリはまともにその攻撃を受けてしまった。

「こんのーーー、よくもやったアルね! あんなに食べ物を取らせて、乙女の体重が増えたらどうするアル!!」
「なーに余計な事をしてくれたんだよ! 神楽の食った飯代で俺は暫く借金生活確定なんだぞ、お前は万事屋の家計を破滅させる気か!!」
「よくも家の神楽ちゃんに手を出してくれたな、おらっ!!!」

今回のヤミーせいで色々と酷い目にあった万事屋の面々は、思い思いにカザリをフルボッコにしていく。
普通の人間の力では到底グリードに対抗できないだろうが、彼らは人間性は兎も角として実力は折り紙つきである。

「ぐはぁっ!?」
「うわっ、何か出て来た!? あれは…、メダルか?」

思わぬ所でダメージを受けてしまったカザリは、その衝撃で自分のコアメダルを一枚排出してしまう。
その事で怒りが頂点に達したのか、銀時たちへ反撃を繰り出した。

「図に乗るなーーー!」
「何で僕だけ!?」

カザリの怒りを込めた一撃により、新八は哀れにも吹き飛ばされてしまう。
どうにか万事屋たちの拘束から逃れたカザリに、メズールは嘲笑を浮かべた。
何時の間に回収したのか、その手には先ほどのカザリのコアメダルが握られている。

「ごめんなさい、貴方の提案は断るわ。 だって、たかが人間如きそんな姿を見せるようでは話にならないしね」
「くっ…、覚えてろ!!」
「待てっ、この猫野郎!」

そう言い残しその場から立ち去ろうとするカザリを、まだ仕返しが足りないのか銀時たちが追い掛けようとする。
しかしネコヤミーが自分の親であるカザリを守ったのか、銀時たちの前に立ち塞がった。





「フシャーーーーーー!!」

山崎達を威嚇するようの吼えるネコヤミー、今にも襲い掛かってきそうな様子だ。

「うわぁ、デブ猫!?」
「あ、そういえばこのヤミーを倒してなかったか」

山崎は今度こそ倒そうと意気込み、ネコヤミーの前に構えた。
それを見たメズールは、手にあったカザリのコアメダルを山崎に投げ渡す。

「サガル! そのメダルを使いなさい!!」
「これは…」

メズールから投げられたメダルを手に取って見てみる。そのメダルにはチーターの模様が描かれていた。
山崎は飛蝗のコアメダルを抜き、カザリから新たに手に入れたチーターのコアメダルをはめ込む。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"タカッ!"、"トラッ!"、"チーターーッ!!"。


山崎の体が光に包まれ、彼の足は緑色から黄色に変化していた。







「はぁーーーーー!!」

チーターのコアメダルの恩恵を受け、山崎は凄まじいスピードでネコヤミーに向かっていく。
ネコヤミーが反応できないくらいの速さで懐に入り、連続で蹴りを繰り出す。

「おらおらおらーーーー!!」
「ブニャーーーーー!?」

ネコヤミーは連続蹴りをもろに受け続けてしまい、その傷口から多量のセルメダルを放出してしまった。
それを見た山崎は強めに放った蹴りでネコヤミーを吹き飛ばし、メダキャリバーを取り出した。

「よし、今度こそ決めてやる!!」

メダキャリバーに3枚のセルメダルを装填して、オースキャナーを滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"Triple!"、"Scanning Charge!!"。


オースキャナーを滑らした事で、メダキャリバーから凄まじい力が生み出さる。
山崎はネコヤミーに向かってメダキャリバーを振り下ろし、その力を開放した。

「はぁーーーーっ! せいやぁーーーーーーーー!!」
「グニャーーーーーー!?」

メダキャリバーから放たれた時空をも歪める一撃を受け、ネコヤミーは断末魔をあげて爆散する。
ネコヤミーから生み出された多量のセルメダルが、地面にばら撒かれるのであった。






「またやられたわ!? だから何なのよ、あの鳥は!!」
「はーー、また根こそぎ持っていかれたな…」

あの後、山崎たちはネコヤミーから放出したセルメダルの回収を始めた。
しかしすぐさま見計らったかのようにタカロイドが現れ、前回と同じように大半のメダルを持っていかれたのである。

「おい、山崎! いい加減、事情を説明して貰うぞ!!」
「そうですよ、あのヤミーって言う怪物は一体!? それに山崎さんのあの姿も…」
「いやー、話せば長くなるんですが…」

銀時たちが今までの出来事に対して説明を求めてきた、山崎は実際に被害にあった人へ流石に適当な事を言えないため事情を説明をしようとする。
しかし山崎たちの所に一台の車が近づき、その車から手にモニタのような物を持った女性が降りてきた。
どうやらその女性は山崎たちの用事が有るらしく、モニタを手に抱えたままこちらの方へ歩いてくるようだ。

「ある方から、貴方たちにお話が有るそうです」
「は、話って…」

山崎の前まで来た女は、手に持ったモニタを山崎たちの方へ向けながら話してくる。
一体どのような話か尋ねようとした山崎だがその瞬間、モニタに一人の男が映りこちらに語りかけきた。

「始めまして、山崎くんにメズールくん! この出会いに、ハッピーーーバースデーーーーーーッ!!」
「はぁっ!?」

モニタ越しにいきなりハイテンションに語りかける男、鴻上ファウンデーション会長である鴻上の登場に山崎は開いた口が塞がらないのであった。




あとがき。

遅くなりましたが後半更新しました。

次こそは1週間以内に更新できるように頑張ります!



[25341] 居候と巣とバカ皇子(前半)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/02/09 20:37

「はい、注目! 今日のお仕事は、このでかい屋敷でペットの世話する事でーす!!」

万事屋一同の目の前に、広い敷地を持つ巨大な屋敷が建っている。
此処が今日の万事屋の仕事場らしく、銀時は仕事の内容について説明を始めていた。

「うわぁーーー、バカデカイ屋敷アルね!? 一体誰が住んでるアルか?」
「ああ、何でも天人のお偉いさんらしいぜ。 ここの天人様が最近ペットを集めまくっているらしいが、そいつらの世話を見る人手が足りなくなったんだそうだ」
「はー、羨ましいですね。 ペットに使う金があるなら、僕たちに回して欲しいですよ…」

銀時の説明を聞いて、新八は富の偏差を実感して思わずため息をついてしまった。
そうして仕事をするために屋敷へ入ろうしていた銀時たちに、待ったの声が掛かる。

「ちょっと!? どうでもいいけど、何で私まで連れて来られているのよ!!」
「はー、当たり前だろ! お前も万事屋に住んでるんだから、一緒に働くのは当然だろうが」
「そうアル! 働かざるもの食うべからずアルよ!!」

先日から万事屋に居候する事になったメズールが、万事屋の面々に不満をぶちまける。
どうやら彼女は承諾も無しに、銀時たちに無理矢理仕連れ出されたようだ。
万事屋の一同は彼女がグリードと呼ばれる怪人であると知ったにも関わらず、全く普段の態度を変えていない。
彼らのその図太さは流石と言えるだろう。

「……ていうか、何で俺まで此処に居るのかな」

そんな中で、メズールに呼ばれたらしい山崎は一人苦笑いを浮かべていた。

何故メズールが万事屋に居候する事になったのか、話は数日前に遡る。
山崎がネコヤミーを撃退し、モニタ越しに初めて鴻上と話したあの日…。












「こちらは鴻上ファウンデーション会長、鴻上光生」
「鴻上ファウンデーションって、あの美術館の!?」

モニタを山崎の方に見せている女性、里中はモニタに写る人物の素性を説明する。
画面越しに何故かケーキを作りながら山崎たちに向かい合う、スーツ姿の中年が移っていた。
山崎はそれがグリード達が封印されていた美術館を経営していた、鴻上ファウンデーションの会長である事に驚きの声をあげる。

「それから…、これは贈り物だそうです」
「贈り物? これは、あの時の…」

里中はモニタを降ろして、自分が乗ってきた車から何かの箱を取り出して山崎へ差し出した。
箱の中身を見た山崎は、中に赤・青・緑の缶のような物が4本ずつつ詰められているのを確認する。
それらはメダルを持っていく例の赤い鳥や、前に助けられた青い蛸に変形するカンドロイドであった。

「何だよ、贈り物ってただの缶ジュースの詰め合わせかよ」
「いや、ただの缶じゃ無いんですよ。 お、この色は初めて見るな」

その贈り物とやらを覗き込み、中身が平凡な物である事に銀時は落胆の声を漏らす。
山崎は銀時に訂正を入れつつ、今までに見た事が無かった緑色のカンドロイドを手に取った。

"バッタ!"

