反骨ジジイ石原がアニメに「NO」なワケ−−まさか…アニメを体制側と誤認?
投稿日 | 2月 20, 2011 | 4 Comments
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―本誌ライターの小山内さんによる、コラム「オタク学」。「オタク的な分野×社会学」というテーマのコラム、第34回です―
漫画やアニメの描写に対する規制を強化する、「東京都青少年健全育成条例」の可決に反発し、漫画家や出版社などが「東京国際アニメフェア」への出展を次々と取りやめる、という事態になっている。
「アニメフェア」の実行委員長である石原慎太郎・東京都知事は、
「来なければいいよ。来年、ほえ面をかいて来るよ」
と、いつもどおりの挑発的な発言をしていた。
だが、その石原都知事が、出展を取りやめた出版大手10社に対し、
「フェアの成功に手を携えていきたい」
という内容の手紙を送っていたことが、都議会でのくりした議員からの質疑応答がきっかけで判明した。(TOP画像は「平成23年第1回東京都議会定例会 録画映像」からスクリーンショット。著作権元は都議会)
■ 反骨精神溢れる若者が歳をとると、攻撃対象が若い世代に?
もともと石原さんは、芥川賞受賞作『太陽の季節』など、既成の価値観や大人への反骨精神溢れる作品を書いていた作家であることについては、以前非モテタイムズでも触れた。
石原さんは政界入りした後、与党である自由民主党、つまりは体制側に属しながらも、若手タカ派議員を集めて「青嵐会」というグループを結成するなど、やはり反骨精神を見せ付ける活動を行っていた。
国会議員を辞めた後も、日本国内だけでなく海外、特にアメリカでも話題になった、『NOと言える日本』を刊行し、ベストセラーになった。本書も対米追従を続ける日本の政財界への、強烈な反骨精神の塊と言える本だった。
しかし今回の都条例問題では話が逆である。東京都知事として三選され、強大な権力を手に入れた石原さんが今敵視しているのは、今のオタクの若者たちなのだろうが、彼らが「体制側」で「既成の価値観」であるとは言いがたいだろう。
■根底にあるのは「保守派の反フェミニズム」!?
ここで、石原さんは思想的には右寄り、つまり「保守派」の人物であることに注目すべきだ。保守派は基本的にフェミニズム(男女平等)的な価値観に対する反発が強く、夫婦別姓法案や過激な性教育、ジェンダーフリーなどに反対している場合が多い。
もしかしたら石原さんはその延長で、「漫画・アニメの過激な性描写」=「フェミニズムの陰謀」だと理解しているのかもしれない。フェミニズムの論客の中には、性に関しオープンに考える人たちもいるからだ。
しかしいずれにせよ、今回の条例はそれ以前に、「表現の自由」という基本的な人権を大きく侵害するものであることに気づいて欲しい。
(小山内)
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(参考リンク)
・石原都知事、出版社10社に都アニメフェアへの協力を要請
・平成23年第1回東京都議会定例会 録画映像平成23年第1回東京都議会定例会 録画映像
小山内 聡(おさない そう)
漫画とアニメとゲームが好きで軍事オタクの文系大学生。趣味はノンフィクションを読むこと。はてなダイアリー『日の丸海賊団』で書評を書いています。
・http://d.hatena.ne.jp/kurohige-ossadot/
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コメント
4 Responses to “反骨ジジイ石原がアニメに「NO」なワケ−−まさか…アニメを体制側と誤認?”
コメントをどうぞ
2月 21st, 2011 @ 10:22 AM
石原都知事、
反骨精神の持ち主で右寄りというようなニュアンスの
書き方になってるけど、
僕ら、石原都知事の若いころからを知ってる世代から
言わせると、石原氏は、バリバリの右翼っすよ。
右寄りなんて生易しいもんじゃないす。
このヒト。三島由紀夫に近い。
その辺、誤解なきように書いてほしいなあ。
それから、反骨精神、っていうのもわからないなあ。
セレブのおぼっちゃんで、なんの苦労もなくて、
若いときから成功したヒト。エリート意識の塊
みたいなヒト。のどこが反骨精神なのかなあ?
ちょっと疑問を感じてしまうんだなあ。
このヒトの小説、ちゃんと読んで書いてる?
