2011年2月19日12時15分
昨季限りでJ1横浜マを戦力外となった元日本代表DFの松田直樹(33)が、長野県松本市を本拠とするJFLの松本山雅(やまが)で再出発した。J1より二つ下のカテゴリーで、J2昇格という新たな目標に向かって走っている。
12日に静岡県沼津市であったJ2横浜FCとの練習試合。松田の口から盛んに指示が飛ぶ。始動から約1カ月。表情は充実感に満ちていた。「サッカーが楽しい。プレーできる幸せを感じてやっている。ここに来てよかった」
松本山雅のようなJリーグ準加盟チームや、企業チームが混在するJFLは、観客が500人に満たない試合もある。故郷群馬県の草津などJ2からも誘いがあったが、断ったという。2002年W杯代表で日本代表として40試合、J1では通算385試合に出場し、名実ともに横浜マの顔だった選手の決断は、周囲には意外に映った。
松田は「松本山雅は目標が決まっているから」という。昨季7位で、J2昇格条件の一つである4位以内に入れなかったチームは、今季にかけている。昇格の切り札として誘われ、心が動いた。さらに「決め手になった」と話すのが、約2万人収容のホームスタジアムと、昨季JFL新記録となった1試合平均5080人の集客力だ。地元の熱心さに触れ、「山雅のファンはすごい」と実感する。
もっとも練習環境は横浜マとは「天と地の差」と笑う。専用の練習場もクラブハウスもない。公園の広場で練習することもある。それでも「みんな純粋に頑張っている。負けていられない」。単身赴任で洗濯もするようになった。
加藤善之GMは「組織、環境など未成熟なクラブでチーム作りの一端を担うことは、これまでのキャリアとは違う貴重な経験になるだろう」と話す。契約期間は2年。松田は「今年J2に昇格し、松本山雅を全国区にしたい」と熱い思いを語った。その先に、このチームでのJ1復帰という願いがある。(上嶋紀雄)