「うわっ、缶ジュースが変形した!?」
「へー、こいつはバッタなのか」

緑色のカンドロイドが缶形態から変形して、バッタロイドとしての本来の姿を見せる。
ただのジュース缶と思っていた銀時たちは、目の前でいきなり缶が変形した事に驚愕していた。

「あなたね、人間の癖にセルメダルを集めているのは!!」
「その事について話がある! 実は今日君たちにいい商談を持ってきたんだよ!!」
「商談…?」

カンドロイドを見た事で鴻上がセルメダルを横取りしていた張本人と認識し、メズールは鴻上にメダル集めの理由を問い質す。
鴻上はメズールの質問を直接返さず、彼女に商談を持ち掛けてきた。










「はぁ!? 私が集めたセルメダルを渡せですって!!」
「我が財団は君たちに武器・バイク・カンドロイドを提供する、君たちはその力を使って手に入れたセルメダルの一部を我々に提供して欲しい! なーに全部とは言わない、君たちが手に入れたセルメダルの70%で構わない!!」
「ふざけないで! 幾らなんでも取り過ぎよ!!」
「おい、ちょっと待って! メズール!!」

鴻上の提案する70%譲渡の条件が気に食わなかったらしく、メズールは里中に詰め寄ろうとする。
しかしメズールと里中の間に銃撃が走り、メズールは歩みを止めさせられる事になった。

「ご、後藤!?」
「次は外さない!」

何時の間にか山崎たちの近くまで来ていた後藤が、メズールに警告をしつつ先ほど使用した銃を構えた。
山崎たちの間に緊迫した空気が流れる、しかしそんな状況はまたしても外野からの空気の読めない横槍に崩されてしまう。

"もしもーし、聞こえているアルか!!"
「へっ、バッタからチャイナ娘の声が!?」

突然山崎の近くまで来ていたバッタロイドから、神楽の声が聞こえてくる。
その事で万事屋たちの存在を思い出した山崎は慌てて周りを見渡した、するとそこにはカンドロイドで遊ぶ万事屋の姿があった

「うぉーー! おもしれーーな、これ!!」
「どうやらバッタは通信機になっているみたいですね」
「銀ちゃん、これ私も欲しいアル!!」
「お前ら! 人の贈り物で何勝手に遊んでいるんだよ!!」

思い思いにカンドロイドを弄る銀時たち、自分が貰った物を勝手に使われた山崎は声を荒げて突っ込みをする。
こうして場の空気が弛緩した事が関係あるかは解らないが、モニタ越しの鴻上が話を切り上げようとしていた。

「はっはっは、我々の作ったカンドロイドは好評のようだね。 里中くん、今日はこれまでにしておこうか。 返事は後日に改め聞くよ、いい返事を期待しているよ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! まだ話が…」

メズールの静止を無視するようにモニタから姿を消す鴻上、それを確認した里中は車に戻ろうとした。
しかし突然モニタが再び写り、里中は急いでモニタをまた山崎の方へ向ける羽目になる。






「そうそう、一つ忘れていた事があった。 山崎君、君は確か真選組の一員らしいね」
「…それがどうかしましたか?」

モニタ再び現れた鴻上は、山崎が真選組である事を確認する
自分の素性がばれている事に驚きを覚えつつ、山崎は何故そんな事を聞くのか尋ねた。

「山崎君、君はオーズやグリードの事をもう真選組に話したのかい?」
「いえ、色々あってまだ秘密にしています。 けどそろそろ、皆に協力を求めようかなって思っていますが…」

メズールに口止めされた事もあり、山崎は真選組にグリードの事を伝えていなかった。
けれどもグリードたちを一人で追うのは至難の業と解ったため、やはり真選組という組織の力を利用したいと考ている所だった。
しかし山崎の目論見は、鴻上の口から語られる驚愕の事実によって止められてしまう。

「忠告しよう、真選組にグリードやオーズの事を話すことは止めた方がいい」
「はっ、どうして…」
「実は天人たち、特にこの国の中枢に関わるような大物がグリードに興味を示しているようでね。 そんな連中にはグリードの源であるコアメダルの力を引き出す、オーズという存在はとても魅力的に見えるだろう。」
「天人がオーズの力を狙っている!? しかも政府に関わっているって事は…」

武装警察「真選組」は幕府に仕える役人である、しかし天人襲来の折より幕府は国を統べる力を失っていた。
そのため幕府を裏から操る天人たちが、実質上の真選組の上役と言っても過言では無いだろう。

「自分たちの懐の中にオーズの力を持つ者が居るのを知ったら、彼らはどのような行動に出るかな? まあモルモット扱いされるのは簡単に予想できそうだがね」
「何、その死亡フラグ!? まずいぞ、こんな物を持っていたら命が幾つあっても足りないって事じゃねぇか!」

山崎は現在の自分の危機的状況を教えられて、パニックに陥ってしまう。
兎に角、自分の身の危険を取り除くために、オーズドライバーをメズールに返そうとした。

「やっぱり俺は主人公には似合わない地味キャラでした! 今度はもっと主人公っぽいオーラが出ている人に、これを渡してください!!」
「無理よ、オーズの力はもう封印を解いたサガルにしか使えないわ」
「おーーい、そんな事聞いてねーーーーぞ!? え、つまり俺はこのまま死と隣合わせの状況で、変身ヒーローを続けないといけない訳かよーー!!」

オーズの力を手放して死の恐怖から逃れようとした山崎だが、メズール曰くオーズの力は封印を解いた者しか使えないらしい。
つまり一回変身してしまったら最後、オーズは山崎専用の物になってしまったのだ。

「それでは今度こそ失礼するよ、君たちの健闘を祈っている!」

山崎への忠告を終えた鴻上はモニタから姿を消し、里中は今度こそ車に乗り込んで立ち去る。
里中の車が出発した事を確認した後藤も、驚愕の事実に悶えている山崎を一瞥してバイクで走らせるのであった。






「落ち着け、山崎退! よく考えてみろ、逆に真選組の連中にバレなければ俺の安全が保障されるって事じゃないか!!」

ようやく混乱から収まった山崎は、鴻上から貰った情報を頭の中で整理していた。
要は自分がオーズである事を、他の天人に知られなければいいのだ。
幸運な事に真選組にはまだ正体を明かしていない、鴻上も忠告までしたくらいだから天人に自分の情報を伝える可能性は低いだろう。
メズールもメダル集めが邪魔される事を懸念して、基本的にグリードやオーズの事は秘密にする姿勢を見せていた。

「なーんだ、俺が秘密を漏らさなければ大丈夫そうじゃん! いやー、ビビって損したなーー!!」

山崎は自分がオーズである事を知る人間を全て思い浮かべ、全員が自分の秘密を明かす可能性が極めて低い事に気づく。
つまり自分がこのままオーズの事を秘密にし続ければ、安全は確保される事に思い至り山崎は安堵の息を漏らした。
気が抜けたのか山崎は晴れやかな笑みを浮かべた、しかしその笑顔は背後から掛けられた声によって脆くも崩れ去るのである。

「お前も大変そうだなーー、山崎くーーーん」
「だ、旦那方!? そ、そういえば旦那方も居ましたね…」

そう、山崎の秘密を知る人物が此処にまだ居たのだ…。










「グリードにヤミーね、そんな漫画みたいな化け物が本当に居たとはなー。 あ、お姉さん、パフェお代わり頂戴!!」
「お前も色々苦労しているアルなー。 あ、私はヒレステーキセット追加アル!!」
「すいませんね、こんなに奢って貰っちゃって…。 あ、こっちは和食御膳をお願いします」
「私はこの白玉ぜんざいとやらを頂こうかしら。 あ、このティラミスとやらも頼むわ」
「おーい、幾らなんでも食いすぎだろ! ていうかメズール、何でお前まで一緒に注文してるんだよ!!」

場所をファミレスに移して今までの事について事情説明を開始した山崎は、ついでに口止め料として万事屋に食事を奢る事になっていた。
万事屋の面々は全く遠慮をせずに、どんどんと好きなメニューを注文しては食べていく。
ちょっと前までネコヤミーに取り付かれて暴食を繰り返していた神楽までも一緒になっているだから、山崎は呆れ果てる他無い。

「それで旦那方、俺の事は秘密に…」
「ああ、解っているよ。 ちゃんと黙っててやるから安心しろって!」
「山崎さんには助けられましたからね。 少なくとも僕たちの口から、貴方の秘密が漏れる事は有りません」
「大船に乗ったつもりで居るアル、私は口が堅い事で有名アルよ!!」

とりあえず万事屋の面々から自分の秘密を守ってくれる事を約束して貰い、山崎は胸を撫で下ろすであった。。










(さて、差し迫った問題は解決できたが…。 次はこいつの住処をどうするかな?)

