社説:党首討論 双方が歩み寄る意識を
菅直人首相と谷垣禎一自民党総裁らによる初の党首討論が行われた。税と社会保障の一体改革について首相は政府・与党案が決まった際は協議に参加するよう谷垣氏に確約を求めたのに対し、谷垣氏は「八百長相撲のような話には乗れない」と衆院解散を求め、突っぱねた。
議論は入り口で終わってしまった印象だが、税と社会保障を重点的に取り上げて応酬した点は半歩前進だ。首相、谷垣氏とも今後はさらに踏み込んだ見解を示し、予算案の中身も含めた政策論争を活発化すべきである。
首相が昨年6月に就任して以来党首討論はずっと行われず、実に昨年4月以来の開催だ。来年度予算案や関連法案の行方は見えず、さきの「名古屋ショック」にみられるように2大政党は存在感を発揮できずにいる。政治に対する党首の責任感が問われる中での討論だった。
谷垣氏は一体改革問題を取り上げ、政府が4月にまとめる社会保障制度改革案は消費増税の積算根拠となり得る具体案とするよう、首相に確約を求めた。
これに対し、首相は6月に一体改革案が決まった際は協議に応じるよう谷垣氏に求め、議論は平行線をたどった。首相は今後、より踏み込んで政府・与党案のイメージを説明すべきだ。一方で谷垣氏も民主党の公約などを理由にかたくなに協議を突っぱねるべきではあるまい。
また、首相は税制抜本改革の11年度までの法制化を所得税法が記していることから、来年3月までに法的な対応を目指すと発言した。消費増税について「実施前」には国民の審判を仰ぐと説明したが、法成立後、実際の消費税引き上げまでの間に衆院選を行うと受け取られる言い回しだった。
「判断を仰ぐ」と言うのであれば、やはり法成立前の選挙が前提だろう。政府・与党は明確な見解を示すべきである。
一方、山口那津男・公明党代表は年金、財源など民主党の政権公約は破綻していると批判、小沢一郎民主党元代表の証人喚問を求め、首相との対決色を強調した。
もちろん、この日の討論は議論の端緒に過ぎない。来年度予算案の攻防の焦点である「子ども手当」の制度論など、党首討論は与野党の主張の違いや共通点について認識を深める好機となる。与野党議員有志は国民の関心を高めるため毎週、午後8時から開催するよう提言している。大いに耳を傾けるべき意見だ。
予算案修正に向けた与野党協議を行う環境も早急に整備しなければならない。国会が混乱し、政治が停滞するかどうかの瀬戸際である。
毎日新聞 2011年2月10日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20110210ddm005070127000c.html
今日は少し前の社説を元に考えてみたいと思います。これは菅氏が初めて党首討論に応じた時の社説です。何故、この社説を今日になって選んだかというと…。
ネット上に出回っているこういった写真を見たからです。
×アンサー・タイム
○クエスチョン・タイム!
×詰問・追及・攻撃 (手書 ×対決・ケンカ)
○真摯に議論したい姿勢でお尋ね
×感情(怒り・苛立ち)を表に
○感情(本当に進めようよ!)を表に
×無難に乗り切る時間にしよう
○国民に示す時間にしよう
×政策の比べあい
○リーダーの器の比べあい
(どちらが国を託すにふさわしいか)
国民に見せたいイメージ
★「大局を見つめる菅」 vs 「政局しか見ない谷垣」
★「真剣に議論を呼びかける菅」 vs 「拒む谷垣」
★「国を考えてる民主」 vs 「党を考えてる自民」
★「菅の質問に答えず、言いたい事を言う谷垣」(最後は推測)
書かれている内容は上の通りです。今日は、この菅氏の”国民に見せたいイメージ”に沿った社説を書いているのかどうかのチェックをしてみましょう。
★「大局を見つめる菅」 vs 「政局しか見ない谷垣」
★「真剣に議論を呼びかける菅」 vs 「拒む谷垣」
★「国を考えてる民主」 vs 「党を考えてる自民」
★「菅の質問に答えず、言いたい事を言う谷垣」
先ずは、毎日新聞の社説からです。
首相は政府・与党案が決まった際は協議に参加するよう谷垣氏に確約を求めたのに対し、谷垣氏は「八百長相撲のような話には乗れない」と衆院解散を求め、突っぱねた
この部分に関しては毎日新聞は菅氏の注文通りですよね。
大局を見つめる菅…協議に参加するよう谷垣氏に確約を求めたのに対し
政局しか見ない谷垣…衆院解散を求め、突っぱねた
見事に”注文通り”ですよね。他の新聞の社説も見てみましょう。
朝日新聞ではどうなのでしょう。
一体改革が急務であるという認識は共有しながら、ともに解決策を探ろうという機運には程遠い。角突き合わせるばかりの与野党の現状に落胆を禁じ得ない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20110210.html
少し捻ってきていますね。読売新聞は?
