ライフ【主張】イレッサ判決 がん治療の将来のために2011.2.26 03:13

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【主張】
イレッサ判決 がん治療の将来のために

2011.2.26 03:13

 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用被害をめぐる訴訟で、大阪地裁は被告の製薬会社に賠償を命じる一方で、最大の焦点だった国の賠償責任を認めなかった。

 国としては裁判所による和解勧告をあえて拒否して得た「勝訴判決」といえるが、国の対応のすべてが「問題なし」とされたわけではあるまい。

 厚生労働省は新薬承認の際の問題点をしっかりと整理し、将来のがん治療と薬事行政の改善に結びつける使命がある。

 イレッサは深刻な副作用被害が出る半面、患者によっては顕著な効き目を示す。いまも臨床現場で使われている「有効な薬」というのが特長だ。それだけに、不安を持ちながら服用している患者も少なくない。

 この訴訟では、大阪と東京の両地裁が1月、原告と国、製薬会社に和解を勧告した。法的な責任には明確に触れなかったが、被告側に患者と遺族に対する「救済責任」を広く認めたうえでの勧告だった。国は「薬事行政に影響する」と和解に応じなかった。

 今回の判決で国の賠償責任が認められなかったことは、法律論としてはうなずける面がある。しかし、国には患者と遺族を救済し、今後のがん治療で同じような被害者を出さないための最善の行政を進める責任もある。

 同様の裁判は東京地裁でも争われており、来月23日に判決が予定されている。

 その内容にも留意しながら、厚労省と製薬会社は医薬品の安全性と有効性の確保に努め、副作用被害の早期把握と明確な注意喚起、被害が発生した場合の救済制度などを整えなければならない。

 死に直面するような重症患者に対し、延命効果を持つ薬があれば服用させてあげたいと思うのは当然だろう。だが、新しい薬では想定を超えた副作用が出ることもある。とくに抗がん剤の場合、強い副作用を伴うケースが多い。

 イレッサは当初、がん細胞だけを狙い撃ちする副作用の少ない「夢の新薬」として期待され、申請から5カ月という異例のスピードで世界で最初に承認された。

 日本は欧米に比べ、薬の承認が遅く、治せる薬があっても使えない。今回の判決にかかわらず、こうした「ドラッグ・ラグ(遅れ)」の解消には、今後も取り組んでいく必要がある。

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