横で白玉あんみつを口に入れているメズールに視線を向けながら、山崎は彼女の処遇について考えた。
昨日はとりあえず屯所内に泊める事はできたが、何時までもそうする訳にはいかないだろう。
真選組の隊員達は基本的に真選組屯所内で寝食を共にしている、山崎もその例外から漏れていないためメズールを自分の家に呼ぶという選択も不可能である。
それに余り真選組の近くに居続けていたら、彼女がグリードである事がバレる可能性も出てくる筈だ。

(しかし事情を知らない奴に預ける訳にはいかないからなー。 グリードの事情を知っていて、真選組と関係しない人間が居れば…)

「…あっ!?」
「何よ、突然奇妙な声をあげて?」

よく考えてみれば、目の前に居る万事屋の面々が先ほどあげた条件に一致する。
その事実に気づいた山崎は、銀時にある相談を持ちかけるのだった。










「……こうして、晴れてメズールは万事屋に居候する事が決まったのでした。 ちなみにあいつの生活費は全部俺持ちでーす」
「何ブツブツ呟いているのよ、サガル?」

今までの出来事をモノローグ風に語りは終えた山崎の姿を、不気味そうに横で見ていたメズールであった。

あとがき。

とりあえず前半部分、メズールの居候先が決まりました。

タジャドルフォームが死ぬほど格好よかったのですが、ここの山崎オーズがあの姿になる時が来るのか…。



[25341] 居候と巣とバカ皇子(後編)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:b0970320
Date: 2011/02/17 00:13

「うむ、では余の可愛いペットたちを頼んだぞよ」
「は、はい!? 誠心誠意、面倒を見させて貰います!!」
(あ、あれはバカで有名な央国星のハタ皇子!?)

屋敷内に入った銀時たちは今回の依頼主であるハタ皇子と対面している、天人であるハタ皇子は所々のパーツが人間とは違っていた。
人類と区別できる一番の特徴は本人曰く、チャーミングポイントらしい頭に生えている触覚だろう。
ハタ皇子に仕事前の挨拶をしてる銀時、しかし何故かハタ皇子と話している銀時の顔から冷や汗がダラダラと垂れ流されているた。
よく見たら新八も何処か挙動不審な態度を取っているでは無いか、その様子を横で不思議そうに見てい山崎はこのハタ皇子と何かあったのかと新八コッソリ尋ねる事にする。

「新八くん。 何やら旦那の様子がおかしいように見えるけど、あのバカ皇子と前に何かあったのかい?」
「え、ええ…。 前にあの人とちょっとトラブルが有りまして…」

実は万事屋は以前に、ハタ皇子が飼っていた未確認生物を殺害したという過去があるのだ。
しかし流石に警察に所属する山崎にその事を告げられない新八は、苦笑いを浮かべながらその事実を濁して答えるしかない。

「んー、お主ら、何処ぞで余に会った事があるか?」
「し、知りませんよ!? 人違いじゃ無いんですか、地球人は皆しょう油顔ですからねー」
「そうか、ならよい」

どうやらバカ皇子は銀時の事に気付いてないらしい、それを幸いに銀時は誤魔化す事に成功したのだった。





「どういう事ですか、何であの天人が!?」
「知らねーよ!? 俺だって婆から仕事を貰っただけなんだから!!」
「おい、喋ってねえでさっさとついて来いや!!」

ハタ皇子の従者を務めるじいに連れられて、銀時たちは今日の仕事場に案内されていた。
じいもハタ皇子と同じ種族の天人であり、同じように頭に触覚を一本生やしている。

「たっく、面倒くせーなー。 あのバカがバカみたいにペットを増やさなければ、こんなバカ供の面倒を見なくても済んだのに…」
「バカバカ言い過ぎだろ!? え、ていうか自分の主もバカ呼ばわりしたよね、この人?」
「あーん、バカをバカ呼ばわりして何が悪いんだよ? あのバカがペット集めに精を出すようなってから、こっちは碌にゲートボールも出来なくなったんだぞ!!」
「うわぁー、この人忠誠心0だよ!? いいのかよ、それで!!」

じいの主人を主人と思わないぶっちゃけトークに、山崎は思わず突っ込みを入れてしまう。
しかしじいは山崎の指摘に悪ぶる様子もなく、バカ皇子の不満を愚痴り始める始末だ。

「あれっ、あの皇子って前からペット狂で有名でしたよね?」
「前はどっちかていうと量より質って感じでな、面倒な事には変わりないがここまで手間は掛からなかったんだよ。 けど最近じゃ何かに取り付かれたかのようにどんどんペットを増やしてなー、あのバカは!!」

ハタ皇子は珍生物を好む天人として知られているので、新八は彼が今回の依頼者である事に納得を感じていた。
けれでもどうやら事情が少し変わったようで、じいの口からは皇子の行動が最近微妙に変わった事が告げられる。

(何かに取り付かれたかのように? まさかな… )

じいの語るハタ皇子の変わりように、嫌な予感を覚えた山崎であった。












「おーーーーい、あのバカはどんだけペットを集めているんだよ!?」

万事屋の面々の目の前には、屋外に設置されたペットの飼育スペースが見渡すがきりに広がっていた。
そこには無数の檻が見渡す限りに設置されて、見た事も無いような生物に五月蝿く泣き声をあげている。
目の前に存在する下手な動物園くらい有りそうな敷地を見て、銀時は早くも心が挫け掛けそうになるであった。

「ど、どうしますか、銀さん? これ、今日中に仕事が終わりますかね…」
「だ、大丈夫だって!? こ、こっちは頭数が5人も居るんだし、上手くやれば平気だろう」
「ねえ、5人って俺も人数に入っているよね!? 何、やっぱり俺も仕事しないといけないのーー!!」
「よーし、駄弁ってないでさっさと仕事を始めるぞ」
「無視するなーーーーーーー!!」

万事屋とは無関係である自分を仕事に巻き込もうとする銀時に、山崎は思わず突っ込みの声をあげる。
しかし銀時は貴重な労働力を逃さないために、山崎の叫びを無視して仕事を開始するのだった。





「すいません、何だかんだで手伝って貰って。 そういえば、真選組の仕事は大丈夫なんですか?」
「いやー実は今、ちょっと謹慎をくらっててさー。 だから仕事の方は別に平気だよ、まあ本当は屯所から出ちゃ駄目なんだけど…」
「なーんだ、じゃあ丁度よかったじゃんか。 どうせ屯所に居たってミントン位しかする事無いんだろ、だったら俺たちの仕事を手伝った方が万倍もマシだって」
「酷いですよ、銀さん! いくら山崎さんだって、ミントン以外に用事があったかもしれないのに…」
「いえ…。 メズールに呼ばれなければ、ミントンの特打ちをするつもりでしたが…」
「結局ミントンしか無いのか、あんたは!!」

山崎は前の任務放棄が原因で受けた謹慎がまだ継続中だったため、どうやら屯所の方で暇をしていたようである。
どうせ山崎にはミントンしか無いと言い切る銀時に、新八は山崎の名誉のために抗議をするのだが本人の口から同意の弁が漏れた事に声を荒げてしまう。
そんな彼らを横目に、メズールは檻に入ったハタ皇子のペットを興味深そうに見て回っている。
恐らく他の星から連れて来られたであろう異形の生物に、メズールは自分たちグリードが生み出すヤミーに近いものを感じていた。

「しかし残念ね、これだけの欲望があればいいヤミーの餌になったのに…」
「おい、まさかあのバカ皇子でヤミーを作る気じゃ無いだろうな?」

これだけのペットを集めながらまだ新たなペットを求めるハタ皇子、その飽くなき欲望は正にヤミーの生みの親として相応しいものであった。
メズールの漏らした呟きで彼女がヤミーを生み出すグリードである事を思い出し、山崎は彼女がこれからヤミーを創るつもりなのかと戦々恐々する。
しかし山崎の懸念はすぐに、メズール自身の言葉で取り払われる事になった。

「無理よ、今の弱った体ではヤミーを生み出す事は出来ないわ。 だからメダル集めのために、わざわざオーズなんかの力を使っているのよ」
「へ、そうなの!?」

コアメダルが1枚しかない弱った状態では満足にヤミーを創り出せず、自力でメダルを手に入れることすら出来ない。
そのためメズールは山崎を使ってヤミーを倒させながら、セルメダルを集めようとしているのだ。





「そういえば、サガル。 私と最初に会った時に持ってた鷹のコアメダル、あれは何処で手に入れたの?」
「えっ!? 確か、お前たちが封印されていた美術館で拾ったんだけど」
「そう…」

ふと思い出したかのようにメズールは、山崎が持っていたコアメダルの入手経緯を尋ねてきた。
山崎はいきなり話題が変わった事に驚きつつ、素直にコアメダルを偶然拾った事を教える。
拾った場所がグリードの封印されていた美術館だったので、山崎は何かの拍子で落ちたメダルを自分が見つけたと思っていたのだが、その説明を聞いて考え込む様子を見せるメズールを見る限りにそう単純そうな話ではなさそうだ。

「な、なあ、メズー…」
「山崎にメズール! サボってないで、こっちで仕事を手伝えーー!!」
「あ、すいませーーーーん!? ほら、行くぞメズール!!」
「はあ、何で私まで…」

山崎は彼女が一体何について悩んでいるか尋ねようとするが、仕事に戻るように言う銀時の言葉によって遮られてしまう。
その声により不本意ながら仕事中である事を思い出した山崎は、メズールを無理やり連れて仕事に戻ろうとした。
メズールはブツクサ言いながら山崎に手を引かれて仕事に戻ろうとするが、近くで発せられたヤミーの気配に感付いて立ち止まる。

