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佐賀県武雄市山内町の看護師岩崎真知子さん=当時(23)=が1997年に殺害された事件の控訴審が、一度も開かれることなく、9年半にわたって公判停止になっている。殺人・死体遺棄罪で、佐賀地裁で無期懲役判決を受けた樋渡大輔被告(33)が控訴後、拘置所で自殺を図って意識不明になっているためだ。「このままでは、わたしたちの時間は止まったまま」。父澄雄さん(70)、母チヨ子さん(76)は一審判決を確定させるよう求めている。
「ほんの一瞬にして娘の命を奪った人間が憎い。殺してしまいたいくらい憎い…」
昨年末、被害者支援ネットワーク「佐賀VOISS」が佐賀県庁のホールで開いた「命のメッセージ展」。会場には真知子さんの遺品とともに被告への憤りをつづった岩崎さん夫妻の手紙も添えられた。
一審判決などによると、看護師として働き始めたばかりだった真知子さんは、97年11月26日、武雄市内の駐車場にとめた車内で、知り合いだった樋渡被告から、首を絞められ殺害された。遺体は長野県内の山中で見つかった。
逮捕後、98年2月の初公判から13回の公判を重ねたが、被告は一度も岩崎さん夫妻に頭を下げることはなかった。一度だけ来た謝罪の手紙からも「反省は全く伝わってこなかった」。
樋渡被告は一審判決を不服として、99年4月に福岡高裁に控訴。その後、同年5月21日、拘置所で首つり自殺を図った。福岡高裁は2000年6月6日に「(被告は意識不明状態で)出頭することができない」として公判停止を決定。控訴の取り下げは、被告しかできず、意識が戻る可能性も低いため、控訴審の見通しは立っていないという。
昨年11月に13回忌法要を終えた澄雄さんは「刑に服し、反省の日々を送ることで償いが始まると思う。判決が確定しない限り、わたしたちの時間は止まったまま」と苦しい胸の内を明かす。「真知子に何と報告すればいいのか。公判停止の期間を限定し、期間が過ぎれば控訴が棄却され、一審判決が確定されるようにしてもらいたい」。そう言って遺影に手を合わせた。
【写真上】岩崎真知子さん
【写真下】遺影に向かって手を合わせる岩崎澄雄さん(右)とチエ子さん=武雄市山内町宮野
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