双方とも統一地方選を意識し、従来の主張の言い合いに終始した。これでは何度やっても政策論議は深まるまい。建設的な論戦になるよう工夫してもらいたい
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110209-OYT1T01089.htm
こちらも、少々の捻りを加えてきていますよね。ただし、”建設的な論戦になるよう工夫してもらいたい”とはどんなイメージ戦略を用いるのでしょうか?政策論争では菅氏は谷垣氏に勝てないのですからね。
これからも党首討論を開き、日本が何をなすべきかを論じ合い、国益や国民益の実現に党派を超えて協力してほしい
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110210/plc11021003030002-n1.htm
こちらは、ダブル捻りといった感じでしょうか…。とにかく「国益や国民益の実現に党派を超えて協力してほしい」とは麻生政権の時に言っていた事とは大違いですよね。
これは、”国民に見せたいイメージ”という部分を少しばかり格好良く書いているだけですよね。
次のパラグラフに関しても見てみましょう。
税と社会保障を重点的に取り上げて応酬した点は半歩前進だ。首相、谷垣氏とも今後はさらに踏み込んだ見解を示し、予算案の中身も含めた政策論争を活発化すべきである。
このように書かれていますよね。全く無茶な注文を出しますよね。菅氏のカンニングペーパーに何と書かれているのか見ていないのでしょうか?
×政策の比べあい
○リーダーの器の比べあい
(どちらが国を託すにふさわしいか)
このようにかかれているのです。政策の比べあい等は以ての外だと言う事なのですから。
とにかく”政策論争ではなくイメージ戦略”で乗り切るつもりなのです。
次も見てみましょう。
2大政党は存在感を発揮できずにいる。政治に対する党首の責任感が問われる中での討論だった。
これは、ちゃんとカンペ通りに”それぞれのリーダーの器を比較する”という事を分かっていますね。
朝日は何と書いているでしょうか?
先の代表質問で、衆院解散が与野党協議に応じる条件だとハードルを上げた自民党の谷垣禎一総裁は、党首討論でも同じ主張を繰り返した。
読売は何と書いているでしょうか?
谷垣氏は、民主党の政権公約が破綻しており、消費税導入も前提にしていないと指摘した。6月に消費税を含む一体改革案をまとめた後、9月に公約を見直すというのは手順が逆だと批判した。
産経は何と書いているでしょうか?
遅きに失したといえるが、自民党の谷垣禎一総裁らとの討論で、菅政権が真正面から取り組むべき課題が浮き彫りになった。
このように、どの新聞も”リーダーの器の比べあい ”を踏襲していますよね。
それにしても、「何故、議論が噛み合わなかったのだろう」と党首討論を見た方の多くが疑問に感じた事だと思いますが、当然の事なのですよね。
×アンサー・タイム
○クエスチョン・タイム!