「これはヤミーの気配!?」
「何、またヤミーが出たのか! 一体何処に出たんだ、メズール!!」
「けどこの気配は……、嘘でしょ!?」
「お、おい…、大丈夫か?」

山崎はヤミーが出たと聞いて詳しい説明を求めたが、メズールは山崎が目に入ってないような様子だ。
彼女は何か有り得ない物を見たような様子で呆然している。

「何で…、何で私のヤミーの気配が!?」





「お前のヤミーの気配だって!? え、さっきヤミーは作れないって自分で言ってたよな、他の奴のと間違えたとかは…」
「…何故だが解らないけど、これは確実に私のヤミーの気配よ。 さっき会ったあのバカ皇子とかって奴がヤミーの親らしいから、多分この屋敷内にヤミーの巣が出来ている筈だわ」

メズールからヤミーが出た事を知った山崎は、銀時たちにもその情報を伝えていた。
そこでヤミーが本来ならメズールが創りだす筈の物であった事を知り、山崎は先ほどの話と違うと問い詰めたのだが、メズール自身も訳が解ってないらしく何処か動揺した様子である。

「ヤミーの巣? えっ、ヤミーってのは神楽ちゃんの時みたいに、誰かに取り付くんじゃ無いんですか?」
「メズールの話によるとグリードの種類によって、ヤミーの生まれ方が違うみたいなんですよ。 前に出たカザリとかって奴だったら、宿主に取り付くヤミーって感じで」

ヤミーと聞いて先日に神楽が取り付いたタイプを想像した新八は、ヤミーの巣という言葉に疑問を感じた。
山崎は前にメズールから聞いたヤミーの種類についての情報を、新八に説明する事になる。

「メズール、巣って言うのはどんな感じアルか?」
「私のヤミーは成体になるまで、卵のような姿に擬態しているわ。 まあこの感じだともうすぐに産まれそうだから、放って置けば勝手に出てくるわよ」
「いや、そこは生まれる前に倒そうぜ!? 卵の状態なら簡単に処理できそうだし…」

より多くのセルメダルを手に入れたいメズールは、ヤミーを成体になってから倒したいと考えている。
しかし実際に戦いを担当する山崎的には、わざわざ成体になったヤミーと戦いたくないため卵の内にさっさと始末したそうだ。
山崎はヤミーの巣を探すために辺りを見回すが、バカのように広いこの屋敷から巣を見付けるのは至難の業のようである。





「あれ、誰かこっちに来ますよ。 屋敷の人かな?」

ヤミーの巣を探していた山崎はこちらの近づいて来る、緑色のジャケットを羽織った男が目に入る。
山崎の前まで歩み寄てきたその男は、その口から驚きの言葉が放たれるのだった。

「久しぶりだな、メズール」
「なっ、メズールの事を知っているのか!? お前の知り合いか、メズール?」
「私に知り合いなんて居る訳無いでしょう。 何者よ、貴方は?」
「ああ、この姿じゃ解らないか」

メズールの事を知っている口振りを見せる男に、山崎とメズールは警戒心を高めた。
自分が何者であるかメズールが解っていない反応を見せたので、男は己の正体を明かすために体をセルメダルに変化させる。
セルメダルが再び体の形を構成した時、男の姿は昆虫の姿を模したグリード、ウヴァの物になっていた。

「うわぁ、変体した!?」
「ウヴァ!? 何故貴方が此処に…」
「この辺りでお前のヤミーの気配を感じてな、近くにお前が居ると思ってみたら案の定だったな。 さあ、俺のコアメダルを返して貰うぞ、メズール!!」

ウヴァは自分のコアメダルを取り返すために、メズールへを狙って現れたらしい。
今にも自分たちへ襲い掛かってきそうなウヴァに対して、山崎は腰にオーズベルトを巻きつける。
そしてメズールから変身に使用するコアメダルを受け取ろうとするが、メズールは山崎を無視してウヴァにある疑問を投げかけた。

「メズール、メダルを!!」
「ちょっと待ちなさい、ウヴァ! この屋敷に巣を張ったヤミーは、貴方たちが産み出したんじゃないの?」
「ほう、その口振りだと此処のヤミーはお前が親では無いのか…。 俺は勿論こんなヤミーを創った覚えはないし、カザリやガメルもそんな事をしていた素振りはなかった」
「それじゃあ、一体誰が…」
「俺たちでは無いとすれば、考えられる奴はあいつしか居ないだろう。 封印されていたグリードの中で一番先に目覚め、俺たちが出てきた時には既に姿を消していたあいつが…」
「アンク!? じゃあやっぱり、あいつが私のコアメダルの力を…」

自分のコアメダルの力を引き出せば、このタイプのヤミーを産み出すことができる筈だ。
つまり此処のヤミーを産み出した者が自分のコアメダルを所持していると推測し、メズールはウヴァがその張本人で無いか問い詰めた。
しかしどうやらウヴァには身に覚えが無いらしい、メズールは彼が自分を騙している可能性も一考したが、グリードとしての長い付き合いから先ほどの発言が偽りでは無いという事が感じ取れた。
そうしてウヴァと話を進めたメズールは、未だに姿を見せないグリードのアンクが自分のコアメダルを持っているのではと考え付く。

「まあそんな事はどうでもいい! メズール、俺のコアメダルを返せーーーー!!」
「ウヴァ、貴重な情報をありがとう。 サガル、もうこいつに用は無いから早く帰って貰いなさい」
「結局、俺が戦うのかよ!? 何だか解らないから、後で事情は説明して貰うぞ!!」

コアメダルを取り戻すためにメズールへ飛び掛ったウヴァをどうにかいなし、山崎は今度こそ彼女からコアメダルを受け取る。
3枚のコアメダルをオーズドライバーに嵌め込み、オースキャナーを滑らした。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


「変身っ!!」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。


ウヴァと対峙する山崎の姿は、歌とともにオーズに変化するのだった。










「俺のコアメダルを出せーーーー!!」
「くっ、重いっ!?」
「さーて、さっさと檻の掃除を終わらせるか。 神楽、ホースから水を出したいからそこの蛇口を捻ってくれ」

コアメダルへの執念をそのまま乗せたかのような鋭いパンチが、ウヴァからオーズへと姿を変えた山崎に降りかかる。
予想以上に早いウヴァの拳に反応が遅れた山崎は、両腕をクロスして辛うじてその一撃に耐えた。
そんな最中に周りの状況を一切気にせず、銀時は本日の仕事であるペットの世話を進める。

「まずい、もう来るのか!!」
「死ねーーーーーーー!!」
「了解アル」

凄まじいガード越しであるにも関わらず山崎に伝わり、山崎はその場から吹き飛ばされそうになるのを必死に堪えていた。
先ほどの自分の攻撃の余韻が抜けていない山崎に対して、ウヴァはミドルキックを繰り出す。
そして山崎たちの激闘の背後で神楽は、銀時の指示に従って蛇口を捻っていた。

「くそっ、このままじゃ…」
「グガァーーーーーー!!」
「銀さーん、ブラシって何処に置いてありましたっけ?」

自分のコアメダルに有るバッタのような強靭な足から放たれたウヴァの蹴りが、山崎に致命的なダメージを与えるためにどんどん近づく。
どうにか体制を立て直した山崎は、息つく暇も無く今度は自分に迫る攻撃にガードで対応した。
その頃新八は、檻の掃除で使用するブラシを見付からずその辺を探している。

「…て、お前らーーー、ちったあこっちを手伝え!? うわっ、危ね!!」

咄嗟に防御状態のまま後ろに飛び去って蹴りの威力を吸収した山崎は、そのままウヴァとの間合いが離れた事を利用して体制を立て直した
そこで一時的に落ち着けた山崎は周辺の状況が目に入り、自分とウヴァと激しく戦っている状況を尻目に万事屋の面々は淡々と仕事を続けている姿を目撃する事になる。
ウヴァに押され気味の山崎を助けようとしない彼らに、山崎は怒りを露に高らかと突っ込みの叫びをあげたのだが、その隙を逃さなかったウヴァからの襲撃を受ける事になってしまった。

「えー、だって今仕事中だしさ。 それにグリードなんて俺たちに関係ないしなー」
「それに僕たちは山崎さんと違って、変身なんて出来ませんですからね。 まあ一般人は一般人らしく、大人しくしておきますよ」
「仮にもお前は主人公なんだから、その位は一人で何とかするアル」
「薄情すぎるぞ!! ぎゃっ、ヤベッ!?」
「コアメダルを返せーーーー!!」

面倒事は御免だといった感じで山崎に手を貸す気が0の銀時たち、そうしている内に山崎はどんどんと追い詰められていった。
山崎のピンチに対してメズールは万事屋の人間離れした戦闘能力が加われば状況が逆転できると考え、彼らを動かすある手段を用いる事にする。