2月 21st, 2011 @ 12:21 PM
コメントありがとうございます、ヒロNさん。
>右寄りなんて生易しいもんじゃないす。
>このヒト。三島由紀夫に近い。
>その辺、誤解なきように書いてほしいなあ。
ウヨサヨ論争を避けるために(非モテタイムズというサイトが政治的に偏りすぎないために)、石原氏の「右」加減については、ソフトに書いたつもりです。
いや、三島ほど高尚なモノをお持ちの方とも思えないんですがw
>セレブのおぼっちゃんで、なんの苦労もなくて、
>若いときから成功したヒト。エリート意識の塊
>みたいなヒト。のどこが反骨精神なのかなあ?
>ちょっと疑問を感じてしまうんだなあ。
>このヒトの小説、ちゃんと読んで書いてる?
石原氏の生い立ちもしってはいるのですが、やはり戦後民主主義的な空気の中であれだけタカ派なことを言っていたのは、「与党内の反体制」なんじゃないかな、と思います。
この辺は完全に、昭和末期生まれで、後から書物中心に戦後の日本政治史を知った僕の「歴史認識」なんです。
申し訳ないのですが、小説はあまり読んでません…石原氏の書いたノンフィクションなら結構読んでいるのですが。
2月 22nd, 2011 @ 9:10 AM
小山内さん、
僕は、あなたが、いろいろ物事を丹念に調べて、執筆されている誠実なライターであり、また、人格的にも穏やかで、知的な方だから、基本的には、リスペクトしてるし、これから、どんなものを書いてくださるのだろうと期待もしてるのです。
だから、いびるとか、こするとか、するつもりは毛頭ありません。
でもね、今回の件は、本当にちょっと引っかかるんだ。
たとえば、僕のコメに対するレスの中でも
>いや、三島ほど高尚なモノをお持ちの方とも思えないんですが
ってくだり。
三島が石原氏より、高尚だ、と断定する根拠は何?
こういう書き方は、気をつけなくちゃならないと思う。
これじゃあ、三島由紀夫を読んだことのない人に、三島
の思想は「高尚」であるという予見を押しつけちゃうことになってしまいますよ。
「高尚だ」という意見は、あなたの主観的な評価でしかないはずでしょ?
しかも、僕は、石原氏と三島のどちらが高尚かなんて話はしてない。
こういう書き方が、ちょっと目につくんだ。今回。
「反骨精神」についてもレスを読みましたが、
これも、僕は納得できません。
「反骨精神」とは、権力に抑圧されている弱者が刃向かおうとする精神のことなのではないですか?
石原氏は学生時代に人気作家になり、それから、与党自民党の議員になり、防衛庁長官にまでなった人ですよ。この人、一生の中で、誰かに使われたり、働かされたりしたことがない。金にも困ったことがない。
小山内さんが、反骨精神の根拠にしている「与党内の反体制」だって、彼があまりにも「過激な右翼的発言」をするものだから、保守政党の自民党幹部でさえ、もてあましていた、というのが、真相なんですよ。
そもそも社会的弱者でもなく、被抑圧者でもなく、(まあ、富裕層に生まれても、チェ・ゲバラやガンジーのように、それこそ「反骨精神」を貫く活動家もいますけど、)石原氏の一貫した言動をみていて、そういう精神は、微塵も感じられませんよね。本当に感じられますか?小山内さん?
やっぱり、小山内さん。石原氏を「反骨精神の持ち主」と評価して、論評するのは、無理があると思いますよ。
「太陽の季節」等、彼の初期の小説作品についての論評にも、非常に異議があるのですが、これは長くなるので、また、いつか、僕のブログにでも載せるつもりですから、読んでみてください。
あと、
断っておきますが、僕は、石原氏が右翼だから、非難するとか、そういう政治的な発言を誘導しているわけではありません。僕は、右翼とか左翼とか、どちらに肩入れする、とか、ないし、政治的発言はしないようにしています。
>ウヨサヨ論争を避けるために
というのなら、
最初から、右寄りだの、タカ派だの、青嵐会だのという言葉を半端にお使いになるのは、誤解の元になりますよ。
今後、いい論評を書いてくださることを期待しています。
ヒロN
2月 23rd, 2011 @ 5:05 PM
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