これが、全ての答えです。質問に対してはアンサー(答え)述べるのではなく”質問に対しては質問で返す”という事が最初からの菅氏の戦略なのですから。
端から答える気は無いのです。これでは谷垣氏が「何の罰ゲームなんだ」と怒り出さない方が不思議です。
それにしても、このカンニングペーパーは誰が作成したのでしょうか?マスコミとの打ち合わせで出来上がったとしか思えないのです。
普通の人間なら、こんなカンペを渡されたら「ふざけるな、俺は小学生か?」と切れてしまう所ですが、菅氏は素直に手に持って党首討論をした所を見ると、本当に唯の操り人形なのだと自分でも分かっているのかも知れませんね。
テレビのコメンテーターが「政策論争を」と言っているのは、単に”最もらしい事”を言って多くの視聴者を騙す為の”方便”なのですよね。
民主党の元党首の鳩山氏の事を非難しているマスコミの方も居ますが、彼らは鳩山氏の事を非難できるような立派な人間なのでしょうか?
単に”方便と言ってしまった事”を非難しているというのなら理解できますね。本音は「黙っていろ」なのですから。
さて、小沢氏の処分を民主党が発表しましたよね。多くの方が「もっと厳しい処分にしろ~」と思っていても民主党の中の人間は世間知らずですから反発します。
小沢氏の党員資格停止 大甘処分も党は分裂含み
民主党執行部は14日、小沢一郎元民主党代表に「党員資格停止」を突き付けた。除名でも離党勧告でもない「大甘」の処分だが、小沢系議員の反発は収まらない。菅直人首相の“遠心力”はますます強まり、党はもはや分裂状態にあると言っても過言ではない。政権最大の懸案は平成23年度予算関連法案の衆院再可決だが、ここで小沢氏は首相の死命を決する「数」のカードを突き付けるつもりなのか。(加納宏幸)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110214/stt11021423120015-n1.htm
このような記事も出ていますが、今の段階で小沢派が離脱するとは少し考えられないのです。
恐らくは、菅氏のクビと引き替えに民主党に留まるのではないかと思っています。
理由は簡単で、離脱によって小沢氏が最大与党の幹事長になる目を潰してしまうからです。もしも本気で小沢派の離脱になるとしたなら、それは小沢氏の足かせ(裁判)が終わって(無罪濃厚となって)からになるのではないかというのが私の見方です。
今は最大与党の中に居てこそ、小沢氏も影響力を行使出来るのですから。
前原氏は輿石氏(小沢派)とのエール交換から考えてみて、既に小沢派に籠絡されていると考えて間違いないでしょう。問題は岡田氏です。
今、最も可能性の高い事としては”岡田氏を担いで乗り切る”という事だと私は考えています。
岡田氏も”首相のイスと小沢叩きでの次の選挙”とを天秤に掛けている状態なのでしょう。次の岡田氏の発言が待たれます。
前原氏は先のロシア訪問で成果を上げられなかった為に国民的な人気が高くありません。今は小沢派としては人気の無い前原氏を担ぐよりも”小沢叩きの急先鋒だった岡田氏を担ぐ”という事の方がメリットが大きいのです。
菅氏と同様に”お飾りの操り人形総理”であるなら、誰でも良いのですから。
それに岡田氏を担げば、TPPよりも日中FTA等の中国(特定アジア)重視の政策にもなりますからね。小沢氏としてみれば、どちらか(ユダヤ、中国)の顔を立てる事はしたくない(どちらにも良い顔をしたい)というのが本音なのです。
自分は「足かせ(裁判)が有って動けない」という言い訳を使うなら、先に中国に対して良い顔をして後でアメリカに対して二国間協議等で良い顔も出来ますからね。
もしも此処で、民主党の中で保守派を自認して看板にしてきた政治家が民主党を飛び出すなら、最後のチャンスとなるでしょう。
この機を逃せば二度と他人様の前で「私は保守派です」とは言えないのですからね。
by ヒロ
一番の”嘘吐き”は誰だ?