「仕方ないわね…、貴方たち! ウヴァと一緒に戦ってくれたら、サガルがまた食事を奢ってくれるそうよ!!」
「やっぱり江戸の町を、グリードなんて言う奴らに荒らさせる訳にはいかないな! 手を貸すぜ、ザキ!!」
「例え変身ができなくても、僕たちにだってやれる事はある筈ですよね!!」
「世界の平和は私たちが守るアル!!」
「解りやすいなー、お前ら!? えっ、ていうかまた俺が奢るのかよ!!」







どうやら万事屋に居候する間にキャラクターを掴んだらしいメズールは、鮮やかな手口で銀時たちを戦闘に参加させる事に成功する。
銀時たちの欲望を見事に手玉と取る姿は、正にグリードの面目躍如と言えるだろう。
ウヴァは銀時たちが自分に襲い掛かる様子を見て、たかが人間如きと余裕すら感じているようであった。
しかしその認識は銀時の一太刀を浴びた事ですぐに一変する事になる。

「前はファミレスだったからな、今回は何を奢って貰おうかなー」
「銀ちゃん、私は寿司がいいアル」
「いいですねー、寿司!!」
「くっ、たかが人間如きが何故こんな力を!?」

奢ってもらう食事の内容を話しながら戦う銀時は、それでもウヴァと互角の戦いの繰り広げる。
百戦錬磨の侍である銀時から繰り出される木刀の一振りは、流石のウヴァもまともに受けるという選択肢を持たせなかった。
その太刀振りから間髪いれず、神楽の見た目からそぐわない怪力による一撃が続く。
銀時と神楽からの連続攻撃の間を狙ってウヴァが反撃に出ようと企てるが、その間に新八からの牽制が入り身動きを取る事が出来ない。
そんな万事屋の見事な連携プレーに呆れながら、山崎はメズールから渡された新たなコアメダルを装着するのだった。

「…本当に何者なんだろうな、旦那たちって」
「サガル、何ボーっとしているのよ! 今のうちにこのメダルに変えなさい!!」
「へいへい」


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"タカッ!"、"カマキリッ!"、"チーターーッ!!"。


山崎はメダルを交換する事でカマキリのような鋭い緑色の鎌と、チーターの用に早く動ける黄色い足を備える姿に変身する。
変身を終えた直後、銀時たちの相手をしているウヴァにチーターの足を利用して高速で接近を試みた。
こちらに気付いた時に既に肉薄できていた山崎は、そのまま腕の鎌でウヴァの腹を滅多切りにする。

「うらぁーーーーーーー!!」
「ぐはぁっ!?」

まともに山崎の攻撃を受けたウヴァは、悲鳴を漏らしながらその場から吹き飛ばされる。
そしてその傷口からは複数のセルメダルと、己をを構成するコアメダルの内の一枚が放出されてしまった。
メズールはウヴァから出たコアメダルを、抜けめ無く回収する事に成功する。

「くっ、覚えていろよ!!」

こうして思わぬダメージを受けたウヴァは、捨て台詞を残してその場を立ち去るのだった。







「あ、逃げたアル」
「うわー、悪役のテンプレ的な台詞を吐いていきましたね」
「おい、山崎! 約束通り後で寿司を奢って貰うからな、回ってない方の!!」
「無茶言わないで下さいよ!? せめて回る方で…」
「ねえ、サガル。 寿司っていうのは一体何なのかしら?」

どうにかウヴァを撃退できた事で、山崎たちの間に一段落ついたかのような雰囲気が流れていた。
この屋敷に潜むヤミーの事をすっかり忘れながら…。






あとがき

このSSではメズール様を相棒ポジションにする代わりに、アンクが黒幕ポジションになっています。
まあアンクの情報が全くと言っていいほど無いんで、黒幕のまま出番が無く終わる可能性も有りますが…。



[25341] ペットと60%と最強コンボ(前編)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:89b46bf6
Date: 2011/02/17 00:12

「さっきのウヴァって奴は昆虫っぽい見た目だったよな。 前に現れたカザリは猫みたいだったし、グリードってのは全員違う姿をしているのか?」
「グリードはそれぞれに固有の性質を持っていて、姿形もそれに合わせた物になっているのよ。 ウヴァなら昆虫系でカザリなら猫系といった風にね、ちなみにグリードから産み出されるヤミーも親のそれを引き継ぐわ」
「へー、そんなカラクリがあったんですか。 だから神楽ちゃんにから産まれたヤミーは、猫系になったんですね」

ウヴァを撃退した山崎たちはバカ皇子のペットの世話を再開していた、雑談をしながら分担して檻の掃除を行う銀時たち一同。
そんな中で山崎は先ほど戦ったウヴァが以前に出会ったカザリと、同じグリードである筈なのに見た目が全く異なっている事について質問を投げ掛ける。
山崎の問い掛けにメズールはグリードが持つ性質について語り、横で聞いていた銀時たちも彼女の話に興味を示すのだった。

「ふーん、性質ねー。 じゃあお前は何系なんだよ、虫に猫が出たから鳥辺りとかか?」
「はぁっ、私が鳥系な訳が無いでしょう!? 私は水棲系よ!!」
「何か水棲系って言ってもピンと来ないアルね。 それだとどんなヤミーが出てくるアル、やっぱり魚っぽい姿になるアルか?」
「まあそんな所ね。 もうすぐこの屋敷に潜んでいるヤミーが成体になるから、後で実際に見られると思うわよ」
「へっ、この屋敷のヤミー……? あーーー、そういえばまだヤミーが居た事を忘れていたーーーー!?」

水棲系のヤミーがどんな姿をしてるか気になった神楽に対して、メズールはもうすぐ見る事ができると教える。
その発言からこの屋敷内にまだヤミーが潜んでいる事を思い出した山崎は、思わず絶叫の声をあげるのだった。





「と、兎に角ヤミーを探さないと!? …そうだ、あれを使えば!!」

ヤミーの事を思い出したはいいが広い屋敷内からヤミーの巣を探す手段を悩む山崎は、メズールに呼び出された時に念のために持ってきたカンドロイドの存在を思い出した。
すぐにカンドロイドたちを取り出して起動させ、赤の缶が鷹の姿へ、青の缶が蛸の姿へ、緑の缶が飛蝗の姿へと変形を果たす。
こうして山崎は本来の姿を取り戻したカンドロイドたちに、屋敷に潜むヤミーの捜索を命じるのだった。

「よし、ヤミーを探してくれ!!」

"タカッ!"、"タコッ!"、"バッタッ!!"。

「おー、格好いいアル!!」
「へー、あの缶のロボットはこういう使い方をするんですね」
「…やっぱり使えるわね」

屋敷の敷地内でヤミーを探し始めたカンドロイドたちを見て、メズールはそれらの有効性を再確認する事になる。
山崎も今後のメダル集めのために鴻上から提案された、手に入れたセルメダルを七割譲渡する代わりにライドベンダー、カンドロイドといった装備の支援を受けられる取引に応じた方がいいと考えていた。
しかしそれにはメダル集めを行う当事者であるメズール同意が必要であるため、山崎は彼女に対して説得を試みる事にする。

「なあ、メズール。 やっぱり例の取引に乗った方がいいんじゃないか?」
「駄目よ! 人間なんかにメダルをびた一文渡すわけにはいかないわ」
「そんなに七割って条件が不満なのかよ!? それでバイクとかを自由に使えるんだし、ここは応じた方が…」
「メダルの数なんてどうでもいいわ! わざわざ人間に譲歩するのが嫌なのよ!!」

グリードとしてのプライドから人間に屈する事をよしとしないメズールに、残念ながら山崎の説得は功を奏さなかったようだ。
しかしそう簡単に引く訳にいかないと、山崎はメズールの態度をどうにか変化させようと説得を続ける。
そんな最中、二人が口争っている姿を見ていた新八はふと重大な事実に思い至るのだった。

「あれ、ちょっと待って下さい。 たしか今まで倒したヤミーのメダルは、殆ど鴻上って人に持って行かれたんですよね?」
「そうよ、忌々しい事にね」
「じ、じゃあ…、七割譲渡の約束を結ばなかったら、これからもセルメダルは全部持ってかれて丸損になるだけでは?」
「「あっ!?」」

恐らく鴻上との取引を交わしていない状態でヤミーを倒しても、以前のようにカンドロイドに大半のメダルを取られるだろう。
つまり今後山崎たちが一定量のセルメダルを手に入れるためには、鴻上に頭を下げるしか選択肢が残っていないのだ。

「おいーー、よく考えてみたら俺たち選択肢なんて無いじゃんか!!」
「くっ、癪だけど仕方ないわね…。 サガル、今から私を鴻上って男の所に連れて行きなさい!!」
「へっ、今から!? でもヤミーがまだ…」
「だから行くんじゃない。 あの男と取引しておかないと、ヤミーを倒してもメダルが手に入らないでしょ? それに安心なさい、この感じだとヤミーが孵化するまでまだ時間も有りそうだしね」

