事件【産経抄】2月26日2011.2.26 03:12

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【産経抄】
2月26日

2011.2.26 03:12

 ニュージーランドと聞いて『十五少年漂流記』を思い出す人もいるだろう。仏の作家ヴェルヌが19世紀末に書いた小説で、少年ばかり乗せた船が太平洋を漂流、南米・チリ沿岸の無人島に着く。そこで少年たちが小さな「政府」をつくって生き延び、生還する物語だ。

 ▼漂流を始めたのはニュージーランドの港である。少年たちはオークランドの学校の生徒たちで3人以外みな英国人だった。物語はニュージーランドが英国領となって20年後の1860年に始まっており、その植民地経営のあり方があちこちに垣間見える。

 ▼それから150年がたち、独立したこの国はすっかり英国風の装いをこらしている。地震の被害を受けたクライストチャーチも英国の都市と見まがう町並みだという。しかも英調査機関などによる「世界平和度指数」で2年連続1位になっている。

 ▼それだけに日本などから快適な環境のもと、英語を学びたいという語学留学や研修旅行が増える。当然の成り行きだろうが、その信頼は裏切られた。こともあろうに、富山からの研修生らがいた語学学校が入るビルが無残に崩壊してしまったのだ。

 ▼詳細はわからないが、日本の専門家たちは首をかしげる。これほど近代的なビルがなぜこうも簡単に崩れたのか。地震は多い国だが、宗主国の英国が揺れの経験が少ないだけに耐震構造にぬかりがあったのか。大地震国の日本としてはいずれ学ばねばならないことである。

 ▼その前に、富山の研修生をはじめいまだ消息のわからない人たちの救出が急務だ。時間は刻々と少なくなっている。だが「十五少年」たちの国である。彼ら同様、どこかで励まし合いながら救いの手を待っていると信じたい。

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