■プロローグ
子供は3人授かります。
1人は、帝に…
1人、は皇后に…
そして、もう1人は、位人臣を極めるでしょう…。
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その年、京の都には重い空気に包まれていました。
折から病に臥せっていた、今の主上の母親である、藤壺の女院さまが、ついに亡くなったのです。
故院の悼み涙する人々は数知れず、都ばかりか近隣諸国に至るまで弔いの重い空気に包まれていました。
そして、此処にも…………
並ぶものの無き、栄華を誇る1人の大臣が、周りの人々以上の悲しみを、胸に秘めて過していたのでした。
(何故、私を置いて逝ってしまわれたのですか? 女院さま……。)
今の彼には、光る君と呼ばれた嘗ての華やかさは、形も有りませんでした。
(嗚呼…… 私は此れから、何を支えに生きていけば、良いのでしょう……)
終わることない悲しみが続き、今まさに心が折れそうな、そのような中………
1つのめでたい知らせが、彼の元に届けられました。
「紫の上が御懐妊!!」
この重い空気が漂う宮中に、ささやかながら、明るい話題をもたらすのでした。
今まで紫の上には、子供の出来る気配が全く無かったのに…… あの御方が、御隠れになった直後に授かるとは……。
これも、神仏の御導きなのであろうか?
しかし、以前の占いによると、授かる子はたしか3人のはず……
既に3人の子を授かっているというのに…… これは一体どういう事なのだろうか…?
そこで源氏の大臣は、もう一度占って貰うことにしました。
…
……
………
もしかすると……
もしかすると…… この子は、あの御方の生まれ変わりかもしれない……!
何時しか源氏の君の心には、再び希望の灯が蘇っていました。
そして主上の許しを得ると、宵闇の中、帰宅の途に着くのでした………。
『ぬばたまの闇より暗き道を逝き再び逢へる暁を待つらん』
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子供は3人授かります。
1人は帝に…
1人は皇后に…
そしてもう1人は位人臣を極めるでしょう…。
…………もしも4人目が生まれたのなら?
それは、遠き西方浄土よりの来訪者。
あなたとその家族に、新たな道を示すことになるでしょう…。