取引を結ぶために自分を鴻上の居る場所まで送るように要求するメズール、だが山崎はこの屋敷に潜むヤミーを放っておけないと否定の意を示す。
しかしセルメダルを手に入れるためには取引を交わした上でヤミーを倒す必要があるため、メズールはあくまで今すぐに鴻上の所へ向かおうとする。
結局ヤミーはすぐには目覚めないという話をを信じて、山崎はメズールを鴻上が居る場所へ連れて行くことを決めるのだった。





「じゃあ、旦那方。 すいませんが、ちょっと行って来ますね」
「仕方ねえーなー。 まあ早く戻って来いよ、俺はヤミーとかと戦うのは御免だからな」
「山崎さんが居ない間に、ヤミーの卵は僕たちが見付けておきますよ」
「お前には寿司を奢ってもらうからな、今回は特別アルよ!!」
「早くしなさい、サガル!」

こうして山崎とメズールは一時的にバカ皇子の屋敷を離れて、鴻上の居る鴻上ファウンデーション本社ビルへ向かうのだった。












「アポ無しで来たからちょっと不安だったけど、案外すんなり通してくれたな」

先日の一件から念のために鴻上光生という人物と彼が経営する鴻上ファウンデーションについて調べていた山崎は、鴻上ファウンデーション本社ビルの所在地も既に把握していたのですんなり目的地に着く事が出来た。
この辺りの下準備の良さは、真選組の監査として日々情報収集に明け暮れている山崎ならではだろう。
本社ビルに入った山崎とメズールは以前に会った女性、里中に案内されて会長室の扉をくぐるのだった。

「会長、御指示通りに会長室までご案内致しました」
「ご苦労、里中くん! こうやって直接会うのは初めてだね。 会えて嬉しいよ、山崎くんにメズールくん!! 」
「ふん、私は別に会いたくなかったけどね」
(あれ、何であんな所にケーキが置いてるんだ?)

会長室の中で直に鴻上光生と対面した山崎は、自分と鴻上の間に設定されてい机上にホールケーキの入った箱が置いてある事に気付いた。
そこで以前にモニタ越しで話した時も鴻上は自分と話しながらケーキを作っていた事も思い出し、もしかしてあれもお手製のケーキなのかと推測する。
山崎がそんなどうでもいい事を考えている内に、メズールと鴻上は例の取引について話を開始していた。

「さて、早速本題に入ろう。 此処に来てくれたという事は、よい返事を期待してもいいのかな?」
「ええ、貴方との取引に乗ってやる事にしたわ。 貴方たちは7割、私たちは3割で我慢してあげるわよ」

人間に従う事をよしとしないグリードの誇り故に鴻上との取引を拒絶していたメズールだが、このまま我を通してセルメダルを手に入らないのは困ると考え直した結果、不承不承ながら鴻上に折れることを決意していた。
一度取引を結ぶと決めたら彼女はセルメダル自体にそこまで執着を持たないため、何の交渉も無しに開口一番で7割譲渡の取引承諾を告げる。
実は彼女が鴻上と一悶着起こすのではと心配していた山崎は意外にあっさりと話が進みそうでほっと胸を撫で下ろすのたが、しかし余りにも予想外の方向から話が拗れてしまうのだった。

「ちょ、ちょっと待ちたまえ、メズールくん!? 仮にも君はグリードなんだし、もう少し欲望を前面に出した方がいいじゃないか?」
「「はぁ!?」」

何と本来なら取引が成立した事を喜ぶ立場の鴻上が、要求を唯々諾々と呑むメズールに対して異議を申し立てたのだ。









"タカッ、タカッ!!"
「あ、あそこにヤミーの巣があるみたいですよ!!」
「やっぱり便利だなー、あの缶のロボット」

山崎とメズールが鴻上ファウンデーションへ向かってから暫く経った後、屋敷に放たれたカンドロイドは漸くヤミーの巣を発見していた。
カンドロイドに連れられてとある檻の裏手にまで来た銀時たちの目の前に、無数の卵が今にも産まれるかのように蠢く光景が広がる。

「うわぁ、何か動いているアル!?」
「大丈夫かよ、これ!? もうすぐ産まれるんじゃねえのか!」
「とりあえず山崎さんが帰ってくる前に、僕たちで駆除しといた方がいいですかね?」

肝心の山崎たちがまだ戻らないがこのまま見ていても仕方ないと考えた彼らは、自分たちでヤミーの卵を排除しようと試みる事にする。
しかし不気味なオーラを放つ卵の群れに進んで誰も手を付けようとせず、万事屋の面々は誰が駆除を行うのか揉めてしまう。
結局押し付け合いの末に駆除係を任された銀時は、嫌々ながら自分の愛刀を巣に向けて振り下ろそうとした。





「くっそー、匂いとか付かないだろうな!? まあいい、さっさと片付けて寿司をたらふく…」
「これ、お前たち。 そこで何をしておるぞよ?」
「げっ!? バカ皇子!!」
「おい、こら待て! 今バカって言ったよな、おら!!」

しかし木刀がヤミーの卵に当たる寸前、この屋敷の主であるハタ皇子に見付かってしまい銀時は思わず手を止めてしまう。
どうやらハタ皇子は自分の愛するペットを見て回っている時に、ヤミーの巣の前に集まっている銀時たちが目に入ったようだ。

「てめーら! こんな所で何サボってやがる!!」
「す、すいません!? でも僕たちはサボっている訳では無くて…」

ハタ皇子のお付をしていたじいが、銀時が仕事をサボタージュしていたと決め付けて食って掛る。
よく考えてみたら先ほどより全然仕事を進めていないので、じいの指摘は正論なのだがそれを認めてしまったら本日の収入に影響が出るため、新八はどうにか誤魔化そうと試みる。

「じ、実は掃除中に変な卵を見付けたんですよ!? それで何か怪しそうなオーラが出てたんで、駆除しといた方がいいかなーって」
「はぁ、卵だと? 本当にそんな物が有るのか、ハッタリじゃねぇだろうなーー!!」
「そうなんですよ! ほら、これ!!」
「うわっ、気色悪!? マジかよー、こんな物が何処から入りやがったんだ! おい、さっさとこの不気味な卵を始末しろや!!」
「了解したアル!!」

どうにか自分たちがサボってた訳ではないと証明するために、銀時たちはじいにヤミーの巣に見せる事にする。
自分の眼で不気味に蠢くヤミーの卵を目撃した事により、銀時たちの話を信じたじいはすぐさま駆除を命じるのだった。
銀時たちはじいの指示にこれ幸いと、駆除作業に取り掛かろうとするのだが…。

「待て待て、余はその卵にちと興味があるぞよ。 どんな生物が生まれるか見てみたいから、そっとしておくのじゃ」
「おいーーー、本気か!?」

不幸なことにバカ皇子がヤミーの卵に興味を示してしまい、雇い主に逆らえない銀時たちは手を止めざるを得なくなってしまった。









「メズールくん、もっと自分の欲望に忠実になっていいのだよ! 君は本当にセルメダルを七割も渡してもいいのか?」
「しつこいわね!? 私たちは三割でいいって!!」
「いい加減にしろよ! こっちは急いでいるんだよ!!」

あれから取引内容をそのまま飲もうとするメズールに対して、何故か拒絶の意を示す鴻上という余りに奇妙な対立が続いていた。
屋敷に残したヤミーが気に掛かる山崎はさっさと話を終わらせたいのだが、取引を交わそうとしない鴻上の頑な態度のため悪戯に時間が過ぎてしまう。

「そんなに三割が嫌なら、お言葉に甘えてもっと貰ってあげるわよ! 五割、私と貴方で五分五分と言うのはどうかしら!!」
「いーや、七割っ!!」
「はぁっ!? だからこっちは三割でいいんだって!!」
「…ねえ、サガル。 この人間を殺ってもいいかしら?」

欲望に忠実になれと言う鴻上の言葉に従ってメズールは、試しにこちらの取り分を増やしたセルメダル配分五・五の譲歩を提案するのだが、鴻上は先ほどまでの自分の言葉を忘れたかのようにあくまで七割と拒絶する。
鴻上の訳の解らない行動に山崎は突っ込みの声を叫び、メズールは鴻上に対して殺意を覚えてるのだった。





「全く何なのよ!? じゃあ五割が駄目なら六わ…」
「ハッピーーーーーー、バーーーースデーーーーーーー!!」

メズールから六割という言葉が漏れた瞬間、いきなり鴻上は声を張りながら机の上に置いてあったホールケーキを箱から取り出した。
突然の鴻上の行動に何事かと注目した山崎とメズールの視線は、鴻上がこちらに見せるように持つホールケーキに集中する。
そして彼らはホールケーキ上に書かれた「60%」、つまり六割を意味した文字がデコレーションされている事に気付く。
どうやら鴻上は初めから六・四で取引を成立させるつもりだったらしく、わざわざこのようなホールケーキまで用意していたらしい。

「おーーーい、おっさん!? もしかしてそれを俺たちに見せるために、今まで粘っていたのかよ!!」

実は欲望の権化であるグリードに初めから六・四の数字を掲示しても素直に応じないだろうと考えていた鴻上は、わざと自分たちに有利な七・三の取り引きを提案してから交渉で六・四まで妥協させる腹積もりを持っていた。
しかし予想外な事にメズールがあっさりと七・三の取引に応じてしまったため、仕方なく当初の予定である六・四の数字に落ち着くまで話を長引かせたのである。
得となる七・三の承諾を自分から蹴ってまでしてホールケーキを披露したかったのかと、呆れる山崎とメズールは鴻上に対して白い目を向けるのだった。





あとがき

ギリギリで週一更新に失敗しました…

とりあえず次週でバカ皇子編を完結しますわ!



[25341] ペットと60%と最強コンボ(後編)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:89b46bf6
Date: 2011/02/25 22:13
「…じ、じゃあ取引も成立したし、さっさと旦那方の所に戻ろうか?」
「…そうね、全く無駄な時間を費やした…、この気配は!?」
「どうした、メズール? …てっ、うわぁ!?」
"バッタ!、バッタ!!。"

鴻上ファウンデーション会長室の中、すぐさまヤミーの潜む屋敷へ戻る必要がある山崎とメズールだったが、先ほどまでの鴻上との交渉に疲れ果てたのか未だに室内から離れていなかった。
どうにか気力を取り戻した山崎たちは重い腰を上げて屋敷に戻ろうと動き出すのだが、隣に居たメズールが何かに感付いた様子で歩みを止めてしまう。
彼女の変化に何事かと尋ねようとした山崎も、自分の所持していたカンドロイドが勝手に飛び出してきてしまいそれ所では無くなってしまった。

"おい、ザキ!? てめー、何時まで油を売ってるんだ!!"
「この声は旦那!?」
"山崎さん、早く戻ってきてください! さっきヤミーが産まれて今大変な事に…、げっ、こっちに来た!?"
「新八くん、大丈夫か!! おい、これって…」
「今、ヤミーが産まれる気配を感じたわ。 あの屋敷のヤミーが目覚めたようね」

山崎の目の前でバッタ形態に変形したカンドロイドから銀時の声が聞こえてきた、どうやら屋敷に放ったカンドロイドの通信機能を利用して連絡を試みたようだ。
そしてカンドロイドから今度は新八の声が発せられ、山崎は彼の知らせにより屋敷のヤミーの目覚めが知らされる事となる。

「ヤバイ、さっさと屋敷に戻るぞ!!」
「解っているわよ!」
「では、しっかりと稼いで来てくれたまえ! 山崎くんにメズールくん!!」

屋敷で窮地に陥っている万事屋の面々を救うため、山崎とメズールはすぐさまバカ皇子の屋敷へ向かうのだった。













少し時を遡り、銀時たちがバカ皇子によってヤミーの卵の駆除を止められた所まで戻る。

「ね、ねぇ、ハタ皇子? こんな不気味な卵から何が産まれるのか解ったもんじゃないですよ、やっぱり早く駆除した方が…」
「そう邪険する物ではない、命の価値は等しく同じと言うではないか。 それにもしかしたらこの異様な卵に見合わない、可愛い生物が生まれるかもしれんぞ?」
「いーや、この卵から怪物しか出てこねーって!? 悪い事は言わないから始末しとこうぜ、バカ皇子さんよー」
「バカって言ったよね、今ハッキリ!!」

一応、雇い主には逆らえない銀時たちはどうにかバカ皇子を心変わりさせようとするのだが、当人は全く意思を変えるつもりは無いようだ。
肝心の山崎たちも未だに帰ってくる気配が無く、卵は今に孵化するかのように激しく蠢いている状況に銀時たちは仕方なくヤミーの事を伝える事を決める。

「ハタ皇子、実はこの卵の中にはヤミーという怪物が居るんですよ!!」
「ヤミー? 聞いたこと無い生物じゃな。 一体どんな生物が生まれるのか」
「ヤミーって言うのは、なんか欲望を食って成長するんだよ! んで、この卵はあんたのペットを集めたいっていう欲を餌にこーんなに成長したんだとさ!!」
「卵が孵ると、魚っぽい怪物が産まれるらしいアル」
「はー、ヤミーなんて聞いたことねえぞ!? てめーら、いくらこのバカ皇子がバカ面下げてるからって、そんなフカシに騙される程バカじゃねえぞ!!」
「おい、くそじじい!? お前まで余をバカ呼ばわりとはいい度胸だなぁ!!」

必死の説得も空しくヤミーの存在を信じないハタ皇子とじい、やはりいきなり自分の欲望から化け物が生まれたと言っても信じないようだ。
銀時たちはどうやって説明すれば解って貰えるか悩むのだが、そうこうしている内に時間が過ぎてしまい…。

"ピキッ!!"

「あれ、なーんか嫌な音が聞こえたような…」
「銀ちゃん、卵に罅が入っているアル!?」
「おおー、もうすぐ生まれるのか!!」

"ピキピキ……、パリンッ!!  ギギャーーーーーーーー!!"

「ヤミーが産まれたーーーーー!?」
「うわぁ、本当に化け物が出たーーーーー!!」

バカ皇子の欲望を糧として遂に成体まで成長したヤミー、鋭い牙と鳥類の翼のように大きなヒレを持つトビウオヤミーが卵から殻を破って出てくる。
トビウオヤミーは数十、数百と続々と卵から飛び出していき、屋敷の敷地内がヤミーに埋め尽くされてしまうのだった。





「バカ皇子ーーー!? てめーがグズグズしてたから、ヤミーが孵っちまったなじゃねぇかよぉおおお!!」
「うううわぁ、銀さん!? こいつら噛み付いてきましたっ!!」

トビウオヤミーに囲まれてしまって身動きが取れない銀時たち、こちらに襲いかかってくるヤミーを追い払うのに精一杯のようだ。
大き目の魚程度のサイズでしかないトビウオやミーたちは一体一体はさほど強くないのだが、兎に角数が多く防戦一方の状態が続いてしまう。
しかも魚型の癖に自前のヒレを鳥のように使って自由自在に空を滑空するため、上方向からの攻撃にも気を回さなければならないようだ。

「お前たち、この可愛い魚たちが余の欲によって育てられたというのは本当か?」
「はぁーーーーっ、カワイイ魚たちだと!? 脳味噌腐ってんじゃねぇのか、バカ!!」
「だからさっきから言っているじゃないですか、これは貴方の欲望から産まれたヤミーだって! 人の話はしっかり聞いとけや、このバカ!!」」
「クソバカーーーーっ!? またテメーのペット好きが原因かこんな目に逢っちまったじゃねえか、どうしてくれるんだ!!」
「てめーら、後で覚えていろよォォ!? まあ今は特別に捨て置いてやろう、今はこの状況を脱するのが先決じゃからな」
「おい、何をする気だ!?」
「この魚たちが余の欲から産まれたのなら、こやつらは余の息子と言えるのでないか? ならきっと母親の言う事を聞いてくれる筈じゃ、さあ息子たちよ! 余の腕の中に飛び込むのじゃ!!」

万事屋たちから離れてトビウオヤミーの前に立ったバカ皇子は、彼の奇行に驚く銀時たちを尻目に迫ってくるヤミーを迎えるかのように両手を広げた。
自分の息子と称したヤミーたちがバカ皇子のに群がっていき、そして当然の如く彼の全身はトビウオヤミーによって噛み付かれてしまうのであった。

「痛ーーーーーっ!? ぐぎゃっ、噛み付かれたっ! これお前たち、早く余を助けるのじゃ!!」
「うっせーよ、バカ! こいつらはお前のカワイイ息子なんだろ、だったら精一杯遊んでやれ!!」

トビウオヤミーに覆い尽くされて殆ど姿が見えなくなったバカ皇子からの救援の声を無視して、銀時はトビウオヤミーたちとの戦いを続けた。












「よし、着いたぞ…、はぁァァァ!? どんだけヤミーが居るんだ、特撮物の怪人は一話に付き一体が基本じゃねえのかよォォォォ!!」
「あら、中々の量ね。 流石は私が生み出す筈のヤミーだわ」
「うわー、どうしよう。 こんなに量のヤミーを相手に出来るのか…ん、あれは旦那方か!?」

途中で拾ったライドベンダーに乗って漸く屋敷に戻った山崎たちの目の前に、卵から孵ったトビウオヤミーが屋敷中に広がっていた。
広い敷地を持つ屋敷内で産まれたおかげで、幸運な事にまだヤミーは外に出てはいないようだがそれも時間の問題のようである。
屋敷に群がる大量のトビウオヤミーを呆然と眺めていた山崎は、ヤミーが集中して群がっている箇所を見付ける。
よくよくヤミーが固まっている場所を見てみると中心で銀時たちが戦っているではないか、銀時たちはヤミーの相手に手一杯になっているらしくこちらの到着にも気付いていないようだ。

