私の広瀬川インタビュー
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日時:平成22年11月12日(金)
場所:イタリアンレストラン「アルフィオーレ」
聞き手:佐藤幸輝(仙台市建設局広瀬川創生室)



9.荒木先生からのメッセージ

聞き手

では最新作の話をお伺いします。
先日(2010年11月)、第7部「SBR」の第22巻が
発売されました。その中で、
我々行政機関で働く職員にとって
非常に印象的なエピソードがありました。
この世の不幸をどこか自分たちの住む地域とは
別の世界へ追いやるという絶大な能力を得た
アメリカ大統領が、世界中のすべての人間が
幸せになることはありえないので、
自分は愛国心に基づいて、この能力を使って
正しい行いをしていると主張するシーンがあります。
行政職員としては、より多くの市民が幸せを
感じられるような施策を行うことを考えながら、
一方ですべての市民にとって満足のいく施策は
難しいというジレンマがあり、
やはりこの大統領の主張にも
肯かされるところもあるように感じてしまいました。

  「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻

<「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻>

荒木さん

予め断っておいた方がいいと思いますけど、
このヴァレンタイン大統領は、悪役ですからね(笑)。
参考にしないで(笑)。でも、実はある意味では
その主張が正しいという悪役にしたかったんです。

聞き手

そうですよね、実際、ストーリー上では主人公が
そのシーンで「あれ?間違っていたのは僕?」
みたいな感じで…

荒木さん

そうそう、揺れています。

  「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻

<「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻>

聞き手

先生が「悪役」と言われるのでそのセリフを
真に受けてしまってはダメなんでしょうが、
リーダーシップとしてはありなのかな、とも思えますが。

荒木さん

いや、現実世界ではありだと思いますよ。
僕自身もこの大統領のようなリーダーシップの方が、
本当は好きです。

聞き手

上に立つものとしては、やはりそうした覚悟を
背負う必要があると。

  荒木さん

荒木さん

そう。全員にとっての幸せが無理なら、やはりどこかに
視点を置いて考えなければいけないでしょうから。
結局物事において絶対的に正しいとか悪いことって
そんなにないと思います。だからこそ、
もうここだという線引きが重要だし、
政治はそのための仕事でしょうから。
それで、覚悟を持って決めたからにはもう、
突き進んでいくべきだと思います。
ちょっと何か言われたくらいで心が折れたり、
前言撤回したりすることは良くないなと思います。

聞き手

そういう意味では、ヴァレンタイン大統領は、
政治家としてはOKですよね。
もうこのまま行くしかない。

荒木さん

悪役ですけどね(笑)。

聞き手

一方で現実世界は、いろいろな価値観がぶつかり合う
本当に難しい時代です。
今の政治にヴァレンタイン大統領のような精神を
求めることも厳しいかもしれませんが、
それでも寄って立つべき信念は必要ではないか
と思います。大統領は「愛国心だ」と言っていますが、
私たち一市民として持っておくべき信念としては、
先生の作品のテーマにつながる話かと思いますが、
改めてお聞かせいただけませんか。

荒木さん

愛国心とまではいかなくても、
やはり家族を守ろうという感情や、
あるいは自分が生まれた故郷や今暮らしている地域
への想いなどに繋がる部分だと思います。

  「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第 巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第29巻>

聞き手

「ジョジョ」が「人間賛歌」をテーマとしている
といわれる由縁ですね。やはり先生の仙台への想いも
そこから来ているんですね。

荒木さん

そこの辺を…自分としては、おろそかにして
欲しくないですし、おろそかにするような人には
上に立って欲しくないと思いますね。

聞き手

仙台市役所職員は自分の住む街を思う気持ちは
もちろん持っていると思いますが、その上でさらに
覚悟を持って仕事に臨まなければいけませんね。

荒木さん

そうですね。厳しい時代ですから、
風当たりは強くなるかもしれませんが。

聞き手

そこはやはり、「ジョジョ」を愛する市職員としては、
作品で描かれているような「『正義』の輝きの中にある
『黄金の精神』」を参考にしたいと思います。

  「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第47巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第47巻>

荒木さん

「ジョジョ」作品の中での戦いだと、
最後まで勝ち残るのは、
多分一人二人くらいしかいない世界ですし、
また現実も相当厳しい時代ですが、頑張ってください。

聞き手

ありがとうございます。

聞き手

さて、広瀬川ではNPO団体が約20年振りに
貸しボートを復活させたり、
市民団体が中心となって企業や大学などと
流域一斉清掃活動などを行ったりと、
市民の皆さんがいろいろな活動を行っています。
最後に、先生から広瀬川に関わる活動を行っている
皆さんへ応援のメッセージをいただけますか。

  NPO法人広瀬川ボートくらぶによる貸しボート事業の様子

<参考 NPO法人広瀬川ボートくらぶによる貸しボート事業の様子>

荒木さん

広瀬川だけでなく、こうした自然環境を守っていく上で、
これからの時代は行政だけで何もかもやっていくことは
不可能だと思います。
昔は、例えば神社の落ち葉掃除などを
近隣に住む人たちが自然にやっていましたよね。
先ほど愛国心の話もありましたが、
そこまでいかなくても
市民が自分の住む街を大切に思う気持ちから、
ボランティア活動などを行うことは
とても大切なことだと思います。
そうした活動をされている方が広瀬川に
たくさんいらっしゃることは、
素晴らしいことだと思います。

聞き手

市民一人ひとりがそうした地域を愛する気持ちを持って、
連携していければ広瀬川だけでなく仙台市も
さらに素晴らしい街になりますよね。

荒木さん

そうですね。
誰か一人の力で何とかなるものではないと思いますから。
そのためにも、みんなで芋煮会をしたりして
仲良くなったり、付き合いが広がっていけば
いいですよね。何よりも楽しいし(笑)。

聞き手

芋煮会はコミュニケーションを深められるだけでなく、
広瀬川をこれからも守っていくことにつながりますね。

荒木さん

そういった活動がさらに広がっていくことを
願っています。僕もそのために何かできることが
ありましたら協力したいと思います。

聞き手

ありがとうございます。
先生の広瀬康一君にこめられた想いに負けないように、
私たちもこれから頑張りたいと思います。
今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。

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