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菅首相:退陣論拡大も強気 98年の「金融国会」念頭に

菅直人首相=国会内で2011年2月16日、藤井太郎撮影
菅直人首相=国会内で2011年2月16日、藤井太郎撮影

 政府・民主党は28日の衆院本会議で11年度予算案を可決し、参院に送付することを目指す。3月1日にずれ込む可能性もあるが、年度内成立は確実だ。しかし、予算関連法案は成立の見通しが立たず、衆院採決を先送りする方針だ。民主党内では菅直人首相の退陣論が拡大しているが、首相は関連法案が成立しなければ批判は野党に向かうと見て、法案修正の余地を残しつつ、長期戦覚悟で打開の道を探る強気の政権運営を続ける。展望が開けないまま、「6月解散」もちらつく。【田中成之】

 「あれだけは理解できない」。菅首相は23日の党首討論に備えた打ち合わせで側近らに語気を強めた。予算執行に必要な予算関連法案の成立を阻止し、衆院解散・総選挙を迫る自民党へのいら立ちだった。

 党首討論ではその思いを爆発させ、「解散、解散と言うが、予算も通さないで解散することが本当に国民にプラスになると思って主張されているのか」と自民党の谷垣禎一総裁を激しくなじった。

 野党からの解散圧力に加え、民主党内からは退陣圧力がかかる。菅政権を批判する小沢一郎元代表らだけでなく、首相支持派からも首相辞任と引き換えに野党の協力を得る「話し合い退陣」論がくすぶる。しかし、仙谷由人代表代行が公明党幹部に打診したとの情報が流れた18日、首相は側近にこう漏らした。「これで(表に出たことで)、この話はなくなったな」

 首相はあくまで強気だ。衆院採決を先送りする子ども手当法案などの修正協議で、公明党や社民党の協力を得る道をギリギリまで探る方針だ。

 首相が粘りの国会運営を見せるのは、野党・民主党代表だった98年の「金融国会」で「政局より国益を優先」させ、与野党協議に応じて政府・与党に金融再生法案を丸のみさせた体験からだ。首相が野党に繰り返し「責任ある行動」を求めるのもこのためだ。

 95年に米国でクリントン政権と野党・共和党主導の議会が対立し政府機関が一時機能停止に陥った例も念頭にあるようだ。この時は野党も批判を浴び、「(予算の財源を確保する)特例公債法案を成立させないと、やがて批判は野党に向かう」(政府高官)との読みがある。

 「首相は『自分が辞めても何も状況は変わらない』と思っている。予算関連法案が通らなくても、4月の統一地方選で負けても絶対に辞めない」。首相の心境を周辺はこう解説する。

 このまま野党の協力が得られずに国会終盤を迎える公算は大きい。その場合に浮上するのが、国会会期末(6月22日)に合わせた「6月解散・7月総選挙」説だ。6月末には税と社会保障の一体改革案のとりまとめと環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の参加判断の期限を迎える。民主党幹部は「首相は消費税引き上げとTPP参加を掲げて解散するのでは」とみる。

 25日夜には小沢元代表に近い輿石東参院議員会長や平野博文元官房長官らが大阪市内で会食。「政権運営は八方ふさがりだが、菅首相は辞めない」と分析し、衆院解散を警戒していくことを確認した。

毎日新聞 2011年2月27日 21時37分(最終更新 2月27日 21時44分)

 

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