「くそっ、こいつらを何とかして助けないと! メズール、メダルを貸せ!!」
「ほらっ、精々ガンバりなさい」


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


「変身っ!!」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。


腰に巻いたオーズドライバーに3枚のメダルを嵌めこみ、例の歌とともに山崎はタトバフォームへと変身を果たす。
そしてそのままヤミーに囲まれている銀時たちを救出するために、エキゾースト音をかき鳴らしながらライドベンダーを走らせていった。





"ブルルルルルルーーーー!!"
「おらぁーーーーーーーー!!」

万事屋一同とハタ皇子たちを囲むトビウオヤミーに向けて山崎の駆るライドベンダーが突っ込み、ヤミーたちはまとめて吹き飛ばされてしまう。
トビウオヤミーたちの物量に押しつぶされ掛けていた銀時たちは、山崎の救援のおかげでどうにか命を救われる事になった。

「大丈夫ですか、旦那方!!」
「山崎さん!! よかった、助かった…」
「おお、やっと来たアル」
「ザキ! 遅いぞ、てめーー!! ヒーローが遅れてくるのはTVの中だけ沢山だ!!」
「うわっ、また変なのが来やがったぞ!?」

銀時たちの無事を確かめた山崎はライドベンダーから降りてトビウオヤミーたちと対峙したが、凄まじい数を誇るトビウオヤミーに対して苦戦してしまう。
正面から襲い掛かるヤミーを殴り飛ばしたと思ったら何時の間にか足に噛み付かれており、それを振り払ったら他のヤミーから上空から突っ込んで来る始末だ。
流石にこの数は手に余ると考えたかのか、山崎は銀時たちの手を借りようとするが…。

「くそっ、このままじゃ手が足りないぞ! 旦那方、ちょっと手伝って…、ええェェェ!?」
「よーし、後は主人公に任せて俺たちは退散するぞ!!」
「じゃあ後はよろしくお願いしますね、山崎さん!」
「ガンバレヨー、ザキ!!」
「何だか解らないが今がチャンスだ、さっさと逃げさせ貰うぜ!!」
「これ、じい!? 余を置いて行くな!!」

薄情な銀時たちはヤミーが山崎に引き付けられている内に、既に安全圏へと脱出を試みていたのだ。
こうして山崎は多数のトビウオヤミーを相手に、哀れにもたった一人で挑む事になる。











「ああ、山崎さんが危ない!?」
「おいおい、大丈夫かー、あいつ?」
「流石にこのままじゃサガルが持たないわね…」

先ほどの位置から少し離れた物陰に避難した万事屋の面々は、倒しても倒しても沸いてくるトビウオヤミーの群れに山崎が劣勢に追い込まれていく様を目撃していた。
ちなみに一緒に逃げてきたハタ皇子とじいは既に屋敷から脱出したらしく、姿が見えなくなっている。
何時の間にか銀時たちと合流していたメズールは、消耗していく山崎の姿に何かを悩んでいるようだ。

「仕方ないわ、こうなったらあれしか手は無いわね…。 サガル、これを使いなさい!!」
「これは…、新しいメダルか! よーーしっ!!」

ヤミーの猛攻に劣勢気味の山崎を見たメズールは何かを決意し、山崎に向かって2枚の緑色のメダルを投げ渡した。
メズールから受け取った2枚のコアメダル、先の戦いでウヴァから奪い取ったらクワガタメダルとカマキリメダルをドライバーに嵌め込む。
最初にセットされていたバッタメダルと合わせて3枚のコアメダル、緑色の昆虫系メダルが山崎の腰に揃う事になった。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"クワガタッ!"、"カマキリッ!"、"バッタッ!!"。

"ガッガッガタキリ、ガッ、ガタキリバッ!!!"


「ぐぁーーーーーーーーーーーーーー!!!」


雄叫びと共に全身から緑色のオーラを発した山崎は次の瞬間、クワガタの角を模した頭部、カマキリの鎌を備える椀部、バッタの跳躍力を発揮する脚部を持つガタキリバフォームへと変身を果たした。
変身を完了したと同時にそのまま叫び声をあげてトビウオヤミーに突っ込んでいく山崎、すると彼の体が二人・四人、八人と増えていく。
最終的に数十人程までに分かれた山崎たちが、それぞれに分かれてヤミーと戦い始めるのだった。










「はぁーーーーーーっ!! 山崎さんが分裂したーーーーーーーっっ!?」
「へー、中々の威力ね。 ウヴァのメダルを使ったコンボは」
「おい、メズールさーん!? 一体何なんだよ、あれは!!」

メズールから渡されたメダルを装着した山崎が突然、目の前で数十人に増えていく光景に新八は思わず絶叫の声をあげてしまう。
内心では彼と同じように驚いていた銀時は事情を把握しているらしいメズールに説明を求め、彼女は仕方なく説明を行う事にする。

「同じ色のコアメダルを3枚揃えると凄まじい力を発揮するのよ、これをコンボと言うわ」
「おおー、そんな必殺技があったアルか!!」
「ふーん、つまり同色が揃うと大当たりが発生して、今の山崎は確変突入状態って訳な! ったくー、そんな切り札があるならさっさと使っとけよ!!」
「まあコンボは余りに強力だから、サガルの体が耐えられるか解らなかったのよね。 サガル、ちゃんと生きて帰って来れるのかしら?」
「ちょっと待て、そんなヤバイ物を山崎さんに使わせたのかよっ!? それを知りながらよくコンボなんて使ったなー、山崎さん」
「あら、コンボの事ならサガルには伝えていないわよ」
「説明も無しにやらせたのか、お前はァァァァ!?」

実は山崎にコンボの危険性を伝えていなかったメズール、どうりで山崎が何の躊躇いも無しにコンボを行った筈である。






数十人に分かれた山崎たちがトビウオヤミーたちを蹴散らしていき、次々とヤミーがセルメダルへ還っていく。
劣勢の状況に追い込まれたヤミーたちはこのままではやられると考えたのか、生き残りが一箇所に集まっていって国語の教科書に載っていた話のように一匹の巨大魚を形作るのだった。
巨大トビウオヤミーが大口を開けながら自分に迫ってくるのに対して、それぞれの山崎たちはにオースキャナーを手に取りオーズドライバーに嵌められたメダルへ滑らしていく。


"Scanning Charge!!"、"Scanning Charge!!"、"Scanning Charge!!"、"Scanning Charge!!"、"Scanning Charge!!"…。

「「「「「せいやーーーーーーーーーっ!!!」」」」」


山崎たちが次々にメダルから力を引き出し、巨大トビウオヤミーに向かって一斉に跳び蹴りを放っていった。
巨大トビウオヤミーがこちらに向けて広げられていた口から内部に飛び込み、山崎たちは体内からヤミーに攻撃を加えていきセルメダルへと還していく。
自分の腹の中に入られた巨大トビウオヤミーは何も抵抗ができずに削られていき、最終的に大量のセルメダルを放出して爆散してしまった。






「つ、疲れた…」
「山崎さん!!」
「どうやら生きているようね。 コンボに耐えられる器、以外に拾い物だったかも…」

コンボを使用した事によるダメージとヤミーを倒した事で気が抜けた事が合わさってしまい、元の姿に戻った山崎はその場に倒れ伏してしまう。
見事にコンボを耐え切った山崎の姿に、メズールは満足げに微笑むのだった。










「よぉ、実験とやらは上手くいったようだな? 中々派手にやったじゃねえかよ、アンクさんよー」

とある薄暗い部屋の中に居た人影に向けて、派手な着物を身に纏い片目に包帯を巻き付けている男が話し掛けてきた。

「高杉か…。 ふんっ、あの程度ではまだまだ不足だな。 一応メズールのコアから力を引き出す事は成功したが、コアメダルの本当の力はあんな物じゃない!!」

姿形や背中に生えた巨大な翼が鳥類をイメージさせる赤いグリード、アンクが不満そうに高杉へ返事をした。
どうやら彼にとっては不満な結果だったらしく、その口調から何処と無く苛つきを感じている事が解る。

「ほー、それは楽しみだな。 早く本当のコアメダルの力とやらを見てみたい物だぜ…」
「そう遠くない内に見せてやる、他のグリードたちとオーズが思惑通りに動いているからな。 まあわざわざ俺のコアメダルを使ってまでお膳立てをしたんだ、動いて貰わなければ困るが…」
「くっくっく…、全てはお前さんの掌の上って訳か?」
「ああ、俺が全てを掴むために精一杯踊って貰うさ!!」

アンクが右腕を上げて何かを掴むかのように握り締め、高杉の低い笑い声が部屋内に不気味に響き渡った。





あとがき

更新完了、ちょっと遅くなってすいません。

それで次の更新時にそろそろチラ裏かその他板に移ろう思うのですが、
ついでに1話からの直しも行いたいので次も一週間以上掛かるかもしれません…。

話は変わりますが、いよいよシャウタコンボの登場ですね!!

水中戦にしか使えない残念フォームだったらどうしよう…。


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