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社説:「小沢系」造反 国民不在の倒閣運動

 こんなことをしている場合か--という怒りと不信の声が、なぜ届かないのか。新年度予算案の衆院審議が大詰めを迎える中で政権党の内紛はエスカレートする一方だ。

 民主党の小沢一郎元代表に近い比例代表選出衆院議員16人が衆院会派の離脱届を提出したのに続き、元代表の側近の一人、松木謙公氏が農水政務官を辞任した。党代議士会では勝手なやじが飛び交い、「学級崩壊みたいだ」という声が党内からも出るほどだ。菅直人首相ら内閣の足元がこの有り様では予算修正を野党と協議するどころではないだろう。

 小沢元代表に対する処分問題に端を発した今回の反乱が、菅首相を退陣に追い込む倒閣運動であることは誰の目にも明らかだ。元代表のグループには、菅首相に代わり、小沢元代表に近い議員を新代表=新首相に就任させ、党内の主導権を握る狙いがあるようにも思われる。

 しかし、政権党として今、最も求められているのは、国民生活に直結する予算案と予算関連法案を成立させることだ。果たしてその展望が、この倒閣運動によって開かれるというのだろうか。

 既に自民党や公明党など野党は菅首相が交代しても予算案や関連法案の大半に反対する方針を表明している。しかも野党が求めているのは民主党マニフェストの撤回、もしくは大幅修正だ。

 ところが小沢元代表のグループは「マニフェストを守れ」と口をそろえる。原則論を語るのは聞こえはいいが、その路線では野党との接点がいよいよなくなる。そもそもすべての公約を実現させる財源が出てこないことは、鳩山由紀夫前首相時代から明白になっていたはずだ。

 16人や松木氏らは河村たかし名古屋市長らとの連携も模索しているという。これも党を作っては壊してきた小沢流なのだろうか。仮に衆院解散・総選挙となって民主党にとどまっているのが不利とみれば河村氏らの新党に合流するシナリオも念頭にあるのかもしれない。だが、いずれにしても国民のためというより、自分の生き残りのためと見られても仕方あるまい。

 一方、政権維持を目指す菅首相は衆院本会議で09年衆院選の民主党マニフェストで子ども手当の満額を2万6000円とした点について「ちょっとびっくりした」と語った。当時の小沢代表が財源のあてもなく大幅増額した、と責任を転嫁したかったのだろうが、最後は党で決めた公約だ。これまた無責任な発言に驚く。

 政権党の内輪もめで迷惑するのは国民だ。「国民の生活が第一」というのなら、もう少し国民の方に目を向けたらどうか。

毎日新聞 2011年2月26日 2